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第二章
ジェイコブの復学
しおりを挟むあの、悪夢の断罪パーティーより2年が過ぎた。
一年目は平年通りの天候であったが、2年目は豊作の年になった。
小麦の収穫量も多く、果物も甘く、ワインは当たり年になった。
五家とマリアベル 法務大臣 神殿長、8人を交えて話し合い、[女神の呪いは]もう大丈夫であろう、と言う結論に達した
その旨を受けて、トラビス王は閣僚とジェイコブの処遇を検討した。
閣僚は[王家の呪い]を知らされてはいない。
断罪パーティーはマリアベル様とジェイコブ殿下の確執からの反動で行われたと思われている。
マリアベル様とも和解し、お詫びを済ませたジェイコブ殿下の王家離脱は重いのでは?、と言う意見も多かった。
しかし、王家の呪いが降り掛かる中、ジェイコブの命が救われた。これ自体が例外中の例外と言ってもよい。
王位継承権の返還は女神様に対する[お詫び兼お礼]でもあるのだ。
ジェイコブはギャリック侯爵の養子に入る事が決まった。
ギャリック侯爵家はトラビス王の父ジョージ王の叔母姫が降嫁された家。名門である。
この度、後継のいないギャリック家は侯爵の死後に爵位を返上予定だったのだが、大層人の良い侯爵夫妻はジェイコブの身を憂いて養子にと手を挙げてくれた。
ジェイコブは[ジェイコブ•ギャリック侯爵令息]として来年4月より学園四年生に復学が決まった。
マリアベル達が 性格矯正に予定していた三年より、一年も早くの復学だった。
折しも、マリアベル達は現在三年生。
来春、ジェイコブとマリアベルは同級生として学園に通う事になった。
*************
4月になり新学期が始まった。
四年生は専門を選択する。
ジェイコブは魔法と農業と細菌の研究
アビゲールは森の加護と緑の魔法についての研究
マリアベルは、魔道具の研究
卒業まで魔導車を作成する予定だ。
マリアベルの前世、光子の会社は大手自動車会社の子会社だった
車の部品メーカーだったので車の構造を覚えていたのだった。
エンジンを魔石に代替えして、同じ魔法選択の人と共同研究する予定だった。
その為に是非ゴムのタイヤが欲しくてウーラノスに相談していたのだ。
そして、ソフィアは、
「わたくし、女性官僚になりたいの。王宮ではまだまだ男性が多いでしょぅ!女性の社会進出に貢献したいのよ。」
そう言って政治経済を選択した。
将来は大臣を目指すのだ!と高い目標を掲げていた。
アビゲールは、ジェイコブの[緑の神の加護]を学びたいという真摯な態度に心を打たれ[神の加護]というものについて教えていた。
~~~~ アビゲールの話 ~~~~
緑の加護とは神よりいただいた恩恵です。決して悪用してはなりません。
わたくし達 ウッドフィールドの者は、神に感謝し 神に祈りを捧げ 緑の恵を命あるものに分け与える媒体となる、そのような役割を巫女として神よりいただいたと言い伝えられております。
しかし、ウッドフィールドの者でなくとも緑の恩恵をいただいた方がいらっしゃるとお聞きしております。
大抵の方は、山や野に住み、動物と戯れ自然と共存されているという事です。
ジェイコブ様は土魔法が使えますよね!
魔法を当たり前の様に使うのでは無く、神に感謝し、使い道のお伺いをたてて使用してみたら如何ですか?
~~~~~~~~~
そうかぁ、、、ジェイコブは納得した
『土と語らう』とは、土に由来する神と語らうと言う意味でもあるのかもしれんな•••
アビゲールは一粒の種をジェイコブに手渡した。
「これは、魔法の花が咲く種でございます。育て方は普通に鉢に植え水、肥料をやりお育て下さい。
そして、時々ご自分の魔力を与えてください。」
「何が咲くのだ?」ジェイコブは聞いた
「それは、咲いてからのお楽しみでございます。
ソフィア様は、それは其れは美しい赤い柔らかい薔薇のような花を咲かせました。
マリアベル様は、白色でシンプルながら真っ直ぐな煌めきの花でごさいました。」
「それは楽しみだな!
ありがとう。大切に育てようぞ!」
ジェイコブは種を紙に包み大切に胸ポケットにしまった。
「兄上、こちらでしたか、」
ジェイコブを兄と呼んだのは今年入学したばかりのロジャー王子であった。
「おお、久しいの!、、、
じゃなくて、久しぶりですね、ロジャー殿下。」
「アハハ、なかなかその 年寄り臭い話し方 治りませんね!兄上」
「お前、いや、ロジャー殿下もそう思っていましたか?」
「兄上、人のいない所では、”お前”で良いですよ。だって兄弟じゃないですか!
ところでマリアベル様は?」
「殿下、マリアベル様は寮に帰っております。宜しければお呼びいたしましょうか?」
アビゲールが答えた。
「いえ、大した用ではありません。
この企画書を、お返ししようと思ったのですが、、、」
「では、わたくしがマリアベル様にお渡しいたしましょうか?」
アビゲールは提案した。
「そうして貰えると助かります。
課題の自動馬車の設計図なんです。」
あぁ、以前言っていた馬の無い魔石で走る馬車か!
まだ、研究していたのだな•••
ジェイコブは気になって声を掛けた
「図面を見せてもらってもよいだろうか?」
ロジャーは図面を広げた。
びっしりと書き込みがしてある。
ハンドル?サスペンション?車軸?
ベアリング?
なんだぁ????全く意味がわからんな?
あれ?この字、、、見覚えが、、、
ジェイコブは胸ポケットより丁寧に畳まれた紙を取り出した
「ウォームで温めて食べてください」
あっ!!!! 同じ筆跡だ!!!!
「この文字は、この字は誰が、誰が書いたのだ!教えてくれ!」
ジェイコブは焦りながら聞いた
「えっ、マリアベル様ですよ。だってマリアベル様の企画書ですし、、、」
<<< ぐぁぁぁ————んっ>>>
では、私を助けてくてたのは•••••
農作業も手伝ってくれて、謝罪も一緒に回ってくれて、、、
思い起こせば色々と世話になっていた。
マリアベルが、そうか、マリアベルが、、、
彼女が、、、
この2年、いつも辛い時には側にいてくれた。
辛い時も、楽しい時も、私の道しるべになってくれた••••
マリアベル、ぁあ、マリアベルが•••
私は…… 彼女が、マリアベルが好きだったのだな。
ジェイコブは自分の気持ちに気づいた途端、ホロホロと涙を零した。
「兄上!」
「ジェイコブ様!」
「 私程の愚か者は この世の何処をを探してもいないだろうな••• 」
この時ジェイコブは、本当の意味で、自分の仕出かした事の重大さを理解して、悔やんだのであった。
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