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第二章

ドゥラーク辺境伯の邸での出来事

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「お帰りなさい!
この度は、就任おめでとうございます。」

使用人総出でのお迎えを受けたウーラノスは大きな荷物を横抱きに抱えていた。

「若、お荷物をお持ちしましょう。」
ウーラノス家執事ハリルは、使用人に手伝うよう指示を出した。

「いや、これは王家よりの[頂き物]、私が直々に運ばなければ••• 」

ウーラノスはそう言うと大股で応接間に急いだ。
大きな荷物は応接間の中でも特に大きな長椅子に横たえられた。

「坊ちゃま、何を頂いたのですか?」
みんな興味津々で覗いている。

ウーラノスは漆黒のマントに包まれた[それ]を取り出した。

「ほぅ!」周りからため息が漏れた

「素晴らしいお品物ですね!この肌の艶、髪の美しさ、どちらの[名高の作]でごさいますか?」

側近であるエルダーは髪に触ろうとした。

「おいおい、私の妻に勝手に触るなよな!」

つまぁーーー?この人形が?
王家は人形を嫁として下賜したのか?
使用人達は愕然とした

その時、その人形は目を開いた。
その目は深き海をたたえていた。

「お目覚めになったかな。未来のドゥラーク夫人!」
「ええ、未来の旦那様♡」

人形がしゃべったーーー!!!

「なにか、温かい飲み物を用意してくれ。」
ウーラノスは使用人に申しつけた。

「あら?ここは?」

「私のタウンハウスでございます、姫!」

「失礼ですが、私、貴方様のお名前をお聞きしていなかったわ!
差し支え無ければお聞きしてもよろしくて?」

「ウーラノス•ドゥラーク辺境伯でございます。」
ウーラノスは膝を折り胸に手を添え挨拶をした。

「まあ、ご丁寧に、私はクラレンス侯爵が娘マリアベルでございます。
宜しくお願い致します。」
マリアベルはスカート を摘み礼をとった。

「クラレンス侯爵令嬢というと••• あの、王妹を母に持つという姫 」
使用人達がざわめいた。

「若、返してらっしゃい!!!
今からでも間に合います、お詫びをして来てください。
そんな年若い姫を攫ってくるなんて、、、」
エルダーは青くなってオロオロしていた

「いや、本当に貰ったのだよ!」
「ええ、私、ウーラノス様にプロポーズ致しましたのよ!」

ええーーまさか、この人形の様に美しい姫がうちの殿にプロポーズ?
嘘だろー!

姫様、姫様、それは間違っております。
一時の気の迷いでございます。
今なら間に合います、どうか、お考え直しを
使用人一同で説得した。

「取り敢えず温かい飲み物でも、」
ウーラノスに言われて、白い湯気の出ているあったかな紅茶が用意された

「うーん、美味しい!今日は色々な事がたくさんありましたものね、」

紅茶を飲み終えたマリアベル
「ご馳走様でした。では、そろそろ おいとまいたしますね。」
そう言うと、テクテクとドアに向かって歩き出した。

「お待ち下さい、姫、どちらへおいでに???」エルダーは焦った

「あら、学園の寮よ!
黙って出て来たから皆心配しているわ。
ここから学園は歩くとどれ位掛かるかしら?」

「歩くって•••  姫様、馬車をお出しします。
若 よろしいですね!」

「バーカ、何言ってんだよ、
こんな遅く寮なんて危なくて返せないに決まっているだろぅに、、、」

ウーラノスはマリアベルの手を取って言った。
「マリアベル様、本日はこちらにお留まり下さい。学園はまだ荒れているでしょう。
危険ですので是非お泊まり下さい。クラレンス侯とノーザンコート伯にはこちらからご連絡をいたしておきますので」

「ええ、わかりました。ではお世話になります。」
マリアベルはクルっと回って使用人達を見て言った
「皆様、突然の夜間訪問でご迷惑ををお掛けしてしまい申し訳ありません。
本日一泊お世話になりますね!」

ちょこんと首を傾げ挨拶をしたマリアベルを見て、

 “ 天使だ!天使が降臨した! “

皆、あまりの可愛さに ポォ———ッ、としてしまった。



深夜遅く、マリアベルが客間のベッドでグースカ熟睡をしていた頃、
2人連れの客がやって来た。

「おお、御大将ご自身がお出ましとは•••」
ノーザンコート伯爵ご御本人とその後継モーリス殿であった。

「我が孫を匿って頂き誠にありがとう存じます。
あのまま、あそこに留め置かれでもしたらと思うと身震いがする思いでおりました。」

「いやいや、私の力不足で尊い御身をみすみす晒す事になってしまいました。申し訳ない。」

「それなのだが、、、学園も暫く休みに入る。それでなぁ、貴殿にマリアベルを預かって欲しいのだ。
ノーザンコートには先程の出来事を聞き、既に得体の知れぬ者が入り込んでいる。
[王命]の件もあるし、如何であろうか?」

「確かに、王命ですなぁ!それが片付くまでこちらでお預かりいたしましょう。
ところで、お父上のクラレンス侯はいかがいたした?」

「弟は、マリアベルを取り返しに行くんだ!と気息巻いておりましたので、一服盛って来ました。今頃は楽しい夢の中でしょう。」
モーリスはニヤニヤと意地悪い笑を浮かべていた。


**********

ノーザンコート伯爵の考察

マリアベルよ、お前はなんとうい男を引き当てたのだ!

ウーラノス•ドゥラーク辺境伯、王国最強の男

過酷な環境下にあるドゥラーク領民は、非常に結束が固い。領主の妻になったマリアベルを是が非でも守るであろう。

ウーラノス•ドゥラーク夫人という肩書きはマリアベルに取って最大の護符となる。

何という強運

マリアベルを守るにあたって、あれ以上に最適な男は国内探しても いないであろう。
(年齢の事はさて置きだかな!)

今すぐに結婚する訳ではない。
縁があると言う事を世間に知らしめておけば良い牽制になる。

アハハハ、あの馬鹿王子、死ぬ前に少しは役に立ったではないか、、、
わしも、少しは溜飲が下がったわ!






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