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二章:肝試しなんて身から出たアレ
P.39
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「ちょ、ちょっと、止めて下さいよぉ」
冗談混じりの情けない声が瞬の口から漏れ出した。
んん、と舞は目を瞑って片手を顎に当て、小難しい顔で首を傾げている。
「確かに、昼間来た時より時間掛かってるかも……?」
舞が考えている間、足を止めてしまった彼女に合わせる為、和輝も一時停止した。
「喋りながらだから遅く感じてるだけじゃねぇの?」
いやに考え込む舞に和輝が声を掛ける。
「うーん……それにしては何か……」
「……すまん、道間違えたか」
まだ動かない舞に、普段のトーンと変わらない口調で優弥が謝る。
途端、舞の両目が大きく見開かれた。
「城戸さん、もしかしてさぁ……怖いからって遠回りしてなーい?」
「間違えたっつってんだろ」
突っかかりに歩み寄って来る舞をよそに、優弥は軽くあしらいながらペースを更に遅くした。
「足元が見え辛くなってるからな。ま、多少遅いくらいが丁度良いだろ」
壊れた石畳の段差を確かめるように、優弥は慎重に足を進める。
彼の言葉を聞いて、和輝もやっとその事実に気付いた。
確かに足元の視界がぼやけて見える。
足首の辺りまで薄っすらと白い霧が掛かっているような、そんな感じだ。
皆の後について行けば段差に足を取られるような事は無さそうだが、場所も相まって何だか気味が悪い。
瞬も優弥も、舞やまひろだってそんな事は気にしていない様子であったが、和輝は皆の背中をしっかり追っていこうと再度顔を上げる。
そして、訝しんだ。
「……今日って、雨降るんだっけ」
和輝の呟きに、瞬が眉根を寄せる。
誰かが道端の小枝を踏み割った音に被さって、瞬が答えた。
「いや……? 降ってる?」
「降ってないわよ」
先頭組のまひろが振り返って答えた。
「今週はずっと晴れじゃなかったか?」
優弥もそれに続く。
「そう、だよな……」
和輝はすぐに同意した。
入る直前に携帯でも確認した。
予感は有ったが、実感が有る訳でもない。
しかし、だが、それなら何故?
黙って話を伺っている舞を通り越し、和輝は墓地の向こうを見遣る。
(何でこんなに霧掛かってるんだ?)
先程までハッキリ見えていた墓の列までもがぼやけて見える。
反対側もそうだ。
皆の姿が見えない程ではなく、五人の遠くを薄い霧が包んでいる。
石畳を擦る皆の足音の中で、和輝は再度自分の携帯を確認した。
天気は晴れ。気温も変わっていない。時刻は午前三時を過ぎた頃。
朝霧にしたって早過ぎる。
他の人達はこの違和感に気付いていないのだろうか。
和輝は急に不安な気持ちが増し、まだ瞬と舞が近くに居る内に背後を振り返った。
ここまでは、ほぼ一本道で進んで来た道。
その筈だ。
だというのに、既に五人の後ろは道らしき道が確認出来ないくらいの霧に覆われている。
見上げても廃病院の姿さえ見えない。
そんなに小さな建物ではなかったと思うのだが。
「相田君? どうしたの?」
まひろの呼び掛けに、和輝は身体を強張らせた。
気を付けて欲しい。今は風の音でさえ敏感になっているのだ。
「何だよ和輝、やっぱビビッてんのか?」
お決まりのような煽りを入れてくる瞬を小突いて、和輝も皆の後に続く。
煽って来た割には瞬の口元が引き攣っている。
どう見てもお前の方が重傷だ。
「ちょっと時間掛かっちゃったけど、もうすぐ着くわよ」
「もうすぐ、か。よっし」
すっかり縮み上がっている身体を大きく伸ばし、瞬が一つ大きな息を吐いた。
冗談混じりの情けない声が瞬の口から漏れ出した。
んん、と舞は目を瞑って片手を顎に当て、小難しい顔で首を傾げている。
「確かに、昼間来た時より時間掛かってるかも……?」
舞が考えている間、足を止めてしまった彼女に合わせる為、和輝も一時停止した。
「喋りながらだから遅く感じてるだけじゃねぇの?」
いやに考え込む舞に和輝が声を掛ける。
「うーん……それにしては何か……」
「……すまん、道間違えたか」
まだ動かない舞に、普段のトーンと変わらない口調で優弥が謝る。
途端、舞の両目が大きく見開かれた。
「城戸さん、もしかしてさぁ……怖いからって遠回りしてなーい?」
「間違えたっつってんだろ」
突っかかりに歩み寄って来る舞をよそに、優弥は軽くあしらいながらペースを更に遅くした。
「足元が見え辛くなってるからな。ま、多少遅いくらいが丁度良いだろ」
壊れた石畳の段差を確かめるように、優弥は慎重に足を進める。
彼の言葉を聞いて、和輝もやっとその事実に気付いた。
確かに足元の視界がぼやけて見える。
足首の辺りまで薄っすらと白い霧が掛かっているような、そんな感じだ。
皆の後について行けば段差に足を取られるような事は無さそうだが、場所も相まって何だか気味が悪い。
瞬も優弥も、舞やまひろだってそんな事は気にしていない様子であったが、和輝は皆の背中をしっかり追っていこうと再度顔を上げる。
そして、訝しんだ。
「……今日って、雨降るんだっけ」
和輝の呟きに、瞬が眉根を寄せる。
誰かが道端の小枝を踏み割った音に被さって、瞬が答えた。
「いや……? 降ってる?」
「降ってないわよ」
先頭組のまひろが振り返って答えた。
「今週はずっと晴れじゃなかったか?」
優弥もそれに続く。
「そう、だよな……」
和輝はすぐに同意した。
入る直前に携帯でも確認した。
予感は有ったが、実感が有る訳でもない。
しかし、だが、それなら何故?
黙って話を伺っている舞を通り越し、和輝は墓地の向こうを見遣る。
(何でこんなに霧掛かってるんだ?)
先程までハッキリ見えていた墓の列までもがぼやけて見える。
反対側もそうだ。
皆の姿が見えない程ではなく、五人の遠くを薄い霧が包んでいる。
石畳を擦る皆の足音の中で、和輝は再度自分の携帯を確認した。
天気は晴れ。気温も変わっていない。時刻は午前三時を過ぎた頃。
朝霧にしたって早過ぎる。
他の人達はこの違和感に気付いていないのだろうか。
和輝は急に不安な気持ちが増し、まだ瞬と舞が近くに居る内に背後を振り返った。
ここまでは、ほぼ一本道で進んで来た道。
その筈だ。
だというのに、既に五人の後ろは道らしき道が確認出来ないくらいの霧に覆われている。
見上げても廃病院の姿さえ見えない。
そんなに小さな建物ではなかったと思うのだが。
「相田君? どうしたの?」
まひろの呼び掛けに、和輝は身体を強張らせた。
気を付けて欲しい。今は風の音でさえ敏感になっているのだ。
「何だよ和輝、やっぱビビッてんのか?」
お決まりのような煽りを入れてくる瞬を小突いて、和輝も皆の後に続く。
煽って来た割には瞬の口元が引き攣っている。
どう見てもお前の方が重傷だ。
「ちょっと時間掛かっちゃったけど、もうすぐ着くわよ」
「もうすぐ、か。よっし」
すっかり縮み上がっている身体を大きく伸ばし、瞬が一つ大きな息を吐いた。
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