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新しい生活のはじまり

新しい生活のはじまり

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円花も下ろしてもらい抱っこしてエレベーターに向かおうとしたけど、火が付いたように急に泣き出した。大きな泣き声にみなビックリして振り返った。
「なくのはまどかちゃんのおしごとだもんね」
「しきさん、こんにちは」
今度はランドセルを背負った一太くんに声を掛けられた。
「ずいぶんと早い下校だな」
「先生たちのかいぎがあるから一じげこうなんだ」
一太くんが両手をズボンでごしごしと拭くと、
「まどかちゃんおいで」
円花をそっと抱き上げてくれた。
さすがお兄ちゃんだ。抱っこの仕方も慣れてる。あやしかたも上手だ。あれほどギャン泣きしていたのが嘘のようにぴたりとすぐに泣き止んだ。
「オムツこうかんなのかも」
「さっき交換したばかりなんだけど」
「あせかいてきもちわるいのかも。ひまちゃんもそうだったから。しきさん、まどかちゃんつれていっていい?」
「うん、いいよ」
一太くんが円花を抱っこしてくれて。
エレベーターに乗り込んだ。
みんな赤の他人である僕や子どもたちに優しくしてくれる。それが嬉しくて涙がでそうになった。
九階で下りるとヤスさんが部屋に案内してくれた。
「一太くんありがとう」
円花を抱っこしようとしたら、
「オムツはこうかんしてくるから、しきさんはまってて」
「休んでて」
「あ、でも、そういう訳にはいかないから」
「だってね、まどかちゃん、てをはなさないから」
一太くんの言う通り、円花は一太くんの服をぎゅっと掴み、しがみついていた。
「むりむりはなしたらかわいそうだよ。しきさん、あとでつれてくるね」
「うん」一太くんが円花を上の階にある自宅へと連れていってくれた。
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