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新しい出会い

新しい出会い

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「今まで週一回だけだったでしょう。二日おきに来てくれるようになったら助かるわ」
「息子の嫁に買い物を頼むのも気を遣うのよ。だから本当に助かるわ」
いつの間にかヤスさんは近所のおばちゃんたちのアイドルになっていた。礼儀正しく、店長の仕事を一生懸命やってることや、然り気無い気遣いと爽やかな笑顔でおばちゃんたちを虜にしていた。
移動スーパーの店長は仮の姿。本当はやくざだということを知ったらどんなみんな反応をするんだろう。
彼に車椅子を押してもらいいつものように買い物に行ったら、
「あの、これは?」
「うちの子守り担当からだ。歯医者でギャン泣きの大暴れして来たって聞いて、歯医者は怖くねぇぞって教える絵本らしい。よく分かんねぇが、もらっておけ」
ズッシリと重い紙袋を膝の上にぽんと置かれた。
「なんだかよく分からないけど、ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げた。
「おぅ」
ヤスさんと話しをしていたらおばちゃんたちにめちゃめちゃ睨まれた。
「四季、さっさと買い物を済ませて撤収したほうが良さそうだ」
これには彼も苦笑いするしかなかった。
「真山の手下どもが見張ってるからくれぐれも気を付けろ」
いつになく真剣な眼差しで忠告してくれたと思ったら、
「毎度あり~~。四季ちゃん、またいつでもおいで~~バイバイ」
おばちゃんたちを一瞬で虜にした爽やかな営業スマイルで手を振られた。
「あ、は、はい」
おばちゃんだけじゃなく、彼にまで睨まれてしまい、針のむしろとはまさにこのことだ。
まともに彼の顔を見ることが出来なくて、家に着くまで紙袋を両手で抱き締めながらずっと下を向いていたら、
「俺たち家族を守ってくれるヤスさんや菱沼組の組長さんに感謝しないとな」
温かくて大きな手で頭をぽんぽんと撫でられた。

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