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絶望の先にあるのは

絶望の先にあるのは

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ランチタイムが終わりヤスさんに車椅子を押してもらい家路についた。
お店の前の駐車場で待ってるはずの車が手違いから事務所に戻ってしまったみたいで、外の景色と町並みをのんびりと眺めながら、近くにあるスーパーにとりあえず向かった。
「暑くねぇか?」
「はい、大丈夫です」
「今の若いのは気の短い連中ばっかで、待つってことを知らない。困ったもんだ」
ヤスさんが辺りをキョロキョロと見回した。
「四季の旦那もオヤジと同じでスッゲー焼きもち妬きだろ?見られたら半殺しにされるんじゃねぇか、生きた心地がしない」
「和真さんはそんなことしません」
「そうか?人は見かけによらぬものってよく言うだろう?うちのオヤジも姐さんのことになると人が変わるぞ」
ヤスさんとそんなことを話しているうちあっという間にスーパーの駐車場に着いた。
入口に向かおうとしたら、黒塗りのセダンが目の前で急停車して、気付いた時には黒ずくめの服を身に付けた男たちに取り囲まれていた。


背後に数人の男を従え、重厚なスーツ姿の長身の男が進み出た。
男の顔を一目見るなりヤスさんが怪訝そうに眉をひそめた。
「へぇ~~」
 煙草の煙をくゆらせながら、男が目を細めた。
「これはこれは真山さん」
多勢に無勢の不利な状況でもヤスさんは堂々としていた。
真山さんは同じ施設の出身。大先輩だ。にも関わらず何ひとつ覚えていなかった。
「お前こそ誰だ?」
「気安く兄貴の名前を呼ぶんじゃねぇ」
黒ずくめの男たちがヤスさんに食って掛かった。
「俺か?菱沼組のをしているヤスだ。オヤジの身内である彼の専属弾よけでもある」
「ソイツが組長の身内だと?笑わせるな。ハッタリも休み休み言え」
男がげらげらと笑い出した。
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