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ヤスさんと運命の出会い

ヤスさんと運命の出会い

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「きみが心春ちゃん?」
たもくんが笑顔で話し掛けた。
「うん。おにいちゃんはだぁ~れ?」
「四季の友だちの岩水だよ」
「いわみしゃん?」
「あぁ」
こはるちゃんは首を傾げてしばらくの間考え込んだのち、
「こはるちゃんわかったよ!」
両手をぱちんと叩いた。
「何が分かったんだ?」
「おにいちゃん、しーちゃんすき」
「心春ちゃんは?」
「こ~んくらい、すき」
ニコニコ笑いながら得意気な顔で、両手を広げられるだけ広げてみせた。
それを見たたもくんはクスッと笑うと、こはるちゃんと同じように両手を大きく広げた。
「心春ちゃんと同じくらいお兄ちゃんもしーちゃんが好きだよ」
「いっしょだ」
施設ではぐずってばかりでなかなか泣き止まない小さい子をおんぶに抱っこしてあやしていたたもくん。小さい子の面倒とお世話は手慣れたもの。たもくんが子ども好きだということが分かるのか、こはるちゃんは全くといっていいほど警戒しなかった。
ゴホゴホとわざとらしい咳払いの声が聞こえてきた。

たもくんが帰り、こはるちゃんはお婆ちゃんにお風呂に入れてもらっている。
ようやく訪れた夫婦ふたりだけの時間。

「ごめんなさい……」
あれほど気を付けろと言われたのに。てっきり怒られると思ったけど、
「なんで謝るんだ?四季は悪くない。お隣さんの家にも気軽に行けないとはな……怖かっただろう」
「うん」
頷くと、彼はどこかへ電話を掛けた。
「俺だ。すぐに調べて欲しいことがあるーーそうだ、大至急だ」
僕とこはるちゃんを襲おうとした男たちの特徴や車の特徴をてきぱきと伝えた。
助けてくれた菱沼組のヤスさんの顔を見て逃げ出したことも。
電話を終え、長く息をつくと、ぎゅっと抱き締められた。
「ごめんな。危ない目に遭わせて。男たちが言っていた『あの人』はもしかしたら唯人かもしれない」
彼の声は、微かに震えていた。
その声音に、腕の強さに僕は声も出せなくなった。


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