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悪意
悪意
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「あった!」こはるちゃんが突然走り出した。
「心春ちゃん迷子になったら大変だ」
お爺ちゃんが慌ててあとを追い掛けた。
待合室の一角に子どもたちが遊べるスペースがあって、こはるちゃんは本棚から一冊の本を取り出すとお爺ちゃんに見せた。
「桃太郎か。懐かしいな」
こはるちゃんがぱらぱらと本を捲ると鬼の絵を指差した。
「どういうことだ?」
「もしかして鬼のように怖い顔だったのかも知れませんよ」
「あの熊倉さんがか?」
「人は見かけによらぬもの、よくいうでしょう」
「こはるちゃん、こわかった」
「もう大丈夫よ。本を片付けして、おうちに帰りましょうね」
「はぁ~~い」
本を本棚に返すと別の絵本を抱え戻ってきた。
「よんでくだしゃい」
「あらあら」
ニコニコの笑顔で頼まれれば駄目だとは言えず。お婆ちゃんは膝の上にこはるちゃんを座らせると【ママがママになったひ】というタイトルの絵本を読んで聞かせてあげた。
近くの椅子に座り微笑ましいふたりの姿を目を細め眺めていたお爺ちゃんが、あ、そういえば……なにかを思い出したみたいで、ポケットからスマホを取り出すと画面を操作しはじめた。
「お爺ちゃんどうしたの?」
「この間直売所に行ったとき、挙動不審な男性客がいたんだ。出入口に並べてあった花を見ていたんじゃなく、レジにいた熊倉さんを見ていたんじゃないかな。今だからはっきり断言出来る。40代後半白髪混じりの男だ。征之も一緒だったからもしかしたら儂より詳しく覚えているかも知れないと思ってな。老眼だからな、時間ばかりかかる。年は取りたくないな」
苦笑いを浮かべた。
「心春ちゃん迷子になったら大変だ」
お爺ちゃんが慌ててあとを追い掛けた。
待合室の一角に子どもたちが遊べるスペースがあって、こはるちゃんは本棚から一冊の本を取り出すとお爺ちゃんに見せた。
「桃太郎か。懐かしいな」
こはるちゃんがぱらぱらと本を捲ると鬼の絵を指差した。
「どういうことだ?」
「もしかして鬼のように怖い顔だったのかも知れませんよ」
「あの熊倉さんがか?」
「人は見かけによらぬもの、よくいうでしょう」
「こはるちゃん、こわかった」
「もう大丈夫よ。本を片付けして、おうちに帰りましょうね」
「はぁ~~い」
本を本棚に返すと別の絵本を抱え戻ってきた。
「よんでくだしゃい」
「あらあら」
ニコニコの笑顔で頼まれれば駄目だとは言えず。お婆ちゃんは膝の上にこはるちゃんを座らせると【ママがママになったひ】というタイトルの絵本を読んで聞かせてあげた。
近くの椅子に座り微笑ましいふたりの姿を目を細め眺めていたお爺ちゃんが、あ、そういえば……なにかを思い出したみたいで、ポケットからスマホを取り出すと画面を操作しはじめた。
「お爺ちゃんどうしたの?」
「この間直売所に行ったとき、挙動不審な男性客がいたんだ。出入口に並べてあった花を見ていたんじゃなく、レジにいた熊倉さんを見ていたんじゃないかな。今だからはっきり断言出来る。40代後半白髪混じりの男だ。征之も一緒だったからもしかしたら儂より詳しく覚えているかも知れないと思ってな。老眼だからな、時間ばかりかかる。年は取りたくないな」
苦笑いを浮かべた。
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