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恩返し
恩返し
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黒田さんを見送ったのち、彼はしばらくぼんやりと遠くを眺めていた。声を掛けたくても掛けられずにいたら、
「血の繋がった家族と写真でしか会ったことがないなんて、おかしな話しだよね。父を許し、歩み寄ろうとしなかった俺が悪いのかな」
寂しそうに呟くと深いため息をついた。
「和真さんが悪いって訳じゃない。お願いだから全部一人で抱え込もうとしないで。僕に話してよ」
大きな手にそっと指先を絡めると、
「ありがとう四季」
にこっと優しく微笑んでくれて、手をぎゅっと握り返してくれた。
お店に戻ろうとしたら彼の電話が鳴った。
「噂をすれば影がさすだ」
「もしかして和真さんのお父さん?」
「おおかた、娘をどこに連れていった。だろう。彼を殺したいほど恨んでいるのは俺と姉さんだ。姉さんに連絡がつかないから直接俺に連絡を寄越したんだろう」
画面をしばらく見つめたのち、通話ではなく、着信拒否のボタンを押した。
「出なくて良かったの?」
「用があればまた寄越すよ。戻ろうか」
彼に車椅子を押してもらい中に入ろうとしたら、ささっと店員さんが駆け寄ってくれて。ドアを手で支えてくれた。
「ありがとう」
お礼を言うと、これが仕事ですから。ぶっきらぼうに答えると、何事もなかったように厨房に戻っていった。
「血の繋がった家族と写真でしか会ったことがないなんて、おかしな話しだよね。父を許し、歩み寄ろうとしなかった俺が悪いのかな」
寂しそうに呟くと深いため息をついた。
「和真さんが悪いって訳じゃない。お願いだから全部一人で抱え込もうとしないで。僕に話してよ」
大きな手にそっと指先を絡めると、
「ありがとう四季」
にこっと優しく微笑んでくれて、手をぎゅっと握り返してくれた。
お店に戻ろうとしたら彼の電話が鳴った。
「噂をすれば影がさすだ」
「もしかして和真さんのお父さん?」
「おおかた、娘をどこに連れていった。だろう。彼を殺したいほど恨んでいるのは俺と姉さんだ。姉さんに連絡がつかないから直接俺に連絡を寄越したんだろう」
画面をしばらく見つめたのち、通話ではなく、着信拒否のボタンを押した。
「出なくて良かったの?」
「用があればまた寄越すよ。戻ろうか」
彼に車椅子を押してもらい中に入ろうとしたら、ささっと店員さんが駆け寄ってくれて。ドアを手で支えてくれた。
「ありがとう」
お礼を言うと、これが仕事ですから。ぶっきらぼうに答えると、何事もなかったように厨房に戻っていった。
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