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彼の焼きもち

彼の焼きもち

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「結お姉さん、和真さんは悪くないの。僕が優柔不断ではっきりしないから、だから、その……」
「たもくんは四季くんのことが大好きなんだと思うよ」
「結」櫂さんが慌てたような声を上げた。
「たもくんは私と副島と同じ。四季くんが可愛くて仕方がないんだと思う。だから、身をていして今まで必死に四季くんを守ってきた。でも和真が四季くんの前に現れて、人攫いのようにさぁーーと連れていってしまったんだもの。面白くないと思う。ほら、よくいうでしょう、可愛さあまって憎さ百倍って」
「結の言う通りだ。たもくんにとって四季くんは特別なひとなんだと思う。深い思い入れがあるんだと思う。それが愛なのか憎しみなのか、たもくん、本人にしか分からない」

そのときーー。
ピンポンと呼び鈴が鳴った。
「あら、誰かしら?」
玄関に向かおうとしたお婆ちゃんをお爺ちゃんが止めた。
「儂が行く。お前はここにいるんだ。櫂くん、家内と結と四季くんを頼む」
「いえ、私が行きます」
「もし何かあったらどうする?産まれてくる子どもに父親は必要なんだぞ。それに比べ儂は老い先が短い。大丈夫だ」
櫂さんの肩に軽く手を置くと、扉に立て掛けてあった竹刀を握り締め、玄関へとゆっくり歩いていった。

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