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彼の秘書

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仕事が終わり家に真っ直ぐ向かったはずなのに、気が付けば和真さんのお姉さん夫婦が経営するカフェの前に来ていた。
柔らかな明かりがともるお店をぼんやりと見上げていたら、カタン、静かに扉が開いた。
別に悪いことをしている訳じゃないのに、車椅子を押しその場から慌てて逃げ出した。

「四季くん、待って!」
和真さんのお姉さんの声が後ろから聞こえてきた。
「逃げなくても大丈夫だから。ご飯まだなんでしょう?食べていって」
車椅子を止めておそるおそる振り返ると、にっこりと微笑んで手招きされた。

笑った顔が和真さんにそっくりで。
ぼぉーとして見惚れていたら、
「私、和真じゃないんだけどな」
困惑気味に苦笑され、ハッとして我に返った。

「ごめんなさい。えっと・・・・」

緊張しすぎて名前を度忘れしてしまった。
どうしよう。
焦れば焦るほど思い出すことが出来なかった。

「和真さんのお姉さん、ごめんなさい。緊張しすぎて名前を忘れてしまいました」

怒られるのを覚悟して正直に謝った。

「いずれ四季くんのお姉さんになるんだから、お姉さんって呼んでいいわよ」

「へ?」

意味が分からなくてきょとんとして首を傾げると、またクスクスと苦笑いされてしまった。

「四季くんが困っているだろう。さぁ、中に入って」

和真さんのお姉さんのご主人が声を掛けてくれた。

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