桜空

ななもりあや

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彼との出会い

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「どこ見てんだ」
「すみません」
前の車にぶつかったみたいだった。
「逃げるぞ。警察を呼ばれたら一貫の終わりだ」
「報酬がゼロになる。なにやってんだ!早くしろ!」
アクセルを全開し走り出す車。でもすぐに急ブレーキをかけたから車内が大きく揺れ、僕は座席から滑り落ちた。外から怒号が聞こえてきた。
「ヤベ―ぞ」
男たちの声色が変わった。
し―んと静まり返る車内。ついさっき怒鳴り込んできた男たちに僕以外全員車から無理やり引きずり下ろされた。座席の下にいたから気付かれなかったのかもしれない。
ドアが開けっ放しなのだろう。生温い風が時おり吹き込んでいた。
「今のうちに逃げろ」
(誰なの?)
目隠しを外され、手首を拘束していたロ―プをナイフで切ってくれた。マスクをかけて目深く帽子を被っていたから顔までは分からなかった。
「すぐ目の前にコンビニがある。全速力で走れ」
手首を掴まれ外に出されるとどんと背中を押された。
ふらふらと足が震えて立つのもやっとで。逃げなきゃいけないのは頭ではわかっていたけど、どうにもこうにも最初の一歩が踏み出せなかった。やっとの想いで何歩か歩いて、エンジンがかけっぱなしで荷台に青いシ―トがかけられた軽トラが目に飛び込んできた。1ヵ所だけ縛るのを忘れたのか、隙間が空いていた。あそこなら隠れられるかもしれない。一か八か。あとは無我夢中だった。
どうやって荷台にのぼったのかなんて覚えていない。
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