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彼との出会い
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「ねぇ半谷さん、いいことを教えてあげる。婚約は解消にならないわよ。残念だったわね。玉の輿に乗れなくて。ビンボー人は所詮ビンボー人。藤堂とは不釣り合いよ」
「気色悪い。ヘドが出る」
「同じ空気吸うとかマジで無理」
若い男性は僕が両性だということを知っていた。
冷たい視線と容赦ない言葉を浴びせられた。
僕だって好きで両性に生まれたわけじゃない。ごくふつうの男の子として生まれたかった。悔しかったけど反論したら火に油を注ぐようなもの。唇を噛み締めて耐えた。
「あ、そうだ。半谷さん、私ね」
唯花さんがグラスを置いて、お腹にそっと手をあてた。
「ここに藤堂との赤ちゃんいるの」
「え?」
一瞬聞き間違えじゃないか。そう思った。だって妊娠しているなら煙草もお酒もダメなはず。
「私飲んでないわよ。どこに目がついているのよ。馬鹿じゃないの」
唯花さんがきゃははと笑い出した。
「半谷さんさ、唯花さんは誠意を見せれば大事にしないと言ってるんだよ」
「フツーなら訴えられてもおかしくないのに。さすがは唯花さんだ」
「どういう意味ですか?」
「本当に馬鹿ね、あんた。言わなきゃ分からない?」
黒服の男性たちに背中に背負っていたリュックサックを奪い取られた。
「返してください!」
唯花さんは知っていたのかも知れない。今日が給料日だってことを。振込じゃなく、現金払いだということを。
「もしかしてたったこれだけ?」
「笑える」
茶封筒の中身を見た瞬間男性たちと一緒にまた笑いだした。お嬢様育ちでおそらく働いたことがない唯花さんには一生かかって分からないと思う。アルバイトをふたつ掛け持ちして、月十四万稼ぐのがどれだけ大変か。
「唯花さん、キャッシュカードありました」
「お願いです。それだけは返してください!」
それまで取られたら一貫の終わりだ。唯花さんのところに行こうとしたけど、黒服の男性たちに体を掴まれ引き戻された。
「痛い思いをしたくないだろ?暗証番号を言え」
ドスのきいた低い声で脅された。
「気色悪い。ヘドが出る」
「同じ空気吸うとかマジで無理」
若い男性は僕が両性だということを知っていた。
冷たい視線と容赦ない言葉を浴びせられた。
僕だって好きで両性に生まれたわけじゃない。ごくふつうの男の子として生まれたかった。悔しかったけど反論したら火に油を注ぐようなもの。唇を噛み締めて耐えた。
「あ、そうだ。半谷さん、私ね」
唯花さんがグラスを置いて、お腹にそっと手をあてた。
「ここに藤堂との赤ちゃんいるの」
「え?」
一瞬聞き間違えじゃないか。そう思った。だって妊娠しているなら煙草もお酒もダメなはず。
「私飲んでないわよ。どこに目がついているのよ。馬鹿じゃないの」
唯花さんがきゃははと笑い出した。
「半谷さんさ、唯花さんは誠意を見せれば大事にしないと言ってるんだよ」
「フツーなら訴えられてもおかしくないのに。さすがは唯花さんだ」
「どういう意味ですか?」
「本当に馬鹿ね、あんた。言わなきゃ分からない?」
黒服の男性たちに背中に背負っていたリュックサックを奪い取られた。
「返してください!」
唯花さんは知っていたのかも知れない。今日が給料日だってことを。振込じゃなく、現金払いだということを。
「もしかしてたったこれだけ?」
「笑える」
茶封筒の中身を見た瞬間男性たちと一緒にまた笑いだした。お嬢様育ちでおそらく働いたことがない唯花さんには一生かかって分からないと思う。アルバイトをふたつ掛け持ちして、月十四万稼ぐのがどれだけ大変か。
「唯花さん、キャッシュカードありました」
「お願いです。それだけは返してください!」
それまで取られたら一貫の終わりだ。唯花さんのところに行こうとしたけど、黒服の男性たちに体を掴まれ引き戻された。
「痛い思いをしたくないだろ?暗証番号を言え」
ドスのきいた低い声で脅された。
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