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彼との出会い
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水族館からの帰り道。ほとんど会話という会話がなくて。車内はしんと静まり返り息苦しいくらい気まずい空気が流れていた。ハンドルを握る桐島さんが心配そうにバックミラー越しに僕たちをチラチラと見ていた。
「電話、出なくてもいいの?」
「電話?」
「さっきから鳴ってない?気のせいじゃないよね?」
藤堂さんに言われるまで着信があったことにぜんぜん気付かなかった。携帯の画面をちらっと見ると、枡さんと美紀さんから三回も電話があった。
「一緒に働いている人?」
「はい」こくりと頷いた。
「もしかしてさっき唯花に谷口海知を知らないかと聞いた女性?」
「そうです。名前は枡さんです。もう一人は駐車場に僕と一緒にいた美紀さんという方です」
「ふ~~ん、そうなんだ」
薄暗い車内。藤堂さんの表情はよくは見えない。なぜかぶっきらぼうな言い方をするとぷいっとそっぽを向いてしまった。藤堂さんの気を悪くするようなことを言った覚えはないのに。どうして?訳が分からなくて。声を掛けたくてもその勇気が出なくて。ただ携帯の画面を見るしか出来なかった。切なくて胸がぎゅっと苦しくなった。
心地い振動と丸一日立ち仕事をしていた疲れもあってかそのあとうとうととし始めて。いつの間にか寝ていたんだと思う。次に目を覚ましたとき、藤堂さんの端正な顔がドアップで視界に入って来たから驚いて飛び起きた。一気に眠気が吹き飛んだ。
肉親ではないといえ、相手は同じ同性なんだし本当なら恥ずかしがる必要なんてないのかもしれないけど、相手はひそかに想いを寄せる人。誰にも見せたことのない姿を藤堂さんに見せてしまったかも知れないと思うとやけに恥ずかしくなった。
「電話、出なくてもいいの?」
「電話?」
「さっきから鳴ってない?気のせいじゃないよね?」
藤堂さんに言われるまで着信があったことにぜんぜん気付かなかった。携帯の画面をちらっと見ると、枡さんと美紀さんから三回も電話があった。
「一緒に働いている人?」
「はい」こくりと頷いた。
「もしかしてさっき唯花に谷口海知を知らないかと聞いた女性?」
「そうです。名前は枡さんです。もう一人は駐車場に僕と一緒にいた美紀さんという方です」
「ふ~~ん、そうなんだ」
薄暗い車内。藤堂さんの表情はよくは見えない。なぜかぶっきらぼうな言い方をするとぷいっとそっぽを向いてしまった。藤堂さんの気を悪くするようなことを言った覚えはないのに。どうして?訳が分からなくて。声を掛けたくてもその勇気が出なくて。ただ携帯の画面を見るしか出来なかった。切なくて胸がぎゅっと苦しくなった。
心地い振動と丸一日立ち仕事をしていた疲れもあってかそのあとうとうととし始めて。いつの間にか寝ていたんだと思う。次に目を覚ましたとき、藤堂さんの端正な顔がドアップで視界に入って来たから驚いて飛び起きた。一気に眠気が吹き飛んだ。
肉親ではないといえ、相手は同じ同性なんだし本当なら恥ずかしがる必要なんてないのかもしれないけど、相手はひそかに想いを寄せる人。誰にも見せたことのない姿を藤堂さんに見せてしまったかも知れないと思うとやけに恥ずかしくなった。
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