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天狗の里
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「これは他愛もない戯れ言だ。聞き流してくれ」
頼理さまが寝返りをうち僕に背中を向けた。
「私に好いておると熱烈な和歌を送っておきながら幸人とも関わりを持っていた者。多数おる。酔ったふりをして私と関わろうとした者。懐刀を忍ばせ褥に潜り込んできた者。菓子に毒を仕込み食べさせようとした者。挙げればきりがない。だから金輪際嫁は娶らぬと誓ったのだ。物の怪やあやかしより残酷で醜いのは人のほうだと私は思う。迅に好いておると言われてもちっとも嬉しくもなかったし何も感じなかった。だからすぐに断った。信じては貰えぬが夢枕に母上が立っておられて鬼の里に私と運命を共にするものが現れると。だから私は門前払いをされようが何度も翠鳳さまのもとに通ったのだ。これからのことを話し合うはあくまで表向きで、本当はその人を探すためだった。りんに会って、ひと目で分かった」
頼理さまがヘックションと大きなくしゃみをした。
「今宵も冷えるの。りん、風邪をひく。早く横になったほうがいい」
頼理さまの何気ない気遣いが嬉しかった。
「気持ちいいな」
頼理さまの寝言にふと目が覚めた。
(え?なんで?)
自分が置かれている状況を把握するまで少し時間がかかった。
別々の布団で寝ていたはずなのに。気づいたら頼理さまが僕の傍らに寄り添い、包み込むように両手で抱き締められていたから心臓が止まるんじゃないか、そのくらい驚いた。
眠気が一瞬で吹き飛んだ。
心臓の音が聞こえるのではないかと思うほど激しく高鳴る。
顔まで熱くなってくる。
頼理さまが寝返りをうち僕に背中を向けた。
「私に好いておると熱烈な和歌を送っておきながら幸人とも関わりを持っていた者。多数おる。酔ったふりをして私と関わろうとした者。懐刀を忍ばせ褥に潜り込んできた者。菓子に毒を仕込み食べさせようとした者。挙げればきりがない。だから金輪際嫁は娶らぬと誓ったのだ。物の怪やあやかしより残酷で醜いのは人のほうだと私は思う。迅に好いておると言われてもちっとも嬉しくもなかったし何も感じなかった。だからすぐに断った。信じては貰えぬが夢枕に母上が立っておられて鬼の里に私と運命を共にするものが現れると。だから私は門前払いをされようが何度も翠鳳さまのもとに通ったのだ。これからのことを話し合うはあくまで表向きで、本当はその人を探すためだった。りんに会って、ひと目で分かった」
頼理さまがヘックションと大きなくしゃみをした。
「今宵も冷えるの。りん、風邪をひく。早く横になったほうがいい」
頼理さまの何気ない気遣いが嬉しかった。
「気持ちいいな」
頼理さまの寝言にふと目が覚めた。
(え?なんで?)
自分が置かれている状況を把握するまで少し時間がかかった。
別々の布団で寝ていたはずなのに。気づいたら頼理さまが僕の傍らに寄り添い、包み込むように両手で抱き締められていたから心臓が止まるんじゃないか、そのくらい驚いた。
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心臓の音が聞こえるのではないかと思うほど激しく高鳴る。
顔まで熱くなってくる。
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