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天狗の里
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「りんの家も賑やかだったが、ここはもっと賑やかだ」
「頼理さま、お体は?」
「青丹殿がりんが煎じてくれた薬草入りの茶を飲ませてくれたからか傷はだいぶ痛まなくなった。でも手はまだ震えが止まらぬが」
耳を気にする頼理さま。
「蜘蛛はもういないと聞いたが、りんに危害が及ばなくて良かった。私だけに取り憑いてくれて良かった」
嬉しそうに微笑む頼理さまを見た瞬間、胸がドキドキして、顔から火が出るくらい恥ずかしくてまともに頼理さまの顔を見ることが出来なくて俯いた。
「邪魔するぞ」
五色の絹で作られた几帳の影から厳つい体格の大男がぬっと姿を現した。
「そちが噂の青丹の妹か?どう見ても男のわらべやだが。まぁ、いい。詮索しても仕方がないからな。儂はこの屋敷の主、黒谷惣右衛門《くろたにのそううえもん》だ。頼理久しいのう」
天狗のお面を外す男性。頼理さまがはっと息を飲んだのが分かった。
「もしや良貴《よしたか》殿ですか?十年前に悪さばかりする天狗の討伐に向かわれてそのまま行方知らずになった」
「天狗を討伐するつもりが臣下の裏切りに遭ってな。死にかけておったところをそこにおる黒緋に助けられた。気付けば天狗の長だ。人生何があるか分からぬのう」
感無量といった面持ちで話す男性。
良貴殿は私の伯父だ。私と同じで長男として生まれ東宮になったが身分を剥奪され廃太子となった。頼理さまが分かりやすように説明してくれた。
「あやかしの里に足繁く通っていると小耳に挟み心配していた。儂の代わりに頼理に首を突っ込むなと忠告してくれと青丹に頼んでいたんだ。命が幾つあっても足りんぞ。現に矢で狙い撃ちされたんだろ?」
「頼理さま、お体は?」
「青丹殿がりんが煎じてくれた薬草入りの茶を飲ませてくれたからか傷はだいぶ痛まなくなった。でも手はまだ震えが止まらぬが」
耳を気にする頼理さま。
「蜘蛛はもういないと聞いたが、りんに危害が及ばなくて良かった。私だけに取り憑いてくれて良かった」
嬉しそうに微笑む頼理さまを見た瞬間、胸がドキドキして、顔から火が出るくらい恥ずかしくてまともに頼理さまの顔を見ることが出来なくて俯いた。
「邪魔するぞ」
五色の絹で作られた几帳の影から厳つい体格の大男がぬっと姿を現した。
「そちが噂の青丹の妹か?どう見ても男のわらべやだが。まぁ、いい。詮索しても仕方がないからな。儂はこの屋敷の主、黒谷惣右衛門《くろたにのそううえもん》だ。頼理久しいのう」
天狗のお面を外す男性。頼理さまがはっと息を飲んだのが分かった。
「もしや良貴《よしたか》殿ですか?十年前に悪さばかりする天狗の討伐に向かわれてそのまま行方知らずになった」
「天狗を討伐するつもりが臣下の裏切りに遭ってな。死にかけておったところをそこにおる黒緋に助けられた。気付けば天狗の長だ。人生何があるか分からぬのう」
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