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天狗の里
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頼理さまが待っている天狗の長の屋敷にどうやって帰ったのかよく覚えていない。気付いたときには布団の上に横になっていた。
「なかなか帰ってこないから、りんに何かあったのではないか、気が気ではなかった。良かった無事で」
ほっとして胸を撫で下ろす頼理さま。顔色が悪い。
「具合が悪いのに、寝てないといけないのに、すみません巻き込んでしまって」
起き上がろうとしたら、
「頼むからこのまま横になっていてくれ。私は巻き込まれたとは思っていない。私のこそりんを巻き込んでしまいすまぬ」
頼理さまが頭を垂れた。
「目覚めたらりんと白鬼丸がどこにもいなくて。青丹殿以外みな知らぬ顔。なぜここにいるのかと青丹殿に聞いたら悪い物の怪が襲ってきたと。私のためにりんが薬草を取りに行ってくれていると聞いてはいたが、暮らせど帰ってこなくて。心細しくて。このまま帰ってこないのではと気が気ではなかった。青丹殿には心配無用と言われたが、心配で落ち着かなかった」
頼理さまの目にうっすらと涙が浮かんでいた。
「うなされていたから心配した」
頼理さまの手が遠慮がちに頬に触れてきた。
「私のためにほとんど寝ていないと青丹殿から叱られた。りんを守るべき立場なのに不甲斐ない」
「そんなことありません」
首を横に振った。
「きみは他人を思いやることが出来るやさしい心根の持ち主だね」
「焼きもちを妬くなんてみっともないぞ」
「うるさいな」
廊下から青丹さまと黒緋の声が聞こえてきた。
「なかなか帰ってこないから、りんに何かあったのではないか、気が気ではなかった。良かった無事で」
ほっとして胸を撫で下ろす頼理さま。顔色が悪い。
「具合が悪いのに、寝てないといけないのに、すみません巻き込んでしまって」
起き上がろうとしたら、
「頼むからこのまま横になっていてくれ。私は巻き込まれたとは思っていない。私のこそりんを巻き込んでしまいすまぬ」
頼理さまが頭を垂れた。
「目覚めたらりんと白鬼丸がどこにもいなくて。青丹殿以外みな知らぬ顔。なぜここにいるのかと青丹殿に聞いたら悪い物の怪が襲ってきたと。私のためにりんが薬草を取りに行ってくれていると聞いてはいたが、暮らせど帰ってこなくて。心細しくて。このまま帰ってこないのではと気が気ではなかった。青丹殿には心配無用と言われたが、心配で落ち着かなかった」
頼理さまの目にうっすらと涙が浮かんでいた。
「うなされていたから心配した」
頼理さまの手が遠慮がちに頬に触れてきた。
「私のためにほとんど寝ていないと青丹殿から叱られた。りんを守るべき立場なのに不甲斐ない」
「そんなことありません」
首を横に振った。
「きみは他人を思いやることが出来るやさしい心根の持ち主だね」
「焼きもちを妬くなんてみっともないぞ」
「うるさいな」
廊下から青丹さまと黒緋の声が聞こえてきた。
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