溺愛親王と竜神さまの巫女

ななもりあや

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運命の相手

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「見ない方がいい。俺たちには気付いていないようだから、このまま静かに立ち去ろう」
黒緋さまが小声でまわりにいる天狗たちに指示を飛ばした。牛車の上を素通りし川を渡ろうとした時だった。
「りんの癖に生意気な。ボクをシカトするとはねいい度胸をしてるね」
迅の声はよく通る。鋭いナイフみたいに心に突き刺さる。氷のように冷たい目で睨まれれば怖くていつも動けなくなる。
「聞かぬは仏だ」
黒緋さまが前をじっと見据えた。
「無礼な奴だ。挨拶の仕方も分からぬとはな。これだから国が乱れるんじゃないのか」
黒緋さまではない声が上から聞こえてきた。
ドキッとしてあたりをキョロキョロと見ると白い烏と目が合った。
「こんにちは。さっきは助けていただきありがとうございます」
呑気に挨拶をしている場合じゃないけど、何事も挨拶が基本。最初が肝心だもの。ぺこっと頭を下げると、
「肝が座っているな。さすがは俺の青丹の妹」
くくくと笑い出した。
あれ、さっき俺のって。聞き間違いじゃないよね。聞き返そうとしたら、
「たかが烏一匹と天狗に何を手間取っているんだ!さっさと撃ち殺して!」
迅が外に飛び出してきた。白い着物に赤い袴、神社でよく見かける巫女の格好をしていた。
「白い烏も八咫烏も神様のお使い。殺すなどできません。祟られます。どうかお許しください」
兵たちが土下座し額を地面に擦り付けて謝った。
「役立たず!」
迅が弓を手に取った。





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