溺愛親王と竜神さまの巫女

ななもりあや

文字の大きさ
上 下
36 / 48

運命の相手

しおりを挟む
烏たちが教えてくれた通り大勢の兵士たちが手ぐすねを引いて待ち構えていた。
「国に災いをもたらす元凶だ。殺せ!」
馬に股がった男が野太い声を張り上げると、一斉に弓を構えた。
「弱いものをいじめるのはお止めなさい」
老僧がどこからともなく姿を現した。よく見ると、目は三つあり、握っていた杖にはしゃれこうべをつけていた。
「さてはお前も仲間だな。こいつも殺せ!」
兵士たちが見上げれば見上げるほど、まるで入道雲みたく老僧がどんどん大きくなっていった。
「見越し入道だ。姿は見えぬが兵たちに石を投げているのがしばかきだ。翠鳳の娘を守るんだとみな息巻いている」
黒緋さまの言葉に驚いた。親に見捨てられ、誰からも振り向きもされてこなかったのに。
「何もしていないのに、なんで?」
「してるじゃないか?きみが気付かないだけだ。今のうちに逃げるぞ。あとは任せた」
烏たちからは「任せておけ」と力強い返事が返ってきた。
執拗に追い掛けてくる追っ手をなんとか振り切り人間界とあやかしの世界の境界線にある大きな川のところにようやく辿り着いた。
「りん、アイツを知ってるな?」
黒緋さまに言われそっと下を見ると、そこには大勢の兵に守られた牛車が停まっていた。簾を少し開けて外の様子をちらちらと伺うのは間違いなく迅だった。
「一番会いたくないと顔に書いてある。左様相違ないか?」
黒緋さまも何もかもお見通しだった。
迅は何をしにこんなところにいるんだろう。退屈そうに欠伸をしながら川のほうを見ていた。視線を向けようとしたら、大きな手が視界を遮った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

研修医と指導医「SМ的恋愛小説」

浅野浩二
恋愛
研修医と指導医「SМ的恋愛小説」

М女と三人の少年

浅野浩二
恋愛
SМ的恋愛小説。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...