溺愛親王と竜神さまの巫女

ななもりあや

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運命の相手

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「あれが神の使いの八咫烏だ。一番会いたくない奴だ」
「あの、藤黄さまのお兄さん」
「あれ、まだ名前を言ってなかったか?」
「はい」コクりと頷くと、
「黒緋《くろあけ》だ。ちゃんと掴まってろよ」
ふわりと体が宙に浮き横に抱っこしてもらった。落とされないように首根っこに腕を伸ばしぎゅっとしがみついた。白鬼丸が籠を背負うと一緒に来ていたもうひとりの天狗が白鬼丸を抱き抱えた。
数十羽の烏の集団ががどこからか飛んで来て、反射的に身構えると、
「彼らは俺たちの味方だ。安心しろ」
黒緋さまがクスッと笑った。
「敵の数、数百」
集団の中に一匹だけ白い烏がいた。
「そうか、分かった。しかしまぁ、しつこい連中だ。地獄の果てまでも追ってくるつもりでいるのか」
黒緋さまがやれやれとため息をついた。
烏たちが教えてくれた通り大勢の兵士たちが手ぐすねを引いて待ち構えていた。
「国に災いをもたらす元凶だ。殺せ!」
馬に股がった男が野太い声を張り上げると、一斉に弓を構えた。
「弱いものをいじめるのはお止めなさい」
老僧がどこからともなく姿を現した。よく見ると、目は三つあり、握っていた杖にはしゃれこうべをつけていた。
「さてはお前も仲間だな。こいつも殺せ!」
兵士たちが見上げれば見上げるほど、まるで入道雲みたく老僧がどんどん大きくなっていった。
「見越し入道だ。姿は見えぬが兵たちに石を投げているのがしばかきだ。翠鳳の娘を守るんだとみな息巻いている」
黒緋さまの言葉に驚いた。親に見捨てられ、誰からも振り向きもされてこなかったのに。
「何もしていないのに、なんで?」
「してるじゃないか?きみが気付かないだけだ。今のうちに逃げるぞ。あとは任せた」
烏たちからは「任せておけ」と力強い返事が返ってきた。
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