28 / 48
運命の相手
しおりを挟む
「あやかしも弱肉強食だ。俺らもひとのことは言えないが、骨肉の相食む権力争いほど醜い争いはない。本人は気付いていないが、少なくても物の怪が十体は取り憑いている。こいつが里に来たとき、奴らはあっという間に姿を消した。親父に見付かったら最後。食われるからな」
笑顔で怖いことを言われ、さぁーっと血の気が引いた。
「頼理さまを助けたい」
「居候の癖に生意気だ。行くあてがないお前を仕方なく引き取ってやったというのに。また迅に馬鹿にされるぞ。いいのか?」
なんだ迅じゃないほうの石井だ。気色悪いほうだ。妖怪人間のほうだ。親だけでなく先生や同級生に散々馬鹿にされてきた。
「何を言われてもへっちゃらだよ。笑っていればいいんだもの」
「心のなかで泣いて、だろ?」
「白鬼丸は何でもお見通しだね」
「りんのことは俺が一番知っているからな。子が子なら親も親だ」
白鬼丸がゆっくりと体を起こすと人型に変化した。
「人と違うだけでりんをいじめて。自己満足と優越感に浸り喜んでいるんだからな。平和な連中だ。つくづくそう思うよ」
浴衣をさっと羽織る白鬼丸。見ないように慌てて両手で顔を隠したら、
「お互い、裸は見慣れているはずだ。今さら恥ずかしがってどうする?」
クスクスと笑われてしまった。
異世界から来たどこの馬の骨とも知らない僕にみんな優しくしてくれる。翠鳳さまも翡翠さまも青丹さまも家族として僕を迎え入れてくれた。実の親にもこんなふうに優しくしてもらったことがないから戸惑うことばかりだ。
にいたんと呼ばれたような気がして、藍色の空を見上げると雲の切れ間から弓のように細い月が見えた。空耳か、こんなところに妹の七音《なお》がいる訳ないもの。
笑顔で怖いことを言われ、さぁーっと血の気が引いた。
「頼理さまを助けたい」
「居候の癖に生意気だ。行くあてがないお前を仕方なく引き取ってやったというのに。また迅に馬鹿にされるぞ。いいのか?」
なんだ迅じゃないほうの石井だ。気色悪いほうだ。妖怪人間のほうだ。親だけでなく先生や同級生に散々馬鹿にされてきた。
「何を言われてもへっちゃらだよ。笑っていればいいんだもの」
「心のなかで泣いて、だろ?」
「白鬼丸は何でもお見通しだね」
「りんのことは俺が一番知っているからな。子が子なら親も親だ」
白鬼丸がゆっくりと体を起こすと人型に変化した。
「人と違うだけでりんをいじめて。自己満足と優越感に浸り喜んでいるんだからな。平和な連中だ。つくづくそう思うよ」
浴衣をさっと羽織る白鬼丸。見ないように慌てて両手で顔を隠したら、
「お互い、裸は見慣れているはずだ。今さら恥ずかしがってどうする?」
クスクスと笑われてしまった。
異世界から来たどこの馬の骨とも知らない僕にみんな優しくしてくれる。翠鳳さまも翡翠さまも青丹さまも家族として僕を迎え入れてくれた。実の親にもこんなふうに優しくしてもらったことがないから戸惑うことばかりだ。
にいたんと呼ばれたような気がして、藍色の空を見上げると雲の切れ間から弓のように細い月が見えた。空耳か、こんなところに妹の七音《なお》がいる訳ないもの。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる