溺愛親王と竜神さまの巫女

ななもりあや

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運命の相手

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「あやかしも弱肉強食だ。俺らもひとのことは言えないが、骨肉の相食む権力争いほど醜い争いはない。本人は気付いていないが、少なくても物の怪が十体は取り憑いている。こいつが里に来たとき、奴らはあっという間に姿を消した。親父に見付かったら最後。食われるからな」
笑顔で怖いことを言われ、さぁーっと血の気が引いた。
「頼理さまを助けたい」
「居候の癖に生意気だ。行くあてがないお前を仕方なく引き取ってやったというのに。また迅に馬鹿にされるぞ。いいのか?」
なんだ迅じゃないほうの石井だ。気色悪いほうだ。妖怪人間のほうだ。親だけでなく先生や同級生に散々馬鹿にされてきた。
「何を言われてもへっちゃらだよ。笑っていればいいんだもの」
「心のなかで泣いて、だろ?」
「白鬼丸は何でもお見通しだね」
「りんのことは俺が一番知っているからな。子が子なら親も親だ」
白鬼丸がゆっくりと体を起こすと人型に変化した。
「人と違うだけでりんをいじめて。自己満足と優越感に浸り喜んでいるんだからな。平和な連中だ。つくづくそう思うよ」
浴衣をさっと羽織る白鬼丸。見ないように慌てて両手で顔を隠したら、
「お互い、裸は見慣れているはずだ。今さら恥ずかしがってどうする?」
クスクスと笑われてしまった。
異世界から来たどこの馬の骨とも知らない僕にみんな優しくしてくれる。翠鳳さまも翡翠さまも青丹さまも家族として僕を迎え入れてくれた。実の親にもこんなふうに優しくしてもらったことがないから戸惑うことばかりだ。
にいたんと呼ばれたような気がして、藍色の空を見上げると雲の切れ間から弓のように細い月が見えた。空耳か、こんなところに妹の七音《なお》がいる訳ないもの。



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