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運命の相手

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「あれま、りんちゃんじゃないの?」
いちくんのお母さんはちょうど食事の用意をしていた。
「干した青草を譲っていただきたくて。その代わりにといってなんですがこれを」
弟切草を差し出した。
「こんなにもらって何だか悪いわね」
「悪くないです」
ぶんぶんと首を横に振った。
いちくんのお母さんに弟切草の使い方を教えてもらった。お茶として飲んでも効果があるみたいだった。
「りんちゃんだ」
「ほんとだ」
子どもたちが一人また一人と集まってきた。
「遊べないよ」
「なんで?あそびたい!」
「怪我人がいるんだよ。また今度にしな」
「えぇ~~やだ」
これでもかと下唇を伸ばすいちくんたち。
「りんちゃんは逃げないよ。ずっとここにいるんだよ。いつでも遊べるでしょ?今日だけ我慢しなさい」
「おくってくのは?」
「いいでしょ?」
ただでは諦めないいちくんたち。干した青草をみんなで手分けして持ってくれた。いちくんのお母さんからもらった川魚を竹で編んだ籠に入れてもらい、白鬼丸が待つ家へと急いだ。


魚のぬめりを軽く洗い流し、包丁で内蔵を取り除いて白鬼丸が作ってくれた木の串に刺して囲炉裏の端に立てて並べた。
「さすがに手際がいいな。りんの包丁さばきは見ていて惚れ惚れする」
「ありがとう白鬼丸。決められた食費で何とかやりくりして毎日家族のためにご飯を作って、掃除して、洗濯をして。チラシを見て安いお店を何軒もはしごして買い物をして。あっという間に1日が過ぎていく。高校に行かせてもらっているんだもの。文句を言える立場じゃない。でも……」
ぎゅっと唇を噛み締めた。
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