溺愛親王と竜神さまの巫女

ななもりあや

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運命の相手

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「家族のぬくもりを知らないか」
青丹さまに心の声を聞かれていた。
「だから娘として迎えた。なるほど。りん、甘えろ、そうすれば二人は今よりもっとうんと可愛がってくれる。いじくり回されるくらいにな」
「急に言われても……」
「母上の顔が見たい。それも立派な理由になる」
「彼が元気になったら、お礼も兼ねて翡翠さまに……」
男性がゴホゴホと咳払いした。
「じゃなかった。母上に会いに行きます」
「それがいい」
浅葱さまが嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねていた。
「浅葱、食われたくなかったら余計なことは言うなよ」
「わ、分かってますよ」
青丹さまに睨まれ、浅葱さんがギクリとした。冷や汗が額からだらだらと流れていた。

白鬼丸が弟切草を両手いっぱいに摘んできてくれた。
弟切草を焼酎で漬けた瓶が家にあって、虫に刺されたときや、火傷をしたとき、よくおばあちゃんが塗ってくれた。それを思い出してまた切なくなった。
「青丹、なんでここに?」
まさかいるとは思っていなかったのだろう。黒檀さまが目を丸めていた。
「なんでって妹に会いに来て悪いか?」
「いや、悪くないがここにいることを連れに伝えてきたんだろ?」
「いや、伝えていない」
「今頃大騒ぎになってないか?」
「大丈夫だ」
青丹さまにとってはどこ吹く風みたいで草笛を吹きながら空を眺めていた。

「コイツ、死んでるんじゃないのか?」
白鬼丸が男性の体を軽く揺すると、微かに体がぴくぴくと動いた。
「鵺がまだうろついている。俺がいれば手出しはできない。生き霊か、物の怪か、彼には何体も憑いている」
「これほどの強力な呪詛をかけられるということは八百万の神か、八咫烏の仕業か。悪さをしないということは、竜神がそれを上回る力を持っているということか?」
「案外竜神ではなくりんのほうかもな。国を災禍から守るために選ばれた神子は迅でなく、りんだったのかも知れない。迅が選ばれし神子ならとうの昔に天下泰平の世の中になっていた」
まさか二人がそんな会話をしているとはこれっぽっちも知らなかった。
そのころ僕は弟切草を抱え、いちくんの家を訪ねていた。
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