single tear drop

ななもりあや

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守るべき大切な人

守るべき大切な人

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「自分を責めたってしょうがないだろう。肝心なのはこれからどうするかだ。違うか?」
諭すように二人に声を掛けた。
「まずは伊澤と合流し茂原を探し出して一刻も早く保護するのが先だ。永山と樋山、どっちが炎竜なのか、ハッキリさせないとしょうがないだろう」
「播本さんは炎竜がだれか、薄々気が付いているんでしょう」
「それはどうかな?」
お祖父ちゃんは含み笑いをし蜂谷さんに言葉を返した。


「今日、明日、連中が何を仕掛けてくるか分からない。お前ら、気合い入れて姐さんと子供達を守れ。いいな!」
朝早くからお祖父ちゃんの檄が警備にあたる若い衆に飛んでいた。それこそ寝ずに交代で警備をしてくれる若い衆のみんなに申し訳なくて。何も出来い自分が不甲斐なかった。
「おぃ播本」
竹刀を振っていた惣一郎さんがお祖父ちゃんに声を掛けた。
「手合わせを願いたい」
「冗談だろう。一度もやったことがないぞ」
「まぁそう言わず、頼むよ」

二人は静かに向き合って座礼をすると、続けて蹲踞《そんきょ》の姿勢を取った。
剣道自体初めてなのに、お祖父ちゃんの姿は様になっていた。
彼や一太、それに若い衆が自然とその回りに集まってきた。
あの伝説のヤクザ・播本の現役時代と全く変わらない雄々しい姿にみな羨望の眼差しを向けていた。
一太の目もキラキラと輝いていた。
「若い衆にとって茨木さんは憧れの的。いわば神様だからな。いい刺激になる」
「でも、お祖父ちゃんは………」
「茨木さんは激動の昭和、平成を生き抜いてきた人だ。だから、大丈夫だ」
彼も腕を前で組み、手合わせの様子を静かに見守っていた。

立ち上がって竹刀を触れ合わせて。
上背のある惣一郎さんがすうっ、と竹刀を振り上げ上段に構えた。
お祖父ちゃんは一歩も引かず、惣一郎さんを真っ直ぐに見据えた。
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