single tear drop

ななもりあや

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ゴメンね

ゴメンね

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『あのね。遥琉さんまだ怒ってるかな?』

メモ帳に書いて橘さんに見せた。

「怒ってませんよ」

嘘だ。退院してから全然目を合わせてくれないんだよ。目が合ったとしてもすぐに逸らすし、子供達を寝かし付けたら、そそくさと部屋を出ていってしまうし。

僕が彼や子供達のこと忘れちゃったから、たから怒ってるんだ。きっとそうだ。
僕が全部悪いんだ。

「未知さん」メモ帳にそのことを書こうとしたら、橘さんに名前を呼ばれた。

「自分のことや、子供達のことを何も覚えていないことにショックは受けていました。でも……」

そこで言葉を止めると、頬を優しく撫でられた。あっ、これって………

「何も覚えていないはずなのに、遥琉や子供達の手の温もりをあなたはちゃんと覚えていました。頬をこうして撫でられて、あなたは涙を流して静かに泣いていました。一太くんやハルちゃんを無意識のうちに抱き締めてあげたでしょう」

「遥琉はね、未知を独り占めしたいんだよ。お邪魔虫さえいなければ、丸一中甘えていれるのにってボヤいてたよ。未知の顔を見たら構って欲しくて、我慢出来なくなるんだって。だから、わざと目を逸らしているんだよ。たいくんのパパは、顔は恐い癖に、あぁ見えて意外と不器用だから」

心さんが然り気無くフォローしてくれた。

「未知さんが気付かないだけですよ。遥琉は毎晩、紗智さんや那和さんが寝るのを確認してから、布団の中にそぉーと潜り込んで、熟睡している未知さんや子供達の寝顔を幸せそうに眺めているんですよ」

そうなの、びっくりして目を丸くしたら、橘さんや心さんにクスクスと笑われてしまった。

「愛妻家だからね、遥琉は」

「未知さんは愛されているんですよ」

太惺と心望が小さなお手手を懸命に伸ばし、二人に抱っこをせがんだ。

「本当に可愛いよね。たいくんもここちゃんも。全然人見知りしないし。このままパパに似ないでママに似るんだよ」

太惺と心望のまんまる笑顔に心さん、顔が緩みっぱなしになり、メロメロになっていた。


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