single tear drop

ななもりあや

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暗澹

暗澹

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(・・・・スカルさん・・・・・何で?)

警察に包囲されたリーさんを逃がすため、自ら盾になって亡くなったって・・・・彼が。

「オヤジがチャンスをヤツに与えたんだよ。尊を誰よりも愛しているなら罪を償いながら生き直せってな」

鳥飼さんの声が後ろから聞こえてきて吃驚して振り返ると、懐かしい温もりに溢れた腕の中にすっぱりと抱き締められていた。

「良かった無事で・・・・・」
「一応妊婦でしょう。大人しくしてないとダメでしょう」

ポロポロと大粒の涙を流し、二人は泣いていた。
「何で………」

最初信じられなくて、夢じゃないかと思った。

「可愛い妹と、甥っこと姪っこ達が危ない目に遭ってるのよ。姉として駆け付けるのが当たり前でしょう」

「そうだよ未知。裕貴がね、早く未知を助けに行けって煩くてさぁ……いつもならどこに行くにも一緒じゃないとダメだって駄々を捏ねるのね、俺が留守番をしているから、そう言って送り出してくれた」

「千里さん、心さん………ありがとう」

「礼なんかいらないわよ」

千里さんと心さんが笑顔を見せながら鼻をズズっと啜った。

「あれ?せんりおねぇたん?ここにいたん?」

遥香が目を覚ました。あくびをしながら二人をしばらく見詰めたのち、驚いたように目をパチパチさせながら飛び起きた。

「あれ?なんで、なんで」

ハイハイで二人に駆け寄った。

「あっ!わかった!ハルちゃんにあいにきたんだ」

「うん、そうだよ」

心さんが涙を手の甲でごしごしと拭い、遥香を抱き上げてくれた。

「ハルちゃん、ここにいたんちゅき!」

「僕もハルちゃんが好きだよ」

ちょっと焼きもち妬きで寂しがりやの彼に妬かれない程度に好きだよって小声で付け加えた。

「ちょっとじゃないでしょう」

千里さんがクスクスと苦笑いしていた。
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