single tear drop

ななもりあや

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それぞれの愛のかたち

それぞれの愛のかたち

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「あっ、ぱぱたんだ」

戻って来た柚原さんの姿を真っ先に見付けた遙香。破顔し駆け寄って行った。僕や那和さんが止めようとしたけど、するりとすり抜けていった。

「かっこいい!」

「おぅ」嬉しそうに目元を綻ばせると遥香を抱き上げてくれた。

「ままたんはもっと可愛いぞ」

「ほんと?」

目をキラキラと輝かせ、柚原さんとともに扉が開くのを今か今かと待ちわびた。
そしてーー

扉が静かに開いて純白のタキシードに着替えた橘さんが姿を現した。温かい拍手に迎えられ彼のエスコートでバージンロードをゆっくりと歩き出した。


彼が好きで好きで大好きで。
誰よりも彼を愛しているからこそ、僕や一太の為に身を引いてくれた。
僕が彼とこうして幸せになれたのは橘さんのお陰だもの。
だからこれからは柚原さんと幸せになって欲しい。


祭壇前で待つ柚原さんと遥香の前まで進むと、

「柚原、橘を……いや、優璃を幸せにしてやってくれ。元彼の俺が言うべき台詞じゃねぇのは分かってる。この通りだ、頼む」

真っ直ぐに前を見据えて静かにそう口にすると頭を下げた。

「あぁ、言われなくてもそのつもりだ」

相好を崩す柚原さん。

「オヤジにはむしろ感謝をしている。悪い虫が優璃に近付かないよう睨みを効かせてくれたお陰でこうして一緒になれた」

感謝の想いを伝えると橘さんの手をそっと握り締めた。

「ままたん、かぁいい!」

両手をパチパチと叩きながら黄色い歓声を上げる遥香をふたりで愛しそうに目を細めて見詰めた。

吹っ切れたのか橘さんの表情は晴れ晴れとしていた。すらりとした薬指には銀の結婚指輪がキラキラと幸せいっぱいに輝いていた。


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