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真沙哉さんが手離した大事なもの
真沙哉さんが手離した大事なもの
しおりを挟む「妻子をリーから守るため、菱沼組の狸ジジイに匿って貰っている。迎えに行きたい。何度も頼まれて。無下に断る訳にもいかないだろう。浩然は今まで特定の女を絶対に作らなかった。それがまさか結婚し、子供が三人もいたとはな。まさに青天の霹靂」
「地竜さん、何度も言ってるけどそれは誤解で…………」
「浩然が嘘を付いているとでもいうのか?」
目を吊り上げて睨まれた。
「だから、その…………」
どうしたら分かってくれるんだろう。誤解だって。
栗色のさらさらした髪に印象的な黒目がちの瞳。色白で透明感のある一見すると女性かと見間違える可愛らしい顔立ちをしていた。
「マーナオだ」
「マーナオ?」
「あぁ。中国語で瑪瑙だ。寵愛する情人に宝石の名前をつける。趣味の悪い男が一人いるだろう」
「もしかして…………リー…………さん、ですか?」
思い当たる人は彼にしかいない。紗智さんも、「琥珀」として真沙哉さんやリーさんの情人だった。
すると彼も…………
チラッと様子を伺うようにマーナオさんに目を遣ると目が思いっきり合ってしまった。
「安心して。ボクと浩然はただのセフレだから。リーに捨てられて自暴自棄になっていたボクを助けてくれたの浩然だった。それだけ。宜しくね未知」
人懐こい笑顔を見せてくれるものの、その笑顔は氷のように冷たいものだった。
「宜しくお願いします」
おっかなびっくり手を差し出すと、
「僕はセフレだよ。本妻とは仲良くする気、ないから」
クスクスと悪戯っぽく笑って、ふらっとどこかに行ってしまった。
「マーナオは14才のときは既に女の格好をさせられリーの幼妻として寵愛を一身に受けていた。それが真珠という女にリーを寝取られ、妻の座も追い出された。マーナオと何とか上手くやってくれ」
地竜さんがやれやれとため息をついていた。
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