single tear drop

ななもりあや

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つかの間の帰省

紗智さんお見合いする

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「田園風景が広がる田舎でのんびりと過ごすのが長年の夢で、弟と妹が一人立ちしたら移住するつもりでいたんだ。仕事はどこでも出来るからな。琥珀いつでも連絡を寄越せ」

すっと立ち上がると心望の頭を撫でてくれて、千里さんと裕貴さんに挨拶し客間を後にした。

琥珀さんは身動ぎ一つせず手元の電話番号とメルアドが書かれたメモをじっと見詰めていた。

「マー、えっと・・・・何だっけ……」

「鞠家さん?」

「うん、日本語、難しい」

「いい人、分かる。茨木さんが俺にって探してくれた。兄貴の知ってる人。でも・・・」

そこで言葉を止めるとギュッと上唇を噛み締めた。


「鞠家は何て?」

「髪が綺麗だねって。写真で見た長い髪の君も可愛いいなって思ったけど、今の方が何倍も可愛いって。いいなぁ~アタシも一度でいいからダーリンに言われてみたい」

「笹原は意外と恥ずかしがりやだからな。まぁせいぜい頑張れ」

「えぇ‼何それ」

一際甲高い声が上がった。

「まずは友達から、その先の事はじっくりと話し合って決めようって。律儀で礼儀正しいのは高校の時から全く変わってない。千里、頼むからあまり大きい声を出さないでくれ」

そっか、裕貴さんも彼と同級生だもの。だから鞠家さんの事を知ってるんだ。

一呼吸ついて彼が琥珀さんの隣にゆっくりと腰を下ろした。


「時間は幾らでもある。焦る必要はない」

「彼どんな人?青蛇のメンバーだったって言ったら普通驚く。彼驚かなかった」

「鞠家の亡くなった父親は茨木さんの舎弟だったんだ。颯人の実の父親と同じで周を助けるため命を落とした。当分の間の生活費と葬式代として昇龍会から貰った金をすべて男に貢ぎ母親が蒸発した。当時中学生だった鞠家ら兄弟を引き取ったのは茨木さんだった。鞠家はカフェを手伝いながら奨学金で高校に通った。分かりやすく説明するってなかなか難しいな」

首を傾げる琥珀さんにクスリと苦笑いしていた。

「マーの側いたい。離れたくない。ハルちゃんこと守る、俺の役目。やっぱり俺邪魔?」

メモ紙をくしゃくしゃにして握り締めた。

「邪魔な訳ないだろ。邪魔だったら盃を交わしていない」

彼の大きな手が琥珀さんの頭を優しく撫でた。

「恐らく鞠家はお前の過去を知った上でこの見合いの話しを受けたんだと思う」



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