single tear drop

ななもりあや

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彼のお兄さん

彼のお兄さん

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「浩然」すらっと背が高く、腰まである長い髪を一つに束ねた男性が車に乗り込んできた。
慌てて胸元を隠そうとしたら、タオルケットを肩に羽織らせてくれた。

「サムクナイ?」

片言の日本語で声を掛けられた。
あっ、この人……さっき助けてくれた人だ。
鬼のような怖い顔でまだ首も座っていない太惺を、邪魔だとばかりに足で蹴り飛ばそうとした男に「ティン  シィア!」と怒鳴り付け、「ダイジュウブ」慣れた手付きで抱き上げてくれた男性だ。

「ミルクマッテ、アト、オムツ」

目を細め心望の頭を撫でてくれた。

一太と入れ違いに信孝さんと話しをしていた遥という男性がひょっこり顔を出し、彼らと鉢合わせになった。
こぞこぞとポケットを探り、護身用の折り畳み式のナイフを取り出したものの、男性に嘲笑われされあっという間に取り上げられ、逆に喉元に突き付けられ、太惺を抱っこするように命じられ車まで一緒に来ると、用済みとばかりに、みぞおちを蹴られその場に崩れ落ちた。
遥さん大丈夫かな?怪我してないかな?
僕にはこれがあるから大丈夫。
彼がきっと必ず見付けてくれるから。
気づかれないようにペンダントを片手でそっと握り締めた。

ぐすりながらもおっぱいから口を離してくれた太惺。心望が待ってるのをまるで分かっているみたいだった。

「琥珀《フーボー》、人質にあまり馴れ馴れしくするな」

真沙哉さんがジロっと男性を脅し付けた。
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