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波紋
波紋
しおりを挟む「どけ、邪魔だ」
心さんの肩を手で押し退け、乱暴に手首を掴まれた。手の跡が残るくらい強い力で。
「未知を離して!」
掴み掛かろうとした心さんを睨み付け、その手を払い除けた。
「聞こえないのか?邪魔だ」
表情一つ変えず冷たく言い放つと、銃口を首筋にぐいっと捩じ込むように押し当てられた。「大人しくしてろ」耳元で囁かれ全身が震え上がった。
「姐さん!!」
「くそっ!!」
若い衆も僕が人質では手出しが出来ず、為す術もなくただ立ち尽くすしかなかった。
そのときだった。
「………動くな」
カチャという金属音と共によく響く低いバリトンの声が真沙哉さんの背後から聞こえてきた。
初めて耳にするその声の持ち主は……
「………嘘………」
思わず声を呑む心さん。
僕も驚きのあまり息を呑んだ。
「和泉茜音……恐らく覚えてないと思う。彼女は、オレにとっても、柚原にとっても、とても大切だった人だった」
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男性としての顔を、声を初めて目の当たりにした。
「いずみ……あかね……?」
心当たりがないのか首を傾げる真沙哉さん。
「シノギを稼ぐため、手当たり次第拉致監禁し、シャブ漬けにし、違法性風俗で無理矢理働かせた大勢の犠牲者の一人だ」
柚原さんが銃を構え僕の前にすっと現れた。
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