single tear drop

ななもりあや

文字の大きさ
上 下
300 / 796
波紋

波紋

しおりを挟む
「ごめんね未知。もっと早く話すべきだったのに、なかなか言い出せなくてごめんね」

いちいち謝る必要なんてないのに。
僕だって実の兄から無理矢理関係を強いられたこと、誰にも言えなかったもの。

「二日間監禁され、遥琉と橘が、彼のお父さんを連れてきてくれて、助けてくれた。そのあとは家に帰らず……今まで実子として育ててくれた養父母を巻き込むわけにもいかなくて、遥琉と橘が同棲していたアパートに押し掛けて一緒に暮らし始めたんだ。昇龍会や龍一家は、兄より人望があり、幹部から部屋住みの組員までみんなに兄貴と慕われている遥琉のほうが組長の器に相応しいと跡目に決め、悪い噂がたえなかった兄を追放したんだ」

だから恨みを持ってるって。このことだったんだ。

「兄は大上の手を借りて、腹心と共にひそかに日本を脱出しマカオに渡った。復讐する機会を虎視眈々と狙っていたのかも知れない」

『心さん』

メモ帳にペンを走らせた。

「ん?何?」

どう聞いていいか分からず戸惑っていると、

「このことは裕貴も知ってる。だから、大丈夫だよ。僕にはみんながいたから・・・裕貴に遥琉に千里に柚原に弓削に根岸に・・・あと、橘と父さん……みんな側にいて支えてくれたから。だから、乗り越えられた」

心さんがメモに『義姉あねになってくれてありがとう』と書いてくれた。

驚いて顔を見ると、大きく頷いてくれた。

「柚原の話しは本人に直接聞いた方がいい。未知、僕から絶対に離れないで」

すっと立ち上がり裸足のまま庭に下りると僕の前に立ち両手を大きく広げた。

警護にあたっていた若い衆が異変に気付き、心さんの回りに駆け付けてきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

六日の菖蒲

あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。 落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。 ▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。 ▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず) ▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。 ▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。 ▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。 ▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。 新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。 年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。 *現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。 *初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

処理中です...