single tear drop

ななもりあや

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波紋

波紋

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「ごめんね未知。もっと早く話すべきだったのに、なかなか言い出せなくてごめんね」

いちいち謝る必要なんてないのに。
僕だって実の兄から無理矢理関係を強いられたこと、誰にも言えなかったもの。

「二日間監禁され、遥琉と橘が、彼のお父さんを連れてきてくれて、助けてくれた。そのあとは家に帰らず……今まで実子として育ててくれた養父母を巻き込むわけにもいかなくて、遥琉と橘が同棲していたアパートに押し掛けて一緒に暮らし始めたんだ。昇龍会や龍一家は、兄より人望があり、幹部から部屋住みの組員までみんなに兄貴と慕われている遥琉のほうが組長の器に相応しいと跡目に決め、悪い噂がたえなかった兄を追放したんだ」

だから恨みを持ってるって。このことだったんだ。

「兄は大上の手を借りて、腹心と共にひそかに日本を脱出しマカオに渡った。復讐する機会を虎視眈々と狙っていたのかも知れない」

『心さん』

メモ帳にペンを走らせた。

「ん?何?」

どう聞いていいか分からず戸惑っていると、

「このことは裕貴も知ってる。だから、大丈夫だよ。僕にはみんながいたから・・・裕貴に遥琉に千里に柚原に弓削に根岸に・・・あと、橘と父さん……みんな側にいて支えてくれたから。だから、乗り越えられた」

心さんがメモに『義姉あねになってくれてありがとう』と書いてくれた。

驚いて顔を見ると、大きく頷いてくれた。

「柚原の話しは本人に直接聞いた方がいい。未知、僕から絶対に離れないで」

すっと立ち上がり裸足のまま庭に下りると僕の前に立ち両手を大きく広げた。

警護にあたっていた若い衆が異変に気付き、心さんの回りに駆け付けてきた。
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