single tear drop

ななもりあや

文字の大きさ
上 下
300 / 799
波紋

波紋

しおりを挟む
「ごめんね未知。もっと早く話すべきだったのに、なかなか言い出せなくてごめんね」

いちいち謝る必要なんてないのに。
僕だって実の兄から無理矢理関係を強いられたこと、誰にも言えなかったもの。

「二日間監禁され、遥琉と橘が、彼のお父さんを連れてきてくれて、助けてくれた。そのあとは家に帰らず……今まで実子として育ててくれた養父母を巻き込むわけにもいかなくて、遥琉と橘が同棲していたアパートに押し掛けて一緒に暮らし始めたんだ。昇龍会や龍一家は、兄より人望があり、幹部から部屋住みの組員までみんなに兄貴と慕われている遥琉のほうが組長の器に相応しいと跡目に決め、悪い噂がたえなかった兄を追放したんだ」

だから恨みを持ってるって。このことだったんだ。

「兄は大上の手を借りて、腹心と共にひそかに日本を脱出しマカオに渡った。復讐する機会を虎視眈々と狙っていたのかも知れない」

『心さん』

メモ帳にペンを走らせた。

「ん?何?」

どう聞いていいか分からず戸惑っていると、

「このことは裕貴も知ってる。だから、大丈夫だよ。僕にはみんながいたから・・・裕貴に遥琉に千里に柚原に弓削に根岸に・・・あと、橘と父さん……みんな側にいて支えてくれたから。だから、乗り越えられた」

心さんがメモに『義姉あねになってくれてありがとう』と書いてくれた。

驚いて顔を見ると、大きく頷いてくれた。

「柚原の話しは本人に直接聞いた方がいい。未知、僕から絶対に離れないで」

すっと立ち上がり裸足のまま庭に下りると僕の前に立ち両手を大きく広げた。

警護にあたっていた若い衆が異変に気付き、心さんの回りに駆け付けてきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

処理中です...