297 / 796
波紋
波紋
しおりを挟む
一方の縣一家は遼成さんが組長に就任した。雄々しいその姿はすでに組長の貫禄そのもので。
決して見惚れていた訳じゃないけれど、彼の目にはそう写ったみたいで。焼きもちを妬いて、なかなか機嫌が直らなくて大変だった。
そんな彼は、度会さんや幹部の皆さんから、跡目のフリじゃなくて、本当に跡目になり、組を継いでくれと頼まれてかなり悩んでいる。
柚原さんは、橘さんとの生活を優先したいと、俺は絶対に跡目にはならないと、先手必勝とばかりに宣言し、早々に断ったみたい。
弓削さんも、兄貴を差し置いて跡目になるのは筋が違うと、彼もまた断ったみたいで。だからさっきからため息ばかり吐いている。
「ねぇ遥琉、引き受けたら」
見かねた心さんが声を掛けた。
「僕はもう大丈夫だから。ね!?」
「大丈夫な訳ないだろ」
急に声を荒げる彼。
大好きなままたんとぱぱたんのお膝の上にちょこんと座り、お利口さんにして動画を見せて貰っていた一太と遥香がびっくりして思わず振り返った。
「ごめんな、大きい声を出して・・・」
慌てて子供たちに謝る彼。
それを見ていた柚原さんが、一太の髪を優しく撫でながら心さんに話し掛けた。
「なぁ心、心に受けたキズはそう簡単には癒えるものじゃない。未知を見れば分かるだろう。5年以上経過した今も兄の影に脅え苦しんでいる」
「柚原……」
驚いたように一瞬目を見張り、それから目蓋を閉じて唇をギュッと噛み締める心さん。
「俺も遥琉も腸が煮えくり返るくらいヤツが憎い。裕貴だって同じだろうよ。心、もう強がる必要はないんだ。千里に甘えるみたいに、遥琉や、未知にもっと甘えたらいい。だって家族だろう⁉」
「そうだよ心」
柚原さんと千里さんの言葉に心さんの目から一筋の涙が零れ落ちた。
決して見惚れていた訳じゃないけれど、彼の目にはそう写ったみたいで。焼きもちを妬いて、なかなか機嫌が直らなくて大変だった。
そんな彼は、度会さんや幹部の皆さんから、跡目のフリじゃなくて、本当に跡目になり、組を継いでくれと頼まれてかなり悩んでいる。
柚原さんは、橘さんとの生活を優先したいと、俺は絶対に跡目にはならないと、先手必勝とばかりに宣言し、早々に断ったみたい。
弓削さんも、兄貴を差し置いて跡目になるのは筋が違うと、彼もまた断ったみたいで。だからさっきからため息ばかり吐いている。
「ねぇ遥琉、引き受けたら」
見かねた心さんが声を掛けた。
「僕はもう大丈夫だから。ね!?」
「大丈夫な訳ないだろ」
急に声を荒げる彼。
大好きなままたんとぱぱたんのお膝の上にちょこんと座り、お利口さんにして動画を見せて貰っていた一太と遥香がびっくりして思わず振り返った。
「ごめんな、大きい声を出して・・・」
慌てて子供たちに謝る彼。
それを見ていた柚原さんが、一太の髪を優しく撫でながら心さんに話し掛けた。
「なぁ心、心に受けたキズはそう簡単には癒えるものじゃない。未知を見れば分かるだろう。5年以上経過した今も兄の影に脅え苦しんでいる」
「柚原……」
驚いたように一瞬目を見張り、それから目蓋を閉じて唇をギュッと噛み締める心さん。
「俺も遥琉も腸が煮えくり返るくらいヤツが憎い。裕貴だって同じだろうよ。心、もう強がる必要はないんだ。千里に甘えるみたいに、遥琉や、未知にもっと甘えたらいい。だって家族だろう⁉」
「そうだよ心」
柚原さんと千里さんの言葉に心さんの目から一筋の涙が零れ落ちた。
22
お気に入りに追加
528
あなたにおすすめの小説

目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。


お前が結婚した日、俺も結婚した。
jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。
新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。
年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。
*現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。
*初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。

代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。


林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる