single tear drop

ななもりあや

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波紋

波紋

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柚原さんが、いずれは分かる事だ。そう言って携帯の画面を見せてくれた。そこには大勢の舎弟に守られ車に乗り込む二人の男性が写っていた。一人は大上さんで、もう一人は初めて見る男性だった。
その男性は、隠し撮りされていることに気がついたのか、目を吊り上げてカメラを睨み付けていた。
年の頃、40代後半。
激しい憎しみを感じさせるような顔だった。
くっきりと刻まれた眉間の皺。前を見据えるギラギラした双眸。一言も喋るまいとしているかのように、固く引き結ばれた唇ーー凄みをきかせた表情には迫力があった。

それでも不思議と怖くなかったのは、おそらく目鼻立ちがお義父さんに似ていたからかも知れない。

「プロポーズしたときに、年の離れた兄がいると言ったのを覚えているか?」

消沈していた彼が重い口を開けた。

「3年も前だし、一度しか話さなかったら忘れるのも仕方ないか」

こんなにも苦し気な表情を見るのは初めてで。僕まで辛くなってきた。

「一太くん、ハルちゃんお散歩でもしてきましょうね」

状況を察した橘さんが気をきかせてくれて、一太と遥香の手をそっと握り、外へと連れ出してくれた。
「優璃、俺を置いていくな」柚原さんが慌てて3人のあとを追いかけていった。

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