single tear drop

ななもりあや

文字の大きさ
上 下
217 / 799
誰よりも愛しているから憎い

誰よりも愛しているから憎い

しおりを挟む
彼と橘さんが下の様子を見に行っている間、服を拾い集め急いで身に付けた。まだ彼の熱が肌に残っていた。

【遥琉さん、大丈夫かな?】

なかなか彼は戻って来なかった。時間が経過するのがこんなにも長いとは。彼と一緒にいるときは楽しくてあっという間に過ぎるのに。

誰かの視線を感じゾクっと鳥肌が立った。
それは氷のように冷たくて。計り知れない憎悪に満ち溢れていた。
部屋の中を何度見回しても僕以外誰もいない。でも、気配はする。僕以外の誰かがいるのは確かだった。
何気に窓に目を遣ると風もないのにカーテンが揺れていた。寝る前に施錠したはずなのに・・・やっぱり何かがおかしい。

警戒しながらベットから下り、ドアへ急いだ。廊下にさえ出れば、若い衆が警備のために控えているはず。

「ーー未知……」

ドアノブに手を置いたときだった。
聞き覚えのある声がすぐ後ろから聞こえてきた。
最初空耳だと思った。だって彼には転居先を一切伝えていないもの。
でも、調べようと思えば、彼のことだからどんな手段を使っても調べるはず。

「未知………」

今度ははっきりと聞こえた。その瞬間、ぞくぞくと背筋に悪寒が走り、全身が総毛立った。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

息の仕方を教えてよ。

15
BL
コポコポ、コポコポ。 海の中から空を見上げる。 ああ、やっと終わるんだと思っていた。 人間は酸素がないと生きていけないのに、どうしてか僕はこの海の中にいる方が苦しくない。 そうか、もしかしたら僕は人魚だったのかもしれない。 いや、人魚なんて大それたものではなくただの魚? そんなことを沈みながら考えていた。 そしてそのまま目を閉じる。 次に目が覚めた時、そこはふわふわのベッドの上だった。 話自体は書き終えています。 12日まで一日一話短いですが更新されます。 ぎゅっと詰め込んでしまったので駆け足です。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

幸せになりたかった話

幡谷ナツキ
BL
 このまま幸せでいたかった。  このまま幸せになりたかった。  このまま幸せにしたかった。  けれど、まあ、それと全部置いておいて。 「苦労もいつかは笑い話になるかもね」  そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

処理中です...