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逆恨み
逆恨み
しおりを挟む「まずは落ち着け。遥香を連れ去ったのは恐らく家政婦だ。居場所はだいたい検討がついている。今、裕貴と橘、あと福井が助けに向かってるから安心しろ」
笹原さんは表情一つ変えなかった。
なんでそこまで詳しいのか、一体彼は何者なんだろう?
「心、跡目としての姿をみんなに示せ」
笹原さんは心さんを呼び捨てにしていた。最初、コイツ誰?と警戒していた心さん。笹原さんの顔を二度三度見していた根岸さんが何かに気付いて慌てて何かを耳打ちした。そしたら心さんの表情が一変した。
「未知、詳しい説明はあとでするから。とにかく今は落ち着いて、裕貴からの連絡を待とう」
心さんが羽織りを拾ってくれて、手に握らせてくれた。
「彼は味方だから、安心して」
元気付けようとしてか、わざと明るく振る舞ってくれた。
ぶるぶると体の震えが止まらなくて。その場にへたりこんだ。
心さんは通報を受け駆けつけた警察の応対をそつなくこなし、根岸さんたちに屋敷内の警護を強化するよう指示した。
「裕貴がいなくてもやれば出来るじゃないか」
お義父さんの声が後ろからしてきて、慌てて振り返ると、前で腕を組み、心さんを見据えるお義父さんの姿があった。
「十年来住み込みで働いてくれた家政婦が高齢を理由に辞めてな。若いのに変わったんだが、一月前から、変なことばかり続いてな。ひそかに調べさせたら、手嶌組と関わりのある女だった。つまりスパイとして送り込まれたんだろう。だから、未知がここに来る前に辞めさせた」
お義父さんがごめんな、ここは安全だと言っておきながら、孫を危ない目に合わせてしまった。そう何度も謝っていた。
誰も悪くないし、誰のせいでもない。
だからもう謝らなくていいから。お義父さんや組のみなさんに良くしてもらってお礼を言わなきゃいけないの僕の方だし。
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