single tear drop

ななもりあや

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守り守られて生きていく

守り守られて生きていく

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「未知さんや、血の繋がりなんてそんなの関係ねぇよ。一太も、遥香もワシの孫だ」

以前お義父さんにそう言われた。後妻の連れ子でも、そんなのは関係ない。遥琉の長男として、卯月家の孫として堂々とみなに紹介すればいいんだって。

「ほら、二人とも」

一太も遥香もお義父さんに抱っこして貰いたくて、我先に小さい腕を懸命に伸ばしていた。パパの声なんか聞こえていない。

「しゃあないな」

嬉しさのあまり顔が緩みっぱなしになるお義父さん。彼がもう年なんだからと止めるのも聞かず、右腕で一太を、左腕で遥香を抱き上げた。二人ともじいじすごいと黄色い歓声を上げておおはしゃぎ。

「若い者には負けん」

ってお義父さん。意外と負けず嫌いなのかも。上機嫌で、意気揚々と母屋に向かった。




「相変わらず可愛げがないな、お前は」

「五月蝿い」

玄関先で心さんと裕貴さんが仲良く連れ立って出迎えてくれた。

心さんはいつものように仏頂面してて、目が合うなりいつものようにぷいっとそっぽを向かれた。

「たまにはちゃんと挨拶せんか」

お義父さんも呆れて苦笑いしていた。

「遥琉、未知や子供たちを身内の揉め事に巻き込んですまなかった」

裕貴さんが彼に深々と頭を下げた。

「てか、お前が昇龍会の跡目を大人しく継いでいれば、揉め事なんぞ起きなかったんじゃないか?」

「俺には跡目を継ぐだけの貫目がない。世間知らずのボンクラと揶揄されるだけだ」

裕貴さんの視線が、お義父さんの腕にしっかりと抱っこされている一太と遥香へと向けられた。

「本音を言うと、跡目より家庭を選んだお前をバカにしていた。どうせ、一年も経たないうちにこっちへ出戻ってくるって鷹を括っていた。今はお前が羨ましいよ」

目が合い一太がおじちゃん‼と裕貴さんに声を掛けた。

「だから、おじちゃんじゃなくて、裕お兄ちゃんだ。一太のパパと同い年なんだぞ」

「そうなの」

一太が目を丸くした。


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