single tear drop

ななもりあや

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「どうした未知?」

いつも通り出勤したけど、何も手に付かなくて。テーブルを拭きながら、ぼんやりと外の景色を眺めていたら、茨木さんに声を掛けられた。

「何かあったのか?」

心配してくれてありがとう。
チクりと刺さる橘さんの視線に、゛うん゛じゃなく、゛何でもないです゛そう笑顔で答えた。

僕が世間知らずの子供だから。
だから、簡単に騙されたの。
大人はみんないい人ばかりとは限らない。颯人みたく未知を騙し、利用する輩がまたいつ現れるかも知れないから、気を付けろ。
颯人さんの一件で、あれほど忠告されたのに。
ごめんなさい・・・茨木さん・・・

まともに顔を見れなくて、視線を逸らすと、悲しくもないのに涙が一筋頬を伝った。

「そうか・・・」

親に見離された僕の、親代わりになってくれた茨木さん。
偏見を一切持たず、優しくしてくれて、親身に接してくれる。

だから、手にとるように分かるんだと思う。僕が考えていることくらい簡単に。

「何があっても、未知の味方だから」

ポンポンと軽く肩を叩かれた。

その何気ない一言が嬉しくて。
堰を切ったかのように涙が溢れた。

泣いている場合じゃない。手の甲で涙をごしごしと拭った。一太のためにも、僕がしっかりしなきゃ。強くならないと。

その時、エプロンのポケットに入れていた携帯がブルブルと振動した。


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