single tear drop

ななもりあや

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新しい出会い

新しい出会い

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「言われなくても分かるよ。そういえば未知、明後日休みだろ?一太と3人で出掛けないか?」

颯人さんが何のお仕事をしているか茨木さんでさえよく分からないみたい。以前貰った名刺には、地元でも名の知れたハウスメーカーの社名が書いてあった。彼は僕より一回り年上。

「決まり・・・でいいよね?」

答えないでいたら、熱っぽい眼差しを真っ直ぐに向けられてしまい、断れない状況に追い込まれた。

仕方なくこくりと小さく頷くと、彼の顔がたちまち綻んだ。

「いやぁ~~二人ともアツアツで羨ましい」

中澤さんには冷やかされたけど、茨木さんは終始下を向いて、颯人さんと一切目を合わせる事なく、黙々と洗い物をしていた。


「仕事の途中で寄っただけだから」

颯人さんは用件だけ済ませると、一太の頭を撫でてくれて、そそくさと帰っていった。彼もまた一度も茨木さんと目を合わせる事はなかった。

「未知ちゃん、颯人には気を付けろよ」

彼を見送ったあと、茨木さんがふとそんな事を口にした。

「身内を悪くは言いたくないんだが、高校卒業と同時に家を出て、今の今まで数えるくらいしか実家に帰ってきたことがないあいつが、しょっちゅう顔を出すようになったのには、何か裏があるかもしれない。実の母親の葬儀にも颯人は来なかった」

茨木さんは、コーヒーを淹れながら一太に目を遣った。

「実の親でさえ平気で自分の子を殺す時代だ。惨たらしい子供の虐待死のニュースもあとをたたない。一太を守れるのは未知ちゃんしかいないんだ。付き合う前に、そこをよくよく考えるんだよ」

彼の言うことはもっともだ。
一太を守れるのは母親であり、父親でもある僕しかいないもの。





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