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第五章 激突!園谷家vsカルナーランカ
前世の記憶・恵さん大人気
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友徳たちはジョンと共に学校に残り、避難民を守ることが決まった。カルナーランカ軍は園谷を襲撃し、首謀者であろう舞を排除することを決めた。
すでに村の中央の橋でカルナーランカ軍と園谷家の民兵、シャドウが衝突しており、絶え間なく銃声が響いていた。
シャドウの学校に対する攻撃は、カルナーランカが攻勢に出て学校から姿を消したこともあって、ほとんど起きなくなっていた。そしてアウンが作り出してエーテリアス・トークンと呼ばれる通力によって作り出された光り輝く兵士たち学校の要所、要所を防御することであの鈴の音がしてシャドウが覚醒してもすぐさま対応できるのだった。
子供達の役目はなくなったものの、もしもの時のため、誰も使っていない図書室で待機していた。
友徳は久しぶりにノートパソコンを開いてネットサーフィンをしていた。相変わらず今の日本の情勢ははちゃめちゃで理解し難い。
ふとメールを確認すると小学生Xからのメールが届いていた。
——お久しぶりです。元気ですか?突然友徳くんがいなくなって寂しいです。もう一度会いたい!
友徳は真樹に対しては悪く思うところはなかった。それでも返信する気にはなれない。彼はパソコンをそっと閉じた。
カルナーランカが園谷家の屋敷を陥落させたという一報が届いたのは、この日の夕方だった。友徳は両親や友達たちと顔を目配せしたけれども、喜びを顔に浮かべる人を見つけることができなかった。
ジョンの言うには、カルナーランカは自分たちの世界で吸血鬼と対立しており、その吸血鬼たちの勢力は今、弥勒救世軍と同盟しているとのことだった。この村で争いが終わるのはいつになるかわからない。
友徳は避難してから恒例行事になっている親子の団子で眠りについた。
「ねぇ、友徳!」
聞き覚えのある声で友徳は目を覚ました。月光が差し込む薄暗がりの中、背丈の低い何か友徳を覗き込んでいる。
「久しぶり!」
「真樹?」
「うん!」
真樹は今ではもはや懐かしい手の温もりで友徳の手のひらを掴み、すぐにでも引っ張り出しそうな勢い。流石の友徳も睡眠特権を行使して、木の根っこのように抵抗する。
「ねぇ、ほら重要な話だから!」
「本当に?」
眠気で重たい頭を制御しながら友徳は真樹の優しい引っ張る力に身を委ねた。途中、何度もふらついたが階段を登っているのを見ると今は三階に向かっていることがわかる。
真樹に連れられて彼は使ってない教室に入った。
突然両頬を往復するヒリリとする衝撃で一気に友徳は目を覚ました。
「痛い!何すんだよ!」
「すごい、重要なことを教えにきたの!はい、これ」と真樹は暗がりで影しか見えない手をこちらに押さえつけながら言う。
その手にはエナジードリンクがつかまれていることに、真樹から距離をとって背を横に反らし、月光のあたり加減を調整した友徳は気づいた。
「眠いなら早く飲め!」
友徳は渋々缶を開けて飲み始めた。それでも全身に多重的に詰まっている眠気の質量を持った何かは身体からなかなか離れていかない。
暗闇の中で腕組みをしているらしい真樹は「早く、早くー」と急かしている。
「もう頭スッキリしてきたよ」と友徳。
「オッケー、オケケ?」
「おう」
「じゃあ手短に話すね。僕たちの園谷家はまだ終わったわけじゃないんだ。今、お姉さんは昔廃村になった西森村に退却しててね。そこにはお姉さんが管理している洞窟があるんだけど、そこでシャドウと民兵を補充してこの村に反撃しようとしているんだ。ちなみに友梨お姉ちゃんもあっち側だよ。だから、それを伝えたくてね」
「なんで俺を起こして言うんだよ……」
「だってこっちの人、知らんし」
友徳は心が発生する身体の場所全てに、重くはないが不快感を催す土嚢を積み込まれたような感覚を感じながら真樹の手を引っ張って職員室に向かった。途中、転びそうになったがなんとか踏ん張り到着する。職員室ではジョンがまだ起きていた。
真樹は自己紹介してからジョンに色々と話した。友徳は真樹が園谷家の子であると証言。
ジョンは横にいたカルナーランカの兵士に耳打ちをし、その兵士が出ていってしばらくすると、勲章をいっぱい下げた偉そうな人が職員室を訪れた。ジョンにもう寝ていいよと言われた友徳はふらつきながら教室を目指した。
なぜか真樹はついてきて、友徳親子の団子にくっついて寝た。
朝、友徳が歯を磨くにしろ顔を洗うにしろ真樹は後ろをついてきた。なぜか彼は自分の歯磨きを用意していて、踊り場では並んで歯を磨く事になった。
「そういえばさ、舞に夢見について教えられたんだけど……真樹後で詳しく教えてくれない?」
「あ!言うの忘れてたね。それがすごく重要なんだよ」
歯を磨き終わり、教室で親子、避難民と一緒にじゃがいも、そしてカルナーランカから配給された果物と野菜の乾物を齧った後、友徳は今度は逆に真樹の手を引っ張って図書館に向かった。
広々とした図書室で太々しく真ん中のテーブルの椅子を荒々しく引き出して座り、占領者のように友徳たちは仰け反って腕を組んだ。
「教えてくれぃ」
「うんわかった!友徳ってさ、夢で緑の岡や平原の夢見たことあるでしょ?」
「えっと……あ!うん。どうして知ってるの」
「それってね、僕も見るんだけど前世の夢なんだよ。ちなみに君の隣にいるのは僕ね!友徳も気づいてたでしょ!」
「え!そうなの!てか前世の夢だったんか、あれ!」
「うん。てか僕たちは前世で友達だったんやで」
「なんて名前だった?」
「えっとね、忘れた。でもひとつだけ覚えていることがあるよ」
「おーい、まじかよ。で、何」
「その当時、僕たちは樹神だったんだ。それで当時の友徳がさ、修行したいとか言って人間界に降りるとか言い始めたんだよね。僕は止めたんだけど……そうして生まれ変わったんだけどね、3歳くらいで交通事故で死んじゃったんだよ」
友徳は思い出し始めた。あの夢のことを。夢では友徳が見たこともない特撮番組を見て、手を叩いて喜んでいる情景とそれを慈しみの目で眺める母の情景が映し出されていたのだった。
そして母の悲しげな表情をまた、夢にはよく出てくるのだった。
「それで友徳がさ、また僕の世界に帰ってきたんだよ。僕は嬉しかったね!それで一緒に遊びまくったんだけど、でもさぁ君は前世のお母さんが忘れられなくてね、空に彼女の現在をテレビみたいに映し出してずっと眺めていたんだよ」
友徳はその光景をまじまじと思い出した。悲嘆に暮れる家族の姿を——-それを見て今度こそ!今度こそ!今行くからね!と決意した思いやりの日々を。
「それで、友徳くんがまたいっちゃったからさ、僕も行こうと決めたんだよ!だって遊び相手いなしね。それでも人間になるのは嫌だったけどね」
「真樹」
「何」
「思い出させてくれてありがとう」
友徳は今まで見ていた夢の意味が理解できた。あの時、僕は家族をもう一度喜ばすための準備をしていたんだ。
爆発的な思いやりと共に遠く離れた母の下を目指していく感覚を思い出して今、彼はそれを噛み締めた。
超新星が爆発してもこの世に放つことができないような笑みを浮かべた友徳はしばし夢の記憶を心に巡らせてさらに全身を幸福で満たした。
それから友徳は真樹と一緒にボール遊びをした。軍隊がほとんど撤退した校庭では、子どもたちや親子が校庭で運動不足解消のために彼らと同じく遊んでいる。
途中、正道、飛鳥がやってくると友徳は真樹に彼らを紹介してみんなでボール遊びを再開させた。全員が通力や特殊能力で強化された技で相手にギリギリ取れそうなところを突いて投げ合い、甲高い声をあげながらいつまでも遊んでいった。
その日のサプライズはそれだけではなかった。多目的室で朝にやるのを忘れていた瞑想を子供達いつもの五人と興味を持ってやり方を聞いてきた真樹とやった後、冷房もないにも関わらず人がいないことで開放感のある白いフローリングで男四人が横になっている時、あの人が現れたのだった。
「友徳くんたち、久しぶりだね」と恵はいつもの不機嫌ぽいパーツの線が女性にしてはくっきりした顔に隠しきれない笑みを表しながら挨拶した。
「あ!恵さんだ!」という飛鳥の声でみんなは彼女を取り囲んだ。
「ちょっと、暑いって!そんなに近づかないで!」
そうはいっても本気で嫌がっているふうでない以上、友徳たちは恵を囲むのをやめなかったし、矢継ぎ早に挨拶、質問を交わした。なぜか真樹も恵を囲む輪にいた。
「恵さん、久しぶり!何しにきたの!」
「本当、なんできたの!」
「あ!今日さ、じゃがいも余ってたから給食室行けば食えるよ!」
最初は、子供達の熱気と愛情表現に圧倒されていた恵であったが、手のひらをうちわにして優しく返答していた。
「ウチはね、アシャンティ村から特別にこの村の小学校の警備を担当しにきたのよ。前、みんなが私たちを助けてくれたでしょ?そのお礼に何かしなくてはってなってね、それで私が立候補したのよ」
「へぇ、それで恵さんか……あれ?恵さんてこの前の戦いで活躍してましたっけ?」と飛鳥は悪意ない笑みでいうと恵は「むっかー。私は捕まってて活躍できなかっただけですー」
その話題は危険を孕んでいると友徳は理解していたので話題を変えた。今、アシャンティ村は香織村長とニコライによって運営されているという。
一度陥落した痛い経験から、軍人だけは他所の村や街から人格の信頼できる男性を中心に集めているが、他の分野は女性だけで頑張ってるとのこと。ジャガイモやさつまいもはまだ大量にあるから甲羅村のみんなも乞うご期待とのこと。
「うちさ、前よりも鍛えて強くなったからね。ほら!見て!」と恵は腕を曲げて筋肉の山を作り出した。
「すげー。硬い!」と飛鳥はコブを触りながらいった。
「でしょ、でしょー」
サプライズ続きで会ったその次の日の朝、友徳はジョンに職員室に呼ばれた。戸を開いて中に入るとジョンの他にシリマヴォ、智咲、恵、友徳がシャドウに襲われていた時、彼の窮地を救ったカルナーランカの兵士、そして真樹が集められていた。
友徳がその輪に加わるとジョンは、回転椅子から立ち上がり、一同の顔を見回してから口を開いた。
「では、みなさん。今日はある作戦を実行するために集まってもらいました。今、カルナーランカに入ってきている情報を統合してみると、園谷家は西森村で再起を測ろうとしているようです。多くのシャドウをもう一度作り出して補充し、ハーフ・ペータの軍勢、そしてエーテリアスの指揮官で再び甲羅村に戻ろうとしている。それを阻止しなければならない。しかし今、カルナーランカの本体は弥勒救世軍と相対しており、ここを離れられない。そこで私はあなたたちに協力を要請したい」
「OK!いいよ!」と真樹。
「他の人は?」
「いいよ。やる」とカルナーランカの兵士はまず答えた。それに続いて集まった人々は賛同した。
「今の園谷家は弱体化している。彼らに味方した民兵隊は敗走するか、カルナーランカに降伏した。シャドウも甲羅村でほとんど撃破した。しかしエーテリアスの精鋭部隊が残っている。命にかかわるかもしれない。それでも戦ってくれますか」
全員賛同した。友徳は賛同したが、後で父母に相談して反対されたら撤回しようと思っていた。
「それともう一つ一番重要なことがある。私たちの目的は園谷家との講和です。これ以上村を襲わせないことです。相手を殲滅することではありません」
一同は頷いた。
「それでは二日後に西森村に向けて出発する。なるべく早く賛否は決めておいてくれ」
一同は解散すると流れで友徳の横に恵と真樹、智咲がついた。
「友徳は一緒に行ってくれるよね?当然だよね、最適合者だから」
「でもメモリはもう持ってないよ」
「それでも最適合者は強いよ」
「智咲はどうするの?」と友徳。
「私はお母さんたちと相談する。でも行きたいな。早く根を断たないとまた戦争になる」
「てか真樹は自分の家族だけど、いいの?」
「それはねぇ……」と真樹は言い淀んでから無表情の中で何かの感情を走らせているように静かに前を見据えながら「お姉さんたちを止めたいって思うようになった。友徳やいろんな人たちにあんなことをするような家族は一旦痛い目見た方がいいよ」
その日の夕方、友徳は家族にそのことを話した。父母は真剣に聞き入ってから静かに首を縦に振った。
「別に人を殺したりいじめるわけじゃないからな、頑張りなさい!お前が強いことはよくわかってるよ」
「友徳!シャドウにされた可哀想な人たちを助けに行きなさい!」
「うん!頑張ってくる!」
友徳はこの日はいつもより軽快な身体ので親子の団子を作り、夢の世界へ旅立った。
すでに村の中央の橋でカルナーランカ軍と園谷家の民兵、シャドウが衝突しており、絶え間なく銃声が響いていた。
シャドウの学校に対する攻撃は、カルナーランカが攻勢に出て学校から姿を消したこともあって、ほとんど起きなくなっていた。そしてアウンが作り出してエーテリアス・トークンと呼ばれる通力によって作り出された光り輝く兵士たち学校の要所、要所を防御することであの鈴の音がしてシャドウが覚醒してもすぐさま対応できるのだった。
子供達の役目はなくなったものの、もしもの時のため、誰も使っていない図書室で待機していた。
友徳は久しぶりにノートパソコンを開いてネットサーフィンをしていた。相変わらず今の日本の情勢ははちゃめちゃで理解し難い。
ふとメールを確認すると小学生Xからのメールが届いていた。
——お久しぶりです。元気ですか?突然友徳くんがいなくなって寂しいです。もう一度会いたい!
友徳は真樹に対しては悪く思うところはなかった。それでも返信する気にはなれない。彼はパソコンをそっと閉じた。
カルナーランカが園谷家の屋敷を陥落させたという一報が届いたのは、この日の夕方だった。友徳は両親や友達たちと顔を目配せしたけれども、喜びを顔に浮かべる人を見つけることができなかった。
ジョンの言うには、カルナーランカは自分たちの世界で吸血鬼と対立しており、その吸血鬼たちの勢力は今、弥勒救世軍と同盟しているとのことだった。この村で争いが終わるのはいつになるかわからない。
友徳は避難してから恒例行事になっている親子の団子で眠りについた。
「ねぇ、友徳!」
聞き覚えのある声で友徳は目を覚ました。月光が差し込む薄暗がりの中、背丈の低い何か友徳を覗き込んでいる。
「久しぶり!」
「真樹?」
「うん!」
真樹は今ではもはや懐かしい手の温もりで友徳の手のひらを掴み、すぐにでも引っ張り出しそうな勢い。流石の友徳も睡眠特権を行使して、木の根っこのように抵抗する。
「ねぇ、ほら重要な話だから!」
「本当に?」
眠気で重たい頭を制御しながら友徳は真樹の優しい引っ張る力に身を委ねた。途中、何度もふらついたが階段を登っているのを見ると今は三階に向かっていることがわかる。
真樹に連れられて彼は使ってない教室に入った。
突然両頬を往復するヒリリとする衝撃で一気に友徳は目を覚ました。
「痛い!何すんだよ!」
「すごい、重要なことを教えにきたの!はい、これ」と真樹は暗がりで影しか見えない手をこちらに押さえつけながら言う。
その手にはエナジードリンクがつかまれていることに、真樹から距離をとって背を横に反らし、月光のあたり加減を調整した友徳は気づいた。
「眠いなら早く飲め!」
友徳は渋々缶を開けて飲み始めた。それでも全身に多重的に詰まっている眠気の質量を持った何かは身体からなかなか離れていかない。
暗闇の中で腕組みをしているらしい真樹は「早く、早くー」と急かしている。
「もう頭スッキリしてきたよ」と友徳。
「オッケー、オケケ?」
「おう」
「じゃあ手短に話すね。僕たちの園谷家はまだ終わったわけじゃないんだ。今、お姉さんは昔廃村になった西森村に退却しててね。そこにはお姉さんが管理している洞窟があるんだけど、そこでシャドウと民兵を補充してこの村に反撃しようとしているんだ。ちなみに友梨お姉ちゃんもあっち側だよ。だから、それを伝えたくてね」
「なんで俺を起こして言うんだよ……」
「だってこっちの人、知らんし」
友徳は心が発生する身体の場所全てに、重くはないが不快感を催す土嚢を積み込まれたような感覚を感じながら真樹の手を引っ張って職員室に向かった。途中、転びそうになったがなんとか踏ん張り到着する。職員室ではジョンがまだ起きていた。
真樹は自己紹介してからジョンに色々と話した。友徳は真樹が園谷家の子であると証言。
ジョンは横にいたカルナーランカの兵士に耳打ちをし、その兵士が出ていってしばらくすると、勲章をいっぱい下げた偉そうな人が職員室を訪れた。ジョンにもう寝ていいよと言われた友徳はふらつきながら教室を目指した。
なぜか真樹はついてきて、友徳親子の団子にくっついて寝た。
朝、友徳が歯を磨くにしろ顔を洗うにしろ真樹は後ろをついてきた。なぜか彼は自分の歯磨きを用意していて、踊り場では並んで歯を磨く事になった。
「そういえばさ、舞に夢見について教えられたんだけど……真樹後で詳しく教えてくれない?」
「あ!言うの忘れてたね。それがすごく重要なんだよ」
歯を磨き終わり、教室で親子、避難民と一緒にじゃがいも、そしてカルナーランカから配給された果物と野菜の乾物を齧った後、友徳は今度は逆に真樹の手を引っ張って図書館に向かった。
広々とした図書室で太々しく真ん中のテーブルの椅子を荒々しく引き出して座り、占領者のように友徳たちは仰け反って腕を組んだ。
「教えてくれぃ」
「うんわかった!友徳ってさ、夢で緑の岡や平原の夢見たことあるでしょ?」
「えっと……あ!うん。どうして知ってるの」
「それってね、僕も見るんだけど前世の夢なんだよ。ちなみに君の隣にいるのは僕ね!友徳も気づいてたでしょ!」
「え!そうなの!てか前世の夢だったんか、あれ!」
「うん。てか僕たちは前世で友達だったんやで」
「なんて名前だった?」
「えっとね、忘れた。でもひとつだけ覚えていることがあるよ」
「おーい、まじかよ。で、何」
「その当時、僕たちは樹神だったんだ。それで当時の友徳がさ、修行したいとか言って人間界に降りるとか言い始めたんだよね。僕は止めたんだけど……そうして生まれ変わったんだけどね、3歳くらいで交通事故で死んじゃったんだよ」
友徳は思い出し始めた。あの夢のことを。夢では友徳が見たこともない特撮番組を見て、手を叩いて喜んでいる情景とそれを慈しみの目で眺める母の情景が映し出されていたのだった。
そして母の悲しげな表情をまた、夢にはよく出てくるのだった。
「それで友徳がさ、また僕の世界に帰ってきたんだよ。僕は嬉しかったね!それで一緒に遊びまくったんだけど、でもさぁ君は前世のお母さんが忘れられなくてね、空に彼女の現在をテレビみたいに映し出してずっと眺めていたんだよ」
友徳はその光景をまじまじと思い出した。悲嘆に暮れる家族の姿を——-それを見て今度こそ!今度こそ!今行くからね!と決意した思いやりの日々を。
「それで、友徳くんがまたいっちゃったからさ、僕も行こうと決めたんだよ!だって遊び相手いなしね。それでも人間になるのは嫌だったけどね」
「真樹」
「何」
「思い出させてくれてありがとう」
友徳は今まで見ていた夢の意味が理解できた。あの時、僕は家族をもう一度喜ばすための準備をしていたんだ。
爆発的な思いやりと共に遠く離れた母の下を目指していく感覚を思い出して今、彼はそれを噛み締めた。
超新星が爆発してもこの世に放つことができないような笑みを浮かべた友徳はしばし夢の記憶を心に巡らせてさらに全身を幸福で満たした。
それから友徳は真樹と一緒にボール遊びをした。軍隊がほとんど撤退した校庭では、子どもたちや親子が校庭で運動不足解消のために彼らと同じく遊んでいる。
途中、正道、飛鳥がやってくると友徳は真樹に彼らを紹介してみんなでボール遊びを再開させた。全員が通力や特殊能力で強化された技で相手にギリギリ取れそうなところを突いて投げ合い、甲高い声をあげながらいつまでも遊んでいった。
その日のサプライズはそれだけではなかった。多目的室で朝にやるのを忘れていた瞑想を子供達いつもの五人と興味を持ってやり方を聞いてきた真樹とやった後、冷房もないにも関わらず人がいないことで開放感のある白いフローリングで男四人が横になっている時、あの人が現れたのだった。
「友徳くんたち、久しぶりだね」と恵はいつもの不機嫌ぽいパーツの線が女性にしてはくっきりした顔に隠しきれない笑みを表しながら挨拶した。
「あ!恵さんだ!」という飛鳥の声でみんなは彼女を取り囲んだ。
「ちょっと、暑いって!そんなに近づかないで!」
そうはいっても本気で嫌がっているふうでない以上、友徳たちは恵を囲むのをやめなかったし、矢継ぎ早に挨拶、質問を交わした。なぜか真樹も恵を囲む輪にいた。
「恵さん、久しぶり!何しにきたの!」
「本当、なんできたの!」
「あ!今日さ、じゃがいも余ってたから給食室行けば食えるよ!」
最初は、子供達の熱気と愛情表現に圧倒されていた恵であったが、手のひらをうちわにして優しく返答していた。
「ウチはね、アシャンティ村から特別にこの村の小学校の警備を担当しにきたのよ。前、みんなが私たちを助けてくれたでしょ?そのお礼に何かしなくてはってなってね、それで私が立候補したのよ」
「へぇ、それで恵さんか……あれ?恵さんてこの前の戦いで活躍してましたっけ?」と飛鳥は悪意ない笑みでいうと恵は「むっかー。私は捕まってて活躍できなかっただけですー」
その話題は危険を孕んでいると友徳は理解していたので話題を変えた。今、アシャンティ村は香織村長とニコライによって運営されているという。
一度陥落した痛い経験から、軍人だけは他所の村や街から人格の信頼できる男性を中心に集めているが、他の分野は女性だけで頑張ってるとのこと。ジャガイモやさつまいもはまだ大量にあるから甲羅村のみんなも乞うご期待とのこと。
「うちさ、前よりも鍛えて強くなったからね。ほら!見て!」と恵は腕を曲げて筋肉の山を作り出した。
「すげー。硬い!」と飛鳥はコブを触りながらいった。
「でしょ、でしょー」
サプライズ続きで会ったその次の日の朝、友徳はジョンに職員室に呼ばれた。戸を開いて中に入るとジョンの他にシリマヴォ、智咲、恵、友徳がシャドウに襲われていた時、彼の窮地を救ったカルナーランカの兵士、そして真樹が集められていた。
友徳がその輪に加わるとジョンは、回転椅子から立ち上がり、一同の顔を見回してから口を開いた。
「では、みなさん。今日はある作戦を実行するために集まってもらいました。今、カルナーランカに入ってきている情報を統合してみると、園谷家は西森村で再起を測ろうとしているようです。多くのシャドウをもう一度作り出して補充し、ハーフ・ペータの軍勢、そしてエーテリアスの指揮官で再び甲羅村に戻ろうとしている。それを阻止しなければならない。しかし今、カルナーランカの本体は弥勒救世軍と相対しており、ここを離れられない。そこで私はあなたたちに協力を要請したい」
「OK!いいよ!」と真樹。
「他の人は?」
「いいよ。やる」とカルナーランカの兵士はまず答えた。それに続いて集まった人々は賛同した。
「今の園谷家は弱体化している。彼らに味方した民兵隊は敗走するか、カルナーランカに降伏した。シャドウも甲羅村でほとんど撃破した。しかしエーテリアスの精鋭部隊が残っている。命にかかわるかもしれない。それでも戦ってくれますか」
全員賛同した。友徳は賛同したが、後で父母に相談して反対されたら撤回しようと思っていた。
「それともう一つ一番重要なことがある。私たちの目的は園谷家との講和です。これ以上村を襲わせないことです。相手を殲滅することではありません」
一同は頷いた。
「それでは二日後に西森村に向けて出発する。なるべく早く賛否は決めておいてくれ」
一同は解散すると流れで友徳の横に恵と真樹、智咲がついた。
「友徳は一緒に行ってくれるよね?当然だよね、最適合者だから」
「でもメモリはもう持ってないよ」
「それでも最適合者は強いよ」
「智咲はどうするの?」と友徳。
「私はお母さんたちと相談する。でも行きたいな。早く根を断たないとまた戦争になる」
「てか真樹は自分の家族だけど、いいの?」
「それはねぇ……」と真樹は言い淀んでから無表情の中で何かの感情を走らせているように静かに前を見据えながら「お姉さんたちを止めたいって思うようになった。友徳やいろんな人たちにあんなことをするような家族は一旦痛い目見た方がいいよ」
その日の夕方、友徳は家族にそのことを話した。父母は真剣に聞き入ってから静かに首を縦に振った。
「別に人を殺したりいじめるわけじゃないからな、頑張りなさい!お前が強いことはよくわかってるよ」
「友徳!シャドウにされた可哀想な人たちを助けに行きなさい!」
「うん!頑張ってくる!」
友徳はこの日はいつもより軽快な身体ので親子の団子を作り、夢の世界へ旅立った。
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https://note.com/adult_mukaiyuki/m/m3c9da6af445b
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