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第三章 美女だらけのアシャンティ村

アシャンティ村の戦い

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正道が作戦をぶち上げると、それを香織たちが村の女性たちに伝えて今では、健康的な若い女性たちは、村長邸に乗り込む気満々だった。友徳たちは明日の朝の乗り込みに備えて最後の確認に入っていた。


——まずは敵の戦力。松永たち四人とゴーク。ゴークは無数にいるが、恵や聡美を倒すほどなのでこの作戦に参加する女性たちは棒で武装必須。

ただ、ゴークは正体はわからないものの、生き物であることは変わらないので、必要以上に痛めつけないこと。日本刀で武装した正道、香織を先頭に愛華と飛鳥が村の女性たちが村長邸に侵入してまずは女性たちを解放させること。

松永たちと戦闘にならないことが望ましい。戦闘の経験がある麗子は最優先に救出。ついで恵、聡美。友徳と智咲は蔵屋敷を守り、奇襲に備える。

「ざっとこんなもんかな」と正道は小卓に並べられた村の地図に体重の乗った手のひらを乗せていった。

「あまりにも乱暴……というか直線的ね」と愛華。

「でも卓也と話したことあるけど……あいつらこっちのいうこと全然聞かない感じだよ」と友徳は小卓に前屈みになりながら正道をアシスト。

「それにね。村が占領された時も、奇襲だったんだよ。私たち、自分たちの力を発揮できなかったんだ。今度は相手が思い知る番だよ」と香織。

「うん。このままだと日本軍が来て、もうどうしようもなくなるし、戦うしかないよ!」と飛鳥。

その日、一同は友徳の部屋で雑魚寝した。いつもは布団を皺くちゃにしながら寝る友徳も正道も、布団の中に足も腕もすっぽり納めたお人形さんみたいな寝姿で時を過ごした。

早朝は、誰が合図するまでもなく友徳たちは一気に起きた。香織だけは先に起きていて、すでに四の方角から村長邸を目指す女性たちに武器の棒を配ったという。

ゴークが動き出さないことを見ても、松永たちが奇襲に気付いていないことは明らかだとも香織は付け加えた。五人の子供たちは一斉に黒い廊下を早走りで駆け抜けて、台所の洗面を譲りながら忙しなく横一列で歯を磨いた。

顔も洗った準備万端になった時、正道がもう一度簡潔に作戦を説明した。

友徳たちは他の部屋の子供達と女性たちを点呼して、屋敷の最も広い場所の真ん中に集合させた。そして蔵屋敷は香織たちが出撃する三和土以外、全てが戸締りされる。

「オッケ。頑張って正道」

「おう。お任せあれ」

「飛鳥くん、頑張ろうね」と愛華は隣の飛鳥を覗き込んでからいった。

「うん。愛華も気をつけるんだよ!」

朝の6時を告げるタイマーが鳴り響くと、日本刀の刀身の先を天に向けた香織と正道を先頭に、子供達と女性たちは村長邸を目指した。友徳は自室の窓から身を乗り出して、三方から棒で武装した女性たちゆっくりと邸宅に向かって進撃するのを見てとった。

友徳の視界に入るゴークたちはお地蔵さんの如く、進撃するのを彼女たちに目をくれずそこに佇んでいる。大きな西洋風の門は正道の怪力で一気に開かれた。

続々と兵士たちは流れ込む。友徳は乾いた口を湿らせるために舌をナメクジみたいに口内で回転させ、全身を揺する悪寒は大きな深呼吸で対抗する。

正道が邸宅に侵入して3分が経過してもまだ、香織の残したスマホには連絡がない。しばらくして邸宅から大きな女性の悲鳴が響き渡り、同時に村に点在するゴークたちが瞬きをする日本人形みたいに不敵な笑みをこぼした。

女性兵と捕らえられていたメイドたちが門から出ると蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い始める。女兵士はゴークと相対すると棒を構えるもの、反対方向に踵を返すもの、横を通り抜けようとして簡単に捕まり腰に担がれるものなどと各自必死だ。

武装していないメイドたちは逃げ遅れると、初心者のシュートがキーパーの正面に撃たれるかの如く、ゴークに通せんぼされ、たちまち捕まってしまう。友徳がメイドがゴークにお姫様抱っこされて再び村長邸に回収されるのを見たその瞬間、同時に此岸の雑草の叢が不自然に揺れたのを認めた。

友徳は気を取り戻した時、自身の体が襖を突き破ってそのまま廊下の壁にめり込んでいるのを知った。彼は紫の光球に撃ち抜かれたことを思い出す。

彼は智咲に引っ張られながらやっとのことで廊下の上に転がった。蔵屋敷は何かの力で貧乏ゆすりみたいにゆれている。

「窓から見たんだけど……裕太くんがこっちに来ているよ!」と智咲はいまだにぼんやりとしている友徳の肩をゆすっていった。

「やばい。一階見てくる」

友徳は廊下を辿々しい足取りで抜けて、徐々に回復してくると階段を一段飛ばしで降りていった。彼がちょうど三和土の近くまで寄った時、関のしてあった戸がバコーンという音を立てて吹き飛んだ。玄関の枠組みは今、あの実験器具と磁石の武装の裕太を写している。

「チース!可愛い子のゲッチュ!とクソガキぶっ殺しに来ましたぁー!!」と裕太は言い終えると機器を友徳に標準してニヤリ。

咄嗟の判断で友徳は横にローリングすると、立膝で上体を回復したと思ったと同時に自分の体が宙に浮いていることに気づいた。

「雑魚だな!よし!ハーフ・ペータども!卓也の命令はわかってるよな?やれ」

ゴークはズカズカと蔵屋敷の中に入り込んでいく。

「お前たち。まさか反乱を起こすなんて思っていなかったぜ?」

「くそっ!」

「いいこと教えといてやる。俊一は反乱軍に捕まったらしいぞ!ただ力也一人にお前らの軍勢は押し戻されているし、卓也はゴーク使いの達人だ。お前らには勝ち目がない!」

友徳は自分の身体を拘束する糊のように滑りのある謎の気体の回流を感覚の中で掴もうとしていたので、裕太に応答しなかった。

裕太が智則に機器を向けているうちに、蔵屋敷が保護していたもののうち、美女だけは次々とゴークに担がれて外に運ばれていった。悲鳴すら上げられないほど震える美女たちは、ウー、ウーと声にはならない声で唸り声をあげて、死後硬直のような眼差しを友徳に向けた。

「オッケー!オケケ!杏奈も回収!おい、杏奈ぁ?今までなんで隠れていたんだよぉ」と裕太は言いながらゴークに担がれて突き出された杏奈の尻を撫で回した。

「で、次はお前を殺さなきゃだね」

その時、裕太に向かってどこからか木魚が投げつけられた。裕太が咄嗟にたじろくと友徳の拘束が途切れた。

友徳が物が飛んできた方向を見ると智咲がまな板を掴んで頭の横に構えている。

再び機器を構え直した裕太を見た友徳は、素早く囲炉裏脇にステップした。光弾は廊下の奥に放たれて、壁を引き裂く音が轟いた。

逃げ場を失った友徳はこれしかない、と思い全身の皮膚に接触している空気に感覚を研ぎ澄ました。その空気の火の元素に彼はアクセスする。

再び裕太が構えた時、それが光弾の発射ではないことを悟った友徳は火の元素に変化の命令を下した。熱気に包まれると同時にトラクタービームが身体に直撃したことを彼は知る。

そしてビームによる空気の流れを掴み取り、一気にそれを火炎放射にして逆流させた。友徳の身体は炎に包まれ、目に見えないトラクタービームに沿って、炎は裕太の機器に直撃する。機器は一気に爆発四散した。

「よっしゃぁあ!!!」

火柱から飛び出した友徳が裕太の懐に潜り込み、腰を掴むと一気に投げ飛ばした。裕太は障子を突き破ってそのまま庭の農地に転がっていく。

彼は上体を起こすと背中の箱をその場に脱ぎ捨てて電磁ロッドに腕を伸ばした。すかさず友徳も刀を抜いて対抗する。すり足で彼は一気に間を詰めると、裕太はロッドを横に放り投げた。

「ごめん、降参、降参」

「ふぅ、オッケ……」と言い終えると同時に友徳は気を失った。

友徳が再び目を開いた時、彼は冷えピタをあちこちに貼られ、パンツいっちょにされながら濡れたバスタオルの上に置かれていた。

「お!友徳くん気づいたよ!」と友徳の朧げな視界の中で愛華が後ろを振り向いて叫んでいる。

「よっかったー」と今度は視界の中に愛美が潜り込む。

「あ、あれ?どうなったの?」と友徳はカサカサに乾いた喉を鳴らした。

「そんなことは今、後!」と腰を振って妙にウキウキしている香織は氷嚢を掴んで友徳の視界に入った。

香織が氷袋をどこかに置いてから、友徳の下半身に妙にヌメヌメした感覚が広がった。ん?と思ってようやく股間にパンツ越しに氷袋が乗せられてることを知って友徳は「キャー!え、ちょっと何?!」

その場にいた女たちは一気に大笑い。その中に恵の強情な声音も含まれている。

「智咲ちゃんに聞いたよ!あんたすごい機転であいつを倒したんだってね?それで気絶して熱測ったら39℃もあるから大急ぎで急冷したのよ!この!部分!は熱に弱いのよ!」と愛美が氷嚢をぴょんぴょん跳ねさせると、再び友徳はひえーと悲鳴をあげた。

「あんたたちぃー?私たちがこれまでに受けたセクハラを考えればこのくらい大したことじゃないんだからねぇー」と麗子の声がどこからか響いた。

「ちょっと先生!僕は何もしてないよぉ~」

「えー?うち、この子に何度も無理やりお姫様抱っこされたんですけど!どう思います?」と恵。

えー!えっち!友徳くんひどーい!という声が視界の外で響いてからまた笑い声が風船が割れたみたいに響いた。視界がぼやけた友徳は再び眠りについた。

正道の村長邸襲撃の成功は、友徳は夜のおかゆとサイダーの差し入れと同時に飛鳥から聞いた。正道と香織は日本刀の刃がついてない方で勇敢に戦い、愛華と飛鳥は卓也のU字の機器が、ゴークたちに呼びかける物質を放っていることに気づいて、水の通力でそれを撹乱してゴークの軍勢を一気に瓦解させたのだ。

特別少年隊は皆、捕縛されて、村長邸の地下牢に監禁されているという。友徳は飛鳥に握手の手を伸ばした。お互いニコニコしながら大きく手を振る。

「これからどうしよう……電話も甲羅村にはつながらないし、メールもアカウントにログインできないんだよねぇ」と友徳は喜びの波が二人の間で途切れることがないように声音に注意しながらいった。

「それは大丈夫!今日ね!理沙さんと仁美さんが甲羅村に二人で潜入したんだ!それでお急ぎで帰ってきてね。今度ニコライさんが援軍で来るって!」

「そっか!じゃあ安心だね!てか、麗子先生って大丈夫だった?」

「それがね……えっちなことはされたけど……裸にされてのしかかられるやつあるじゃん?ああいうことはされなかったって。でもひどいことはかなりされてたらしくて、最初蔵屋敷に来た時は正道に泣きついていたよ……」

「そうなんだ……」

「でも、正道すごいよ!麗子先生を見つけたら一気に抱っこして蔵屋敷まで連れ戻してまた、松永たちと戦ったんだ!ものすごい速さだったよ!」

友徳はこの深夜、正道の襲撃組の武勇伝を子守唄にした。

翌日、ニコライはスタヴローギンにまたがり、後ろに仁美を乗せて朝方にはすでに村に到着していた。彼は戦った勇敢な女性たちに順次、いつもの謹直顔に尊敬の笑みを含めているようで、握手していく。

イケおじのロシア人ということであり、戦っていない女性たちも群がっていき、彼は少しずつたじたじになっていった。子供達はそんな彼に蔵屋敷の庭で整列させられた。

ニコライは自分の軍服の襟から勲章を一つずつ外して、一人一人の手のひらにそれを包ませて、子どもたちに底意を示すようだった。友徳は、大きなニコライの手に包まれながら勲章を掴んだ時、鼻高々で、思いっきり胸を張った。

麗子をリーダーにした帰郷団が結成され、通力を持つ子供達は村から各々武器を渡された。麗子は松永たちから指輪を取り戻して実力を回復したのだった。

彼女は操炎は超一流なのだが、通力を扱う体力が人一倍弱く、大人になっても指輪が離せないという。一団は、通力を縦一列の体系で正道と麗子を先頭に、列の節々に通力を持つ子供を置いて出発した。

最後尾を務める友徳は、アシャンティ村の女性たちの黄色い声に一番包まれながら村を後にした。

道路側に太陽光線を透かして輝くブナの葉叢を見上げた時、友徳はこの原生林の緑がこの前通った時よりも一層に、黙々と緑を湛えているのを感じた。森の奥に入っていくたびに、燦々と輝く木漏れ日は影に塗り替えられ、黒々とした緑は濃くなっていく。

友徳は蝉の鳴き声に息継ぎみたいな休憩の間があるのを感じて、彼らを可愛く思う。凸凹した岩と根っこが作る段差で、彼は女性たちと混じって斜面から突き出た木の枝の根元に捕まって年少者の手助けをした。

甲羅村への帰り道は、杏奈と共にアシャンティ村を目指した時よりも、かなり近道だと彼は感じた。
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