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第一章

正義強◯連盟・理沙とデート

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正義強姦連盟……JRL……あまりにも意味不明な集団に友徳は心が釘付けになってしまい、あの日以降、テレビをチェックしたり、ネットで調べ物をしたりした……

「えええ??!!まじかよ……これ」

——JRLによる性犯罪に気をつけて! 日本PTA全国協議会 日本教育委員会

——昨今、テレビや新聞で報道されているように反日朝鮮人である高邑勇魚率いる不逞外国人らの集団による殺人、強姦、強制わいせつが多発しています。彼らはオウム真理教のような独特な信仰体系を“上座部仏教”と偽り教線を拡大し、主に浮浪者や社会の敗残兵に支持を拡大しています。彼らは宗教的信念に囚われた犯罪集団です。良心の呵責はありません。街や人気の少ない場所で、反日朝鮮人を見かけた場合、特に証拠がなくても警察に通報することを心がけましょう!

しばらく沈黙した友徳は「教育委員会って書いてあるけど……うちの学校ではこんな話聞いてないぞ?」

なんでうちの学校ではこんな話がないの?疑問は友徳の頭をフラフラさせた。

もう一つの気になっていたこと……あのJK達や松永達のことだ……しばらく調べるとこんな記事が……

——反日フェミナチに性技の鉄槌下れり!!!お手柄小学生達の自警団

——フェミニストと称して女性の権利の拡大を訴えていた変人達の正体が、インターネットの力で暴かれつつある……なんと彼女達は、裏では強姦の権利を主張するJRLと金銭のやり取りがあり、要はマッチポンプの関係。日本人女性を過度に怖がらせて自分の仲間に引き込み、日本人男性をイカれた性犯罪者に印象操作することにご執念していたのだ……

——そんな日本をディスするキャンペーンに憂慮を示す、正義の小学生達がいた!彼らは四人組でリーダーの松永くんは小学生にしては中々の体格だ。彼らは一体どんな活動をしているのだろうか?

「今、仲間達と組んで、ネットで生意気な発言をしている男性差別の女の情報を収集して、実際に会って懲らしめてます(笑)何をしてるかは企業秘密です」

松永くんは照れてはにかむが、彼の勇姿はネットで大きな反響を呼んだ。反痴漢と称して、実際のところ反日朝鮮人と深い繋がりを有していた“痴漢撲滅系tuber樹理ちゃんねる”へのお仕置き動画は、今ネット民に大きな共感と賞賛を得ている……

ゲームに集中した後のような、ダラーんとした感覚に支配されながら、樹理ちゃんねるについて調べても見た……あの動画は、公開されているし、コメントもある……

動画の説明文には……なんと樹理たちの使用済み下着販売へのリンクが記されている……友徳はリンクを押した。

そこには彼女達が下着姿で拘束され、囚人のように板をぶら下げて撮影されている様子が写真でいくつか掲載されていた。小さい鼻を膨らませ口を曲げてる沙織は、工藤沙織♡という名札を下げて、内股になりながら、パンティーとブラジャーお揃いの花柄に包まれてる……友徳の心臓は波打ち、鼻からは不快な息が漏れた。


次に動画のコメントを確認してみると
——四人とも可愛いwww
——もうこれからは日本に歯向かうんじゃないぞ?次はもっとだからな?
——これが、戦時性売春婦を擁護している人たちですか……
——みんな可愛いし、男も優しくするだろうから、フェミナチなんかしなければいいのに……
——とりあえず、日本人差別と男性差別の報いは噛み締めておけよ?

何これ………何これ。友徳は立ったり座ったりを繰り返し、ベッドからまたパソコンの前の戻ったりして、またもやパソコンの画面に釘付けになった……





金曜日、理沙は確かに友徳を誘いにきた。

友徳が玄関を開けると、まだ肌寒さの残る春の風の中、ピンクのワンピースで妖精みたいな理沙が笑みを浮かべていた。

「おはよう、友徳ぃー」と理沙は挨拶してからいきなり彼女は顔を近づけて、友徳の両頬を掴んでむにむにした。

「ぉはようございます」

「もう、準備できた?今日はいろんなとこ連れてってあげる!」

「ちょっと待って……」

友徳は自宅に上がって行ってから、自分が一番気に入っている、白のtシャツと黒のズボンに着替え、一階に戻り、すでに察している母親に報告してから、また玄関に赴いた。

「じゃあ、いこ」

「可愛い服だね、似合ってるよ。友徳ぃー」

先導する理沙は時折振り返ってニコッとした。柔らかい口元と、鋭い目のギャップに友徳はドキッとした。

それに加えて彼は、理沙が着るピンクのワンピースに吸い尽くされるように視線を注いでしまった。スカートをふんわりと風に戦がせたりもせず、無骨な歩みを続ける理沙はなんともミステリアス……

妖精にちょこちょこついて回る友徳は、まずコンビニに連れて行かれた。

「朝ごはん、食べたよね?とりあえず、電車ん中でなんか食べたい?」

「いや、別にいいです……」

理沙は自分の分の軽いグミやお茶を買って会計を済ますと、ほらいくよっと、あの鋭いのに妙にフレンドリーな視線を友徳に向けてから、駅の階段を登り始めた。下から見上げる友徳は春風に揺れるワンピースに心動かされた。

電車の中、理沙は、スマホをいじったり、外の景色をぼんやりと眺めながら細い腕を、手すりに伸ばしていた。友徳の視線に時折気づくと、理沙はニコッと目配せをして、それが友徳には楽しかった。

理沙が気づくと視線を逸らす、みていない時に見る。という彼が始めたゲームに理沙が気づくと彼らは意地になりながら最終駅まで、たわいもない遊びに夢中になった。

あの、母の千華子ともよく訪れる灰色の最終駅でも、友徳は、時折振り返る理沙について行った。暗く、人工的に光が浮き上がる駅構内で、理沙は一層神秘的だと友徳は感じた。

次の駅はなかなか遠く、電車の中で彼らは今日の日程を話した。理沙は、都内の渓谷とそばにあるレストラン、そして昼は、バッティングセンター、夕方はアパレルショップで服選び……と計画を話した。

商店街にある閑静な駅で降りてからしばらくすると、何やら窪んでいる地形を囲む手すりと、不思議な空間に下がっていく階段に友徳は気づいた。階段から下を見通すとそこには都会らしからぬ、宝石みたいに輝いて日を照り返す樹木群と、それと呼応する優雅に濁る羊羹のような川があった。





「すっご……綺麗……」

「でしょ、でしょ。行くよ……」

青い大気と、樹木から溢れてくる日を浴びて、歩二人は歩道歩いた。都会では見慣れないもくもくと茂る緑の渋滞と、和風ゲームの世界から飛び出して、ここまで流れ着いたような濁った川。

それらから感じられる心地よい清らかな冷気。聖域のような場所で、しんみりとおとなしく歩みを進め、すれ違う人々。

時折崖側の湧水から合流する川筋は苔にむして黒々としている。ふと、彼が理沙を見ると、つま先立ちで渓谷の方へ乗り出して、童女じみた瞳を緑に向けていた。

「うわっ、ここすごく綺麗!友徳、一緒に写真撮るよー」

友徳は理沙の細い腕に絡め取られて肩を抱かれ、スマホの画角を調整する彼女の手つきに身を委ねた。細いが結構硬い指に肩を掴まれ、乱暴に向きを調整されたものの、理沙の香水の匂いと柔らかい二の腕の感触の中で友徳は固まってしまった。

しばらく歩いていると、和菓子屋があった。理沙が食べていく?と聞いたので、友徳はお腹は空いてないけど一応ソフトクリームを頼んだ。

理沙も抹茶味のソフトクリームを頼み、友徳が一人で黙々とパクパクしていると「てか、そっちの味も気になるんだけど」と言い出して、行儀悪く、彼の手に掴まれたしソフトに齧り付いた。
「ほら私のも、あげるよ」と理沙が言うので、恥ずかしさと謎の罪悪感を押し殺して友徳は、同じく行儀悪く彼女の手に掴まれたソフトクリームを齧った。

「ほらー美味しいでしょ?」

「うん、美味しいです……」

和菓子屋の奥の階段を上がると、不動尊と呼ばれるお寺のようなものがあり、二人は参拝した。不動尊って何?と友徳は思ったけれど。

「何お願いした?」

「え、別に。拝んだだけ」

「私はね、ショップの棚作り頑張るぞぉーってお願いした」

「それって……お願いじゃないじゃん」ちょっとズレてるのに自信を見せて口角をあげる理沙が可愛くて、友徳はつい強めに突っ込んだ。

「え?そうかなぁ……」





渓谷から出た二人は最寄駅からでは通っていない、少しおしゃれな街に電車で行くために、住宅街を徒歩で横断しながら駄弁っていた。理沙は友徳にいろいろな話題を——好きなゲーム、ドラマ、俳優、アイドルなどを振ったり、聞いたりした。

友徳が最近、勉強頑張っている、特に国語!お父さんに勧められた小説も読んでると流れで話すと「へぇー、まじすごいじゃん、いい子だねー」といってから理沙は立ち止まり、太陽に照らされて輝く広葉樹みたいな笑顔を見せて、彼の頭を撫でた。友徳はピンと背を伸ばして胸を張り、彼女への思慕を思いっきり深めた。「うん、結構頑張ってる!」

駅からおしゃれな街への地下鉄に乗り込み、たった一駅で目的地に着いた。そこでは美味しいレストランとバッティングセンターに行くためにきたのだった。

「どう言うお店がいい?」と理沙。

「別に、どこでも」

「どこでもじゃわかんないよ」笑みを浮かべた後、わざとらしいムッとした表情を作って理沙がいった。

今度はさっきまでの思慕が吹き飛んで、友徳の胸がまた高鳴った。少し落ち着いてから恐る恐る「じゃあファミレス……」

「え?そんなところで、いいの?」

「フレンチトースト、食べたい」

二人はコンビニの上層階のファミレスに入り、席に通されるとコーヒーの香りを嗅ぎながら、メニューに目を通した。友徳はフレンチトースト、理沙は野菜たっぷりパスタを選んだ。

ご飯を待っている最中、理沙は瞳をじぃーと友徳に向けてからニコニコして、仕事の愚痴を話し始めた。妙にニコニコしている彼女は、友徳が相槌を打つとさらにますように活気じみていった。
「見せ筋商品とか全然売れなくて、この前お客さんがね?試着したはいいけど、じゃ、後でネットで買いますとか、まじでありえないんだけど!」

「店長に売場作り下手くそ!って言われて変えられたんだけど、そっちの方がまじでダサくてねー。しかも売り上げも下がったし!もう!」

ニコニコしながら愚痴る理沙の様子に、内心にビビりつつある友徳であったが、彼女もそれを察したようで「なんか私ばっかり愚痴ってごめんね?」と相変わらずニコニコしながらいった。
料理がきてから、二人は食べるのに集中して、黙々としていた。時折、理沙は友徳に学校のことや田舎での思い出を得々と語った。

そして食後の一服として、ドリンクバーを啜った後、バッティングセンターへ行き、汗を流した友徳は、途中まで元気が有り余っていたのに、日が暮れると一気にドッと疲れてしまった。アパレルショップで服を選ぶのはまた今度、ということで理沙は彼を家まで送って行った……






次の週の月曜日、登校してから机にランドセルを置いた友徳が隣のクラスの正道に会いに行こうとすると、正道の方から現れた。

「よ、友徳ぃー」

「おはよう」

友徳は朝っぱらからあの変な話題を出すことを躊躇ったものの、正道の方が口を開いた。
「あの、昨日のJRLのことなんだけどさ……」

「僕も後で調べたんだ……」

「あの樹理ちゃんねるの人たち、あれやばくね?」

「うん、やばいよね……」

いくら正道との仲とは言え、正直な感想を言うのは憚られた……

「でさ、色々調べたんだよ……長くなるから、昼休みに話す……なんかうちの学校変なんだ……」と正道。

正道もそう感じていたのか……友徳は妙な高揚感で正道の目を見据えた……

午前中の授業は、ワクワク感が消えず、うわいついた気持ちで友徳は挑むことになった。

昼休み、少年たちは議論に入った。

「……て、ことなんだよ」

「うん、正道もやっぱり……そう思ったんだ……」

PTAと教育委員会の連盟の注意喚起が、自分たちの学校で行われていない……正道は推理し始めた。「これはつまり……僕たちの学校にJRLの注意喚起をしない、何か特別な理由があると言うことだよ……これは僕たちが、よく虐められていることにも関係がある?キーワードは反日、朝鮮人、ふぇみにすと?」と反日、朝鮮人という語の前で、正道は一瞬唇を噛み締めて、表情を殺すようにいった。

正道は、在日韓国人だった。この学校に5年性で転校してきて、彼はそう名乗った。

その時クラス中に独特な動揺が走ったのを友徳は思い出した……自分たちが散々言われてきた、お前は在日だ!という意味不明な罵りを加える外の怖い人たちが、本当に憎悪と嘲笑を注ぎ込む、可哀想な人たち……しばらく友徳は正道に近づけなかった……しかし飛鳥はそんなこと気にせず彼と速攻で仲良くなり、巻き添えを食う形で友徳は正道の親友になった。

「そのふぇみにすとってなんだろ」友徳は話を逸らして疑問を呈した。

「知らない……とりあえずファミチキみたいなことが……ネットに書かれていたよね……今度図書館で調べようか」

「なーに、話してんの」急にニョキっと生える筍みたいに視界に智咲が入ってきた。

「なんでもねーよ……」女子の登場に萎えた身体を固めて友徳はいった。

「……わからない……わからない」智咲の声が聞こえていないのか、正道はテーブルに肘をつけて思考していた。

「実は、聞いてたよー。JRLのことでしょ?テレビでよくやってるよね」

「勝手に聞くなよ……」友徳は小さく顔を顰めた。

「ごめん、ごめん。聞くつもりはなかったよ。でも君たち声、大きいから」

「智咲……なんでうちの学校ではJRLの注意喚起してなかったんだろう?」正道は両手をあげて助言を求めた。

「知らないよ。でも、善至先生に聞いてみたら?先生、いい人だし、簡単に教えてくれると思うよ。それとフェミニストはね、女性の権利を主張している人たちだよ。私もあんまり詳しくないけどね!」

「あ……そか。先生に聞けばいいんだ」と素直に友徳。

「昼休みの残り時間は……後、十五分……職員室に行くべきだろうか?」

「つべこべ言ってないで、ほら!いってらっしゃい!てか、私もいく!」智咲に手を引かれて男二人は職員室に向かった……





「あ、JRLのこと?」仰け反ったまま、善至は回転椅子に乗った体を椅子ごと友徳達の方に向けた。

「はい……やっぱりおかしいと思うんです」正道は率先して説明した。

「なぜうちの学校ではPTAと教育委員の連盟の注意喚起が、この学校で配られてないかね……教えてあげようか?」善至は不敵に笑いながら三人の子供を見渡した。

「この注意喚起はこの学校にも届いてたよ……だが、配らなかった。理由は簡単。内容が事実ではないからだ……」

その言葉に友徳と正道は目配せした。そっか、それを見落としていた……

「まず、この高邑勇魚とかいう大馬鹿者。こいつは朝鮮人じゃない。こいつの知り合い、昔は友人だった俺が保証する……それにJRLが朝鮮人と外国人で構成されているという事実もない……ネットでジャーナリストが検証した記事がある……まぁ愛国的な人々に捏造扱いされているが……確かに一時期社会的弱者のリクルートの一環で、奴らが在日や外国人に接触した事実はあるぞ。これも俺が保証する。しかし、奴らなんて在日たちからしたらえらい迷惑で、うざがられて終わりだったんだよ。外国人も同様。もっと事実に反することがある。昨今の犯罪の増加は、JRLが直接やっているわけではない。まぁネットで性差別を煽ってるのは事実だから間接的な責任はあるがな……」

「先生が言うのが事実ってどこで、確認できますか……」正道は怖じけるような視線を善至に注ぎながら声を震わせていった。

「JRLについてはジャーナリストや学者が本書いてるから、図書館で借りて呼んでみろ。お前達には難しいかもだが……智咲には読めそうだな。まぁ正道も友徳も頑張って読め」

「はーい。私代わりに読んであげるわ」智咲が溌剌に答えた。

「しかし、お前達が社会に関心持ってくれて、俺は嬉しいよ。どう“成長”していくかはお前たちの資質と意思次第だが……」ニコニコして善至は子供達を順番に見つめながらいった。そして続けて「お前達は、自由だ。自分のことは自分で決めていけ。どんな道を選んでも結果には必ず報いられる」

「それってどう言うこと?」友徳はいった。

「ほーら。アウン先生が言ってたでしょ。善因楽果、悪因苦果って。善い行為には楽な結果が、悪い行為には苦しい結果がって」智咲はすんなりと説明した。

「おお、やるじゃん」善至はいった。

三人は、善至に軽く感謝してから、職員室を後にした……






昼休みのこともあったので、友徳は久しぶりに智咲とその友達の愛華も含めて、五人で帰路に立つことにした。そもそもこの五人は、入学以来最寄駅が同じことで仲良くなったのだった。

せっかく五人なので、太陽に照らされて外壁や樹木をオレンジ色に輝かせた活気に満ち溢れる商店街で一服することに魅力を感じた友徳は、四人をサンドイッチ屋に誘った。四人とも承諾し、店内のレジ横で一人一人好き好きに、小さく細い体を寄せ合いながらサンドイッチを選び、レジでは飲み物を注文した。奥の席に座った後は、男子と女子の接着剤の智咲が喋り始めた。

「男子たちは、給食もあったのに、よく食べるねー」

「給食だけじゃ、お腹一杯にならない」と友徳はサンドイッチを掴んで、人の目を気にして小さく齧りついた。

愛華は、普段男子たちとはあまり話さないから、身を少し小さくしながら、緊張の面持ちで、顔を見合わせたりしていた。おしゃれな彼女は、青のワンピースで一際目立っていた。

友徳は話題に困り、しばらくは今日の昼休みのことやいつもの都市伝説の話題で場を回した。智咲もうんうんと頷き、飛鳥も愛華も興味ありげだったが、もちろんJRLの日本語訳には触れなかった……流石にやばい。

「ていうか、聞きたいんだけど……飛鳥って誕生日、いつ?」と智咲は姿勢を崩して表情を崩さずにサラッと聞いた。

「え?9月20日だよ?」

「え、そっか。OK。でさ、正道も友徳も好きな食べ物とか、教えてほしんだけど、さ」

「なんでだよ」友徳は訝しながら尋ねた。

「ん?意味わからない?誕生日に好きなものをプレゼントしたいからだよ」と恥じらいもなく智咲。

「え……それって」逆に一気に息が詰まりながら友徳。

「ああ、そういうことね!僕は美味しければなんでも好きだよー!」と飛鳥。

「なるほど……ここで好きなものや趣味を一気に共有すれば、その都度、聞く必要がなくなるわけか」と正道。

飛鳥の発言に突然食いつき気味に「ねえ、なんでもって何?飛鳥くん。それじゃわからないよ……」と愛華が輝く瞳を彼に注いだ。

「うん、うん。今日は久しぶりなんだしさ。こういう風にみんなで遊ぶの。じっくり正直に話そ。まぁ私はあんたらの好きなものなんかだいたい想像つくけど!」と智咲。

女子たちの異様な詰問に、友徳たちは答えていく羽目になった……

その後、みんなで電車に揺らされながら最寄駅までいき、そこで各々の帰路についた友徳は、家が近いので正道と智咲とはまだ一緒だった。

緑道の、手入れされて細やかに色とりどりの草花が計画的に繁茂する川の横を三人で歩いている時、後ろから声を変えられた友徳は振り返った。そこには、あの松永ズがいた……

「よ!中捨、だっけか?久しぶりぃー?」とデブ・松永は、くしゃくしゃに顔を歪めて笑った。

「え……なんだよ」

「ちょうど、お前の教科書、川に捨てて以来だよなぁ!あれはお前が洗脳されないためにやってやったんだぜ!」と裕太。

「正道、智咲逃げようぜ……」

「待てや!在日!お前らのお仲間が最近まじで暴れてるからなぁ。ちょっとお仕置きしようと思ってね」

「在日が暴れてる?何適当なこと言ってるの?それに私たちは日本人だよ?いい加減なことを言って楽しい?」と智咲は悪ガキを正面からまっすぐ見据えて反論した。

「誰だブス!いや、結構可愛いな……でも俺たちの目当てはオメェじゃねぇんだよ……」とデブ。

「ん?その話はこいつらには関係ないよー?ふふふ」退廃する笑みを浮かべて宗が続いた。

「目当てってなんだよ」と友徳は怖気付いて後退りしながら質問した。

「その目当てが今日、達成されたから……?ちょっとお前らにお礼しにきただけだぜ!さんきゅ!」と裕太。

「もしかして愛華のこと?変なこと考えてるなら、先生に言うよ」と智咲。

「ちげーよ、ブス。というかお前ら仲良し五人組とは関係ねー」とデブ。

三人は無視して帰路を急いだ。あのデブズはずっと後をつけていくる。足の速さは完全に合わせて彼らは罵詈雑言を浴びせた。

「お前らの先輩の勇魚が日本人女性をレイプしたぞ!」

「慰安婦に賠償するニダー!」

「気持ち悪い、臭い、カルトキモーい!」

「この前も在日が、通り魔事件、起こしたぞ!」

ひどい言葉を聞きながら、友徳は反論したい衝動を押し殺して家に向かった……彼には反論する言葉を思いつくことができなかった……
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