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51 大人の飲み会仲間
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「蒼井が……K?」
呟くように言うと、蒼井はこくりと頷いた。
Kというのはおそらく、蒼井の名前 ″響″ が由来なのだろう。
まさか、こんな事があるなんて。
初めてのオンライン・サロンで一番仲良くなったのが、かつてのいじめっ子だったなんて信じられない。
俺はふと、Kからの相談内容を思い出し、頬を熱くした。
(前に、昔好きだったやつに店で再会したって言ってたけど、あれって俺の事だったんだ……っ)
思えば、確かにあれは俺と蒼井がカフェで再会した日だった。
蒼井は俺と再会した事を、SSと名乗る俺に話していた、と言うことか。
それともう一つ。
確か、サロンの王様ゲームに参加していた日、Kも参加していた。
あの時、俺はちょっとエッチな気分になってしまい、途中で落ちて自慰に耽っていた。
そこへ、蒼井から ″今、何してんの?……″ と連絡が来て……。
(それからエロい展開になってったんだよな……)
もしかすると、あの時蒼井は既にSSが俺だと気付いていたのかもしれない。
だとすれば、恥ずかし過ぎる。
俺は蒼井をキッと睨んだ。
「おおおお前……っ! いつから気付いてたんだよ!?」
「んー……サロンで颯太の悩みを聞いた時かな。言ってる事が颯太そのものって感じだったし」
「あ……」
俺の悩み相談、確かにそんなこともあった。
あの時は確か、偶然BLのエリアに飛んでしまい、出ようとしたらKがエリアに来たので、そのまま俺の相談に乗ってもらう為に二人で移動したのを覚えている。
しかも、途中でKから返事が来ないと思ったら蒼井から連絡が来たというのも、記憶に残っている。
てっきり、Kがトイレにでも行ってるのかと思っていたけど、そうではなかったということか。
「マジかよ……はぁぁーーーー……」
「颯太?」
「なんか……疲れた」
「……」
ソファーの上で項垂れていると、横から蒼井の手がスッと伸びてきた。
そして……
「…… っうわ!?」
「よし、帰ろ? あ、もちろん解散ていう意味じゃないから」
「は!? ちょっ、おろせ……っ!」
蒼井は俺の身体を肩に担ぐと、伝票を持ってさっさと部屋を出る。
そして受付カウンターへ行くと、キャンセルしたいと店員に伝えた。
「すみません、こいつ具合悪くなっちゃったみたいで、キャンセルしたいんですけど」
「まぁ、かしこまりました。では……」
担がれたまま聞いていると、一時間分の利用料金はどうしてもかかってしまうとのこと。
フリーランスで切り詰めた生活を送る俺としては、なんとも勿体無いと感じてしまうのだけれど、蒼井は文句を言うことなく会計を済ませてしまった。
店を出て暫く行ったところで、俺はジタバタと暴れてようやく地上に降り立った。
「おい、なんですぐに出たんだよ!? 一時間分払うなら、一時間ぐらい歌ってからでも良かっただろ?」
「えー、だって……早く颯太とイチャイチャしたかったから。それに、一時間分なんてそんなにしないじゃん?」
「クッソ、金持ちかよっ」
「ふふん」
確かに、先ほど入った店は一時間の料金がそこまで高くはなかった。
だからそれぐらいケチケチする事ではないのかもしれないけれど……。
「むぅ……」
「ふふ、いいから気にすんなって。今日は俺の奢り。ほら、行こ」
(……なんだよ、すげーかっこいいし)
俺なんて、桜さんの前で冷や汗ばっかりかいてたのに。
お金の事ばかりじゃなくて、こうしてちょっと強引にリードしてくれるのもキュンとしてしまう。
余裕のある姿につい見惚れていると、蒼井がニヤリと笑みを浮かべた。
「なぁに見惚れてんの?」
「っはぁ!? 別に見惚れてなんか……っ」
「もう、颯太は本当に分かりやすいね」
「あ……っ」
モタモタしていたら、サッと手を繋がれてしまった。
本当に、コイツはいつもいつも人前で恥ずかしくないのだろうか。
当然、俺は恥ずかしいから離してほしい。
けれど、蒼井は絶対に聞いてくれないだろう。
(でも、それがちょっと嬉しかったり……)
人目は気になるものの、手を振り払う気になれず。
蒼井の少し後ろで頬を熱くしつつ、俺は大人しく手を繋がれたまま歩いたのだった。
呟くように言うと、蒼井はこくりと頷いた。
Kというのはおそらく、蒼井の名前 ″響″ が由来なのだろう。
まさか、こんな事があるなんて。
初めてのオンライン・サロンで一番仲良くなったのが、かつてのいじめっ子だったなんて信じられない。
俺はふと、Kからの相談内容を思い出し、頬を熱くした。
(前に、昔好きだったやつに店で再会したって言ってたけど、あれって俺の事だったんだ……っ)
思えば、確かにあれは俺と蒼井がカフェで再会した日だった。
蒼井は俺と再会した事を、SSと名乗る俺に話していた、と言うことか。
それともう一つ。
確か、サロンの王様ゲームに参加していた日、Kも参加していた。
あの時、俺はちょっとエッチな気分になってしまい、途中で落ちて自慰に耽っていた。
そこへ、蒼井から ″今、何してんの?……″ と連絡が来て……。
(それからエロい展開になってったんだよな……)
もしかすると、あの時蒼井は既にSSが俺だと気付いていたのかもしれない。
だとすれば、恥ずかし過ぎる。
俺は蒼井をキッと睨んだ。
「おおおお前……っ! いつから気付いてたんだよ!?」
「んー……サロンで颯太の悩みを聞いた時かな。言ってる事が颯太そのものって感じだったし」
「あ……」
俺の悩み相談、確かにそんなこともあった。
あの時は確か、偶然BLのエリアに飛んでしまい、出ようとしたらKがエリアに来たので、そのまま俺の相談に乗ってもらう為に二人で移動したのを覚えている。
しかも、途中でKから返事が来ないと思ったら蒼井から連絡が来たというのも、記憶に残っている。
てっきり、Kがトイレにでも行ってるのかと思っていたけど、そうではなかったということか。
「マジかよ……はぁぁーーーー……」
「颯太?」
「なんか……疲れた」
「……」
ソファーの上で項垂れていると、横から蒼井の手がスッと伸びてきた。
そして……
「…… っうわ!?」
「よし、帰ろ? あ、もちろん解散ていう意味じゃないから」
「は!? ちょっ、おろせ……っ!」
蒼井は俺の身体を肩に担ぐと、伝票を持ってさっさと部屋を出る。
そして受付カウンターへ行くと、キャンセルしたいと店員に伝えた。
「すみません、こいつ具合悪くなっちゃったみたいで、キャンセルしたいんですけど」
「まぁ、かしこまりました。では……」
担がれたまま聞いていると、一時間分の利用料金はどうしてもかかってしまうとのこと。
フリーランスで切り詰めた生活を送る俺としては、なんとも勿体無いと感じてしまうのだけれど、蒼井は文句を言うことなく会計を済ませてしまった。
店を出て暫く行ったところで、俺はジタバタと暴れてようやく地上に降り立った。
「おい、なんですぐに出たんだよ!? 一時間分払うなら、一時間ぐらい歌ってからでも良かっただろ?」
「えー、だって……早く颯太とイチャイチャしたかったから。それに、一時間分なんてそんなにしないじゃん?」
「クッソ、金持ちかよっ」
「ふふん」
確かに、先ほど入った店は一時間の料金がそこまで高くはなかった。
だからそれぐらいケチケチする事ではないのかもしれないけれど……。
「むぅ……」
「ふふ、いいから気にすんなって。今日は俺の奢り。ほら、行こ」
(……なんだよ、すげーかっこいいし)
俺なんて、桜さんの前で冷や汗ばっかりかいてたのに。
お金の事ばかりじゃなくて、こうしてちょっと強引にリードしてくれるのもキュンとしてしまう。
余裕のある姿につい見惚れていると、蒼井がニヤリと笑みを浮かべた。
「なぁに見惚れてんの?」
「っはぁ!? 別に見惚れてなんか……っ」
「もう、颯太は本当に分かりやすいね」
「あ……っ」
モタモタしていたら、サッと手を繋がれてしまった。
本当に、コイツはいつもいつも人前で恥ずかしくないのだろうか。
当然、俺は恥ずかしいから離してほしい。
けれど、蒼井は絶対に聞いてくれないだろう。
(でも、それがちょっと嬉しかったり……)
人目は気になるものの、手を振り払う気になれず。
蒼井の少し後ろで頬を熱くしつつ、俺は大人しく手を繋がれたまま歩いたのだった。
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