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(ええと、俺がされる側だから……)


想像しながら、俺は僅かに顔を傾け、キスをされる体勢になる。

チャット欄を見ていると、女性Aから『いきますよ~』とメッセージが来た。

俺も『準備OK!』と返すと、Aが『チュッ』と返事をよこす。


(あ……)


その瞬間、なぜか蒼井の顔が浮かんできて、心臓がドキリと音を立てる。


「……っ」


蒼井にされたキスを思い出し、思わず声が漏れそうになる。

胸はドキドキしているし、息が上がりそうで、俺は慌てて正気を取り戻した。


(いかんいかんっ! 今はゲーム中だってのに!)


少し潤んでしまった目元を擦り、チャット欄に報告を打ち込む。


『頬にキスされました!』


ゲームのルールとして、リアル感を出すために ″⚪︎⚪︎しました″ とか ″⚪︎⚪︎されました″ のように報告することになっている。

もちろん、実際にしたりされたりしたわけではないのだけれど、その方が盛り上がるという事なのだ。

しかしながら……


(うぅ、なんかちょっと変な気分になってきちゃったかも……っ)


キスのくだりで蒼井を思い出したせいか、下半身はすっかり熱くなってしまった。

というか、なんで蒼井でこんな事にならなければならないのか。

これは一刻も早く女嫌いを治さなければ、俺はこのまま蒼井を好きになってしまうかもしれない。


(……っそれだけはいやだ!)


とは思うけれど、このゲームをしている以上、蒼井が脳裏にちらつきそうだ。

今のなんて、せっかく相手が女性だったのにも関わらず蒼井を思い出してしまった。


ルーレットが回るのを見つめながら、俺はもうゲームから抜けようかと考える。

けれど、ここで逃げたら一生女嫌いを克服出来ない気がして、俺は気持ちを立て直しゲームに参加を続ける。

そして少ししてルーレットが止まると、次の王様が決定した。

今度は男性Bだ。

Bは王様になった事を謙遜するようなコメントをチャットに打ち込んだ割に、『15番は20番の一番敏感なところを触る』という、なんともエロい展開になりそうな命令を出してきた。


(……って、20番、また俺かよ!?)


信じ難くて自分の番号を二度見するも、俺の今回の番号はやはり20番だった。

15番は誰かというと……


「えっ……!?」


いつから参加していたのか、15番はKだった。

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