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・・・

「うーん、変じゃないよな?」


あれから一週間、俺の頭の中は相変わらず蒼井一色になっていた。

もちろん、帽子作りは真面目にやっているけれど、″大人の飲み会″ には全然顔を出さなくなってしまっていた。


そんなこんなで、今日はデートの日。

行き先は、この前蒼井が言っていた駅前に新しく出来たケーキ屋。

絶品だと噂のケーキを食べに行く。


鏡の前で懸命に見た目を整え、準備を整える。

蒼井との待ち合わせ時間まであと30分。

そろそろ出なければならない。


「……うん、これでいっか」


お気に入りのパーカーに、ハーフパンツ、靴は普段履いているスニーカーを履いて行けばおかしくはないだろう。

桜さんの時の教訓を生かし、背伸びし過ぎず、自分のお気に入りのファッションに身を包む。


(だって、蒼井はきっといつもの俺の事を好きな筈だから……)


……って。

自分で思っておいて恥ずかしくなり、顔が熱くなる。

けど、もう桜さんの時みたいに、自分をよく見せようとか、カッコつけて奢ろうとか、そういう事はしないと決めた。


(俺は俺のままで、蒼井に会いたい)


というわけで、準備が整ったのでそろそろ出る事にする。

鞄はいつものグレーのショルダーバックで、中に財布とスマホなどの必需品が入っているかどうか確認し、俺は部屋を後にした。


・・・


駅前付近まで行くと、時計塔の下に蒼井を発見。

蒼井はスマホを弄りながら時計塔に寄りかかり、俺を待っていた。


(やっぱなんか……様になるよな)


蒼井の格好は、相変わらずシンプルなものだった。

黒いTシャツにグレーのパンツ、鞄はあまり持ち歩かないのか、スマホや部屋の鍵なんかはパンツのポケットに入れているようだ。

しかしながら、その姿は格好良くてつい見惚れてしまいそうになる。


(って、しまった、つい)


俺はフルフルと首を横に振ると、蒼井の側まで駆け寄った。


「蒼井」


「あ、颯太……」


「え?」


蒼井はこちらに気付くと、何やら俺の足元を指差してくる。

なんだろうと思ったその時、俺は思いきり前につんのめった。


「うわっ……!?」


「颯太!」


蒼井の声が響き、身体が前に倒れる。


(転ぶ……っ)


これからデートだと言うのに、早速やってしまったらしい。

俺はこのまま固いコンクリートにぶつかると覚悟した。

けれど目を瞑った次の瞬間、ふわりと何かに抱き留められる感触がして、俺はそっと目を開ける。


「……あ」


「あっぶね……」


気付けば、俺は蒼井の腕の中にいて、しっかりと支えられていた。

しかし、側から見ると抱きしめ合っているように見えるらしく、道ゆく人々の視線が痛い。


「……っだ、大丈夫だから!」


「あ」


ぐいっと胸元を押して離れると、蒼井は可笑しそうに苦笑した。


「そんなに意識しなくてもいいのに」


「するっつーの!」


俺は真っ赤になって答える。

ていうか、今のですっかりドキドキしてしまった。

蒼井の腕の感触がまだ身体に残っていて、俺はそれを振り切るように元気よく歩き始めた。


「ほらっ、行こうぜ? 駅前のケーキ屋、どこだよ?」

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