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21 生姜湯⭐︎イラストあり
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(え……!?)
驚き、俺は目を見開いたまま固まる。
いや……無理無理無理!
さっきから、一緒にいればキスだのなんだのされ放題だというのに、泊まりなんて冗談じゃない。
俺はブンブンと首を横に振った。
「無理……! 俺は帰るからな! 引き止めたって、今度こそ無駄だぞ!?」
そう断言し、スマホで時間を確認する。
(えーっと……)
さっき、この蒼井の部屋まで割と短時間で来た事を考えれば、俺の住んでいるマンションまでそう遠くない筈だ。
だとすると、終電も気にせず、いつでも帰れるという事になる。
(今は19時か。余裕じゃん!)
スマホにはちょうど19:00と表示されており、希望の光が差してくる。
この時間なら、もう少しだけ体調が回復するのを待ってからでも全然余裕だろう。
俺は強気になり、ドヤ顔でスマホの時刻を蒼井に見せながら言った。
「俺、20時までには回復して帰るから」
「え……20時までに回復、できるの?」
「できるだろ」
「ふぅん、そっか」
メラメラと燃えている俺とは対照的に、つまらなそうにしている蒼井。
(くっそー、絶対に回復してやる!)
兎にも角にも、ここを出なければ。
とはいえ、流石にこのままぼうっとしていても回復する自信はない。
仕方がないので、俺はもう一度ベッドを借りても良いか蒼井に聞くことにした。
「あのさ……もう少し、寝ててもいい?」
「え? ああ、いいよ」
突然の質問に、蒼井はすんなり頷いた。
そして少し考えるようにしたかと思うと、何か思いついたらしく、パッと顔を上げた。
「颯太、生姜湯作ってあげるよ。うち、今ちょうど生姜が余っててさ」
「生姜湯?」
生姜湯なんて、久しぶりに聞いた。
まだ実家にいた頃、俺が風邪をひくとよく母親が作ってくれたっけ。
懐かしい記憶が蘇り、ついまたぼうっとしていると、蒼井はくるりと背を向けて去っていく。
「あ、蒼井?」
「ちょっと待ってて」
蒼井はキッチンの方へ行くと、ゴソゴソと冷蔵庫を漁り始めた。
そして生姜を取り出すと、湯を沸かしてカップやその他の材料を手際よく準備する。
(わー……なんか)
蒼井って料理も上手に出来そう、なんて思いつつ俺は目を瞬かせた。
今、蒼井は俺のために生姜を刻んで、湯をカップに注いで、砂糖も少し入れて、スプーンでかき混ぜている。
そんな姿を見ていると、少しキュンとしてしまう。
本当にマジでここだけの話だけれど、ちょっとだけ蒼井の事が愛おしく思えてきてしまっている自分がいる。
(ハァァ……俺、ついにバグったかな)
自分の気持ちの変化に、俺は頭を抱える。
出来ることなら、この気持ちに蓋をして、生姜湯を飲むだけ飲んでさっさと帰りたい。
それで、蒼井の事なんかスッキリ忘れて、また大人の飲み会で恋愛話をして、女嫌いを克服し彼女を作る。
そう、それこそが俺の理想の人生だ。
(けど……)
俺はもう一度蒼井の姿を見つめ、小さくため息をついた。
多分もう、この気持ちを無くしたり無視したりすることは出来ないだろう。
(蒼井……)
心の中で名前を呼んでみると、また少し胸の奥がキュウッと締め付けられる。
俺は戻ってきた蒼井を見上げると、あまり目は合わせないようにしつつ口を開いた。
「わ、悪いな……その、今度何か、お礼する、から」
「えっ……!?」
「……っ」
言った瞬間、弾けるように蒼井が俺を見る。
俺は恥ずかしくて顔を上げられないまま、小さく頷いた。
「たたっ、大したこと出来ないけど……っなんかあったら、言えよな……!」
「颯太……うん」
(わ……)
瞬間、俺は蒼井の顔につい見惚れてしまった。
というのも、 ″うん″ と言った時の蒼井の表情は、まるで別人かのように優しく、穏やかで、完全にキラキラの王子様だったから。
(あんな顔、するんだ……)
初めて見る蒼井の表情に、俺はしばらくドキドキが止まらなかった。
驚き、俺は目を見開いたまま固まる。
いや……無理無理無理!
さっきから、一緒にいればキスだのなんだのされ放題だというのに、泊まりなんて冗談じゃない。
俺はブンブンと首を横に振った。
「無理……! 俺は帰るからな! 引き止めたって、今度こそ無駄だぞ!?」
そう断言し、スマホで時間を確認する。
(えーっと……)
さっき、この蒼井の部屋まで割と短時間で来た事を考えれば、俺の住んでいるマンションまでそう遠くない筈だ。
だとすると、終電も気にせず、いつでも帰れるという事になる。
(今は19時か。余裕じゃん!)
スマホにはちょうど19:00と表示されており、希望の光が差してくる。
この時間なら、もう少しだけ体調が回復するのを待ってからでも全然余裕だろう。
俺は強気になり、ドヤ顔でスマホの時刻を蒼井に見せながら言った。
「俺、20時までには回復して帰るから」
「え……20時までに回復、できるの?」
「できるだろ」
「ふぅん、そっか」
メラメラと燃えている俺とは対照的に、つまらなそうにしている蒼井。
(くっそー、絶対に回復してやる!)
兎にも角にも、ここを出なければ。
とはいえ、流石にこのままぼうっとしていても回復する自信はない。
仕方がないので、俺はもう一度ベッドを借りても良いか蒼井に聞くことにした。
「あのさ……もう少し、寝ててもいい?」
「え? ああ、いいよ」
突然の質問に、蒼井はすんなり頷いた。
そして少し考えるようにしたかと思うと、何か思いついたらしく、パッと顔を上げた。
「颯太、生姜湯作ってあげるよ。うち、今ちょうど生姜が余っててさ」
「生姜湯?」
生姜湯なんて、久しぶりに聞いた。
まだ実家にいた頃、俺が風邪をひくとよく母親が作ってくれたっけ。
懐かしい記憶が蘇り、ついまたぼうっとしていると、蒼井はくるりと背を向けて去っていく。
「あ、蒼井?」
「ちょっと待ってて」
蒼井はキッチンの方へ行くと、ゴソゴソと冷蔵庫を漁り始めた。
そして生姜を取り出すと、湯を沸かしてカップやその他の材料を手際よく準備する。
(わー……なんか)
蒼井って料理も上手に出来そう、なんて思いつつ俺は目を瞬かせた。
今、蒼井は俺のために生姜を刻んで、湯をカップに注いで、砂糖も少し入れて、スプーンでかき混ぜている。
そんな姿を見ていると、少しキュンとしてしまう。
本当にマジでここだけの話だけれど、ちょっとだけ蒼井の事が愛おしく思えてきてしまっている自分がいる。
(ハァァ……俺、ついにバグったかな)
自分の気持ちの変化に、俺は頭を抱える。
出来ることなら、この気持ちに蓋をして、生姜湯を飲むだけ飲んでさっさと帰りたい。
それで、蒼井の事なんかスッキリ忘れて、また大人の飲み会で恋愛話をして、女嫌いを克服し彼女を作る。
そう、それこそが俺の理想の人生だ。
(けど……)
俺はもう一度蒼井の姿を見つめ、小さくため息をついた。
多分もう、この気持ちを無くしたり無視したりすることは出来ないだろう。
(蒼井……)
心の中で名前を呼んでみると、また少し胸の奥がキュウッと締め付けられる。
俺は戻ってきた蒼井を見上げると、あまり目は合わせないようにしつつ口を開いた。
「わ、悪いな……その、今度何か、お礼する、から」
「えっ……!?」
「……っ」
言った瞬間、弾けるように蒼井が俺を見る。
俺は恥ずかしくて顔を上げられないまま、小さく頷いた。
「たたっ、大したこと出来ないけど……っなんかあったら、言えよな……!」
「颯太……うん」
(わ……)
瞬間、俺は蒼井の顔につい見惚れてしまった。
というのも、 ″うん″ と言った時の蒼井の表情は、まるで別人かのように優しく、穏やかで、完全にキラキラの王子様だったから。
(あんな顔、するんだ……)
初めて見る蒼井の表情に、俺はしばらくドキドキが止まらなかった。
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