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20 泊まってけば?⭐︎イラストあり
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・・・
(……あれ……俺……?)
あれからどれぐらい経ったのだろうか。
目を覚ますと、俺はベッドに寝かされていた。
布団はキッチリ首元までかけられており、おでこには熱を覚ます冷たいシートが貼られている。
そして、ぼんやりした意識のままあたりを見渡すと、ベッドサイドに小さなテーブルがあり、その上には体温計と綺麗に畳まれたタオルが置かれていた。
更に、その先に目をやると……。
(あ、蒼井……?)
サイドテーブルから少し離れたところに蒼井の姿を発見して、俺は僅かに目を見開いた。
蒼井は一人用の小さい椅子に座ったまま、コクリ、コクリと居眠りをしている。
(なんで蒼井が……って、そうか。俺、蒼井の部屋に連れてこられて……)
徐々に意識がはっきりしてきて、倒れる前の出来事が脳裏に蘇ってくる。
それはまるで夢の中の出来事のようで、俺はまたドキドキしてきてしまった。
(ていうかっ……! 俺、蒼井にキスされたり、エロい事……されたんだよな……っ)
思い出す毎に頬が熱くなる。
キスをされて、身体を拘束されたまま敏感なところを好きなように弄り回された事を思い出すと、また身体が疼き出してしまい、俺は慌てて頭をフルフルと横に振った。
(か、帰らなきゃ……)
なんとか正気を取り戻し、ベッドから降りようと足を伸ばす。
けれど熱があるせいか視界が大きく歪み、俺はパタリとベッドに倒れてしまった。
(うぅ、身体がだるい……完全に風邪ひいてしまった……)
雨に濡れたぐらいで、いつもは風邪なんてひかないのだが、今回はやはりプラスして色々あったせいだ。
しかも、だいぶ熱が高い気がして、俺はサイドテーブルに置いてある体温計に手を伸ばした。
するとそのタイミングで蒼井が目を覚まし、大きく伸びをする。
「んん~……っやべ、寝てた。……あ、颯太。起きてたのか」
蒼井は俺に気付くと、椅子から立ち上がりこちらへやってきた。
そして俺の後ろ頭をぐいっと引き寄せ、おでことおでこをくっつける。
「んー、まだあっついね」
「ちょお……っ離せよっ」
恥ずかしくて、俺はぐっと蒼井の胸元を押して突き放した。
蒼井は「おっと」と言ってよろけてみせると、苦笑を浮かべる。
「冷たいなぁ、颯太」
「っるさい! つーか、熱測りたいんだけどっ」
「はいはい、どうぞ」
蒼井は呆れたように言うと、体温計を手渡してくれた。
「むぅ……」
俺は不機嫌なまま、体温計を脇に挟む。
体温計は最近のものらしく、計測スタートから一分も待たないうちにピピピッとお知らせ音が鳴った。
脇から引き抜いて見れば、それなりに熱が高い事が発覚する。
「38度5分……まじか、そこそこ高いし」
これでは、帰るに帰れない。
いや、気合いを入れれば帰れるけれど、今はどうにも立って歩く気になれなかった。
(あーあ、次の帽子のデザイン考えるのは、明日以降かぁ)
今日はやっと出来上がった帽子の発送が終わり、気分よく次のアイディアを練ろうと思っていたのに、この高熱では頭が働かない。
それに、一日の楽しみであるオンラインサロン ″大人の飲み会″ にも、今日は参加出来ないとなると残念でならない。
いくつかの楽しみがお預けになり肩を落としていると、蒼井がどこからか俺のスマホを取り出してきて、目の前に差し出した。
「ほれ、スマホ。颯太の充電無くなりそうだったから、充電しといた」
「あ……そうなんだ? あの、ありがと」
蒼井曰く、機種が同じだったし、充電ぐらい気にしなくて良いとのこと。
なんだかんだ優しさが垣間見え、俺はちょっとだけ蒼井を見直し、チラリと見上げた。
「ん? 何?」
「っ別に!」
バチっと目が合い、俺は慌ててそっぽを向く。
とにかく今は、蒼井と目が合っただけで一連の出来事を思い出してドキドキしてしまう。
男にエロい事されるのなんて初めてだし、どうしていいか分からない。
けど、このまま蒼井のベッドを借りている訳にはいかないし、帰らなければ。
暫し考えた後、俺は改めて蒼井に言った。
「なぁ……ベッド、夜はお前使うだろ? 俺、それまでには帰るから。その……あり、がとな」
「…………」
なんだかギクシャクしながらも、一応お礼を伝える。
けれど、蒼井は黙ったまま俯いていて、返事がない。
「…………」
静まり返る部屋に、僅かな息遣いだけが響く。
そして動かない蒼井。
(な、なんだよ……どうしたんだ?)
俺はつい心配になって、蒼井に声をかけた。
「……蒼井、どうかした?」
「……ってけば?」
「え?」
何やらボソッと呟いた蒼井の声がよく聞こえず、聞き返す。
と、意外すぎる答えが耳に響いてきた。
「だから、今日、泊まってけば? って」
(……あれ……俺……?)
あれからどれぐらい経ったのだろうか。
目を覚ますと、俺はベッドに寝かされていた。
布団はキッチリ首元までかけられており、おでこには熱を覚ます冷たいシートが貼られている。
そして、ぼんやりした意識のままあたりを見渡すと、ベッドサイドに小さなテーブルがあり、その上には体温計と綺麗に畳まれたタオルが置かれていた。
更に、その先に目をやると……。
(あ、蒼井……?)
サイドテーブルから少し離れたところに蒼井の姿を発見して、俺は僅かに目を見開いた。
蒼井は一人用の小さい椅子に座ったまま、コクリ、コクリと居眠りをしている。
(なんで蒼井が……って、そうか。俺、蒼井の部屋に連れてこられて……)
徐々に意識がはっきりしてきて、倒れる前の出来事が脳裏に蘇ってくる。
それはまるで夢の中の出来事のようで、俺はまたドキドキしてきてしまった。
(ていうかっ……! 俺、蒼井にキスされたり、エロい事……されたんだよな……っ)
思い出す毎に頬が熱くなる。
キスをされて、身体を拘束されたまま敏感なところを好きなように弄り回された事を思い出すと、また身体が疼き出してしまい、俺は慌てて頭をフルフルと横に振った。
(か、帰らなきゃ……)
なんとか正気を取り戻し、ベッドから降りようと足を伸ばす。
けれど熱があるせいか視界が大きく歪み、俺はパタリとベッドに倒れてしまった。
(うぅ、身体がだるい……完全に風邪ひいてしまった……)
雨に濡れたぐらいで、いつもは風邪なんてひかないのだが、今回はやはりプラスして色々あったせいだ。
しかも、だいぶ熱が高い気がして、俺はサイドテーブルに置いてある体温計に手を伸ばした。
するとそのタイミングで蒼井が目を覚まし、大きく伸びをする。
「んん~……っやべ、寝てた。……あ、颯太。起きてたのか」
蒼井は俺に気付くと、椅子から立ち上がりこちらへやってきた。
そして俺の後ろ頭をぐいっと引き寄せ、おでことおでこをくっつける。
「んー、まだあっついね」
「ちょお……っ離せよっ」
恥ずかしくて、俺はぐっと蒼井の胸元を押して突き放した。
蒼井は「おっと」と言ってよろけてみせると、苦笑を浮かべる。
「冷たいなぁ、颯太」
「っるさい! つーか、熱測りたいんだけどっ」
「はいはい、どうぞ」
蒼井は呆れたように言うと、体温計を手渡してくれた。
「むぅ……」
俺は不機嫌なまま、体温計を脇に挟む。
体温計は最近のものらしく、計測スタートから一分も待たないうちにピピピッとお知らせ音が鳴った。
脇から引き抜いて見れば、それなりに熱が高い事が発覚する。
「38度5分……まじか、そこそこ高いし」
これでは、帰るに帰れない。
いや、気合いを入れれば帰れるけれど、今はどうにも立って歩く気になれなかった。
(あーあ、次の帽子のデザイン考えるのは、明日以降かぁ)
今日はやっと出来上がった帽子の発送が終わり、気分よく次のアイディアを練ろうと思っていたのに、この高熱では頭が働かない。
それに、一日の楽しみであるオンラインサロン ″大人の飲み会″ にも、今日は参加出来ないとなると残念でならない。
いくつかの楽しみがお預けになり肩を落としていると、蒼井がどこからか俺のスマホを取り出してきて、目の前に差し出した。
「ほれ、スマホ。颯太の充電無くなりそうだったから、充電しといた」
「あ……そうなんだ? あの、ありがと」
蒼井曰く、機種が同じだったし、充電ぐらい気にしなくて良いとのこと。
なんだかんだ優しさが垣間見え、俺はちょっとだけ蒼井を見直し、チラリと見上げた。
「ん? 何?」
「っ別に!」
バチっと目が合い、俺は慌ててそっぽを向く。
とにかく今は、蒼井と目が合っただけで一連の出来事を思い出してドキドキしてしまう。
男にエロい事されるのなんて初めてだし、どうしていいか分からない。
けど、このまま蒼井のベッドを借りている訳にはいかないし、帰らなければ。
暫し考えた後、俺は改めて蒼井に言った。
「なぁ……ベッド、夜はお前使うだろ? 俺、それまでには帰るから。その……あり、がとな」
「…………」
なんだかギクシャクしながらも、一応お礼を伝える。
けれど、蒼井は黙ったまま俯いていて、返事がない。
「…………」
静まり返る部屋に、僅かな息遣いだけが響く。
そして動かない蒼井。
(な、なんだよ……どうしたんだ?)
俺はつい心配になって、蒼井に声をかけた。
「……蒼井、どうかした?」
「……ってけば?」
「え?」
何やらボソッと呟いた蒼井の声がよく聞こえず、聞き返す。
と、意外すぎる答えが耳に響いてきた。
「だから、今日、泊まってけば? って」
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