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・・・
ーー20分後。
(ふぅ……)
シャワーを浴びたてスッキリした俺は、脱衣所で蒼井に借りたシャツに袖を通した。
(あー……やっぱりデカいな)
鏡で自分の姿をチェックしながら、小さくため息をつく。
背の高い蒼井のシャツは、俺にはやはり少し大きくて気持ちが凹む。
袖は長くて萌え袖状態だし、着丈も長いのでズボンを履かなくてもパンツが見えない。
まぁ、楽と言えば楽なのだが、男としてはイケメン高身長なやつが着ているシャツを難なく着こなしたかった。
俺は一人、鏡の前で項垂れつつも、今度は借りたズボンに手を伸ばす。
(……って、これ……!)
もう見ただけでわかる。
蒼井のズボンは、明らかに丈が長い。
俺が履いたら、絶対に足が隠れてしまうだろう。
しかし、このままの姿で脱衣所を出ていくわけにはいかないし……履くしかない。
(ハァァ……蒼井のやつ、どこまでもイヤミだな)
そんな事を思いつつ、俺はズボンを履こうと足を上げた。
と、その時、いきなり脱衣所のドアが開き、蒼井が顔を覗かせる。
「「……あ」」
目が合い、二人同時に声が漏れる。
ズボンを履く寸前の俺は、咄嗟に股間を手で隠し、顔を真っ赤に染め上げた。
「ななななななんだよっ!? いきなり入ってくんなよな!?」
「へぇ……意識しちゃうんだ? って、そうそう。ドライヤー、リビングに出しっぱなしだったの忘れててさ、持ってきた」
「……っ」
意識しちゃうってなんだよ!
反論したいのに言葉にならず、俺はプルプル震えながらも、差し出されたドライヤーを受け取ろうと手を伸ばした。
が、しかし。
蒼井がドライヤーをひょいと引っ込め、こちらへ迫ってくる。
「な、何……っ」
「もう、そんなに警戒しないでよ。せっかく、ドライヤーかけてあげようと思ったのに」
「へ……?」
ドライヤーを、かける……?
蒼井が、俺に?
拍子抜けした俺は、股間を隠しつつもポカンとしてしまう。
その間に、蒼井はテキパキとドライヤーの準備を済ませ、スイッチをオンにした。
そして俺の髪に風を当てながら、わしゃわしゃとかき乱しては整えて、を繰り返していく。
「……なんか、美容師みたい」
「そう? ま、俺なら美容師でもいけるかも」
「調子乗んなっ」
髪を乾かされながら、そんな他愛もない会話をする。
(なんか、変な感じ)
こうして暖かな風を受けながら、優しいタッチで髪をいじられ、ちょっとうっとりしている自分が居るなんて本当に変な感じだ。
高校時代はあんなに揶揄われて、大嫌いだった相手の筈なのに、なぜかドキッとしてしまったりするのも信じられない。
蒼井は確かにイケメンだし、スタイル抜群だし、頭も良くてモテモテなやつだけど、俺だけは蒼井を好きじゃないって思ってた。
なのに……。
自分の気持ちが分からなくて、俺はなんとなく蒼井を見上げた。
すると目が合い、蒼井がニヤリと笑みを浮かべる。
「どうしたの?」
「っ別に!? なんでもねぇよっ」
「ふぅん? さて、そろそろいいかな」
気付けば、俺の髪は完璧に乾いていた。
しかも、いつもよりちょっとイケてる風に仕上げられている。
「すげ……なぁ、美容系の学校でも通ってたのか?」
「はぁ? 通ってないよ。ていうか、それぐらいフツーに出来るでしょ」
「……悪かったな、出来なくてっ」
余裕な表情でドライヤーを片付けている蒼井に、俺はふいっと背を向けた。
どうせ俺は不器用ですよ。
今となっては、俺は手芸が得意だと言えるけれど、ここまで来るのには何年もかかった。
専門学校にだって通ったし、蒼井みたいにチャチャッと出来るとか、マジでない。
髪なんて、自分で乾かしたらもっとぺったりしてしまって、こんなオシャレになんて仕上げられない。
それに仕事だって、蒼井はこんなに立派なマンションに住んでるのに、俺は……
「……」
「……颯太?」
「……んだよ」
「なーに拗ねてんの? あ、そうだ。早くリビングいこうぜ? ぬるくなると不味いだろ」
「は? ……なにが??」
なにがぬるくなると不味いのか疑問に思っていると、また強引に手を掴まれ引っ張っていかれる。
脱衣場から出ると、なんと、リビングにはさっき買ったチョコレート・パフェとヨーグルト、それにアイスティーが二人分、テーブルの上に用意されていた。
(こ、これって……)
呆然とその光景を眺めていると、背後に気配を感じ、するりと腰元に手が回された。
「ちょっ……!?」
いきなり後ろから抱き締められ、俺はまた不覚にもドキドキしてしまう。
ジタバタしていると、蒼井の唇が耳元で動いた。
「パフェ、食べて行きなよ。帰るのは、その後でもいいだろ?」
「……っ」
ーー20分後。
(ふぅ……)
シャワーを浴びたてスッキリした俺は、脱衣所で蒼井に借りたシャツに袖を通した。
(あー……やっぱりデカいな)
鏡で自分の姿をチェックしながら、小さくため息をつく。
背の高い蒼井のシャツは、俺にはやはり少し大きくて気持ちが凹む。
袖は長くて萌え袖状態だし、着丈も長いのでズボンを履かなくてもパンツが見えない。
まぁ、楽と言えば楽なのだが、男としてはイケメン高身長なやつが着ているシャツを難なく着こなしたかった。
俺は一人、鏡の前で項垂れつつも、今度は借りたズボンに手を伸ばす。
(……って、これ……!)
もう見ただけでわかる。
蒼井のズボンは、明らかに丈が長い。
俺が履いたら、絶対に足が隠れてしまうだろう。
しかし、このままの姿で脱衣所を出ていくわけにはいかないし……履くしかない。
(ハァァ……蒼井のやつ、どこまでもイヤミだな)
そんな事を思いつつ、俺はズボンを履こうと足を上げた。
と、その時、いきなり脱衣所のドアが開き、蒼井が顔を覗かせる。
「「……あ」」
目が合い、二人同時に声が漏れる。
ズボンを履く寸前の俺は、咄嗟に股間を手で隠し、顔を真っ赤に染め上げた。
「ななななななんだよっ!? いきなり入ってくんなよな!?」
「へぇ……意識しちゃうんだ? って、そうそう。ドライヤー、リビングに出しっぱなしだったの忘れててさ、持ってきた」
「……っ」
意識しちゃうってなんだよ!
反論したいのに言葉にならず、俺はプルプル震えながらも、差し出されたドライヤーを受け取ろうと手を伸ばした。
が、しかし。
蒼井がドライヤーをひょいと引っ込め、こちらへ迫ってくる。
「な、何……っ」
「もう、そんなに警戒しないでよ。せっかく、ドライヤーかけてあげようと思ったのに」
「へ……?」
ドライヤーを、かける……?
蒼井が、俺に?
拍子抜けした俺は、股間を隠しつつもポカンとしてしまう。
その間に、蒼井はテキパキとドライヤーの準備を済ませ、スイッチをオンにした。
そして俺の髪に風を当てながら、わしゃわしゃとかき乱しては整えて、を繰り返していく。
「……なんか、美容師みたい」
「そう? ま、俺なら美容師でもいけるかも」
「調子乗んなっ」
髪を乾かされながら、そんな他愛もない会話をする。
(なんか、変な感じ)
こうして暖かな風を受けながら、優しいタッチで髪をいじられ、ちょっとうっとりしている自分が居るなんて本当に変な感じだ。
高校時代はあんなに揶揄われて、大嫌いだった相手の筈なのに、なぜかドキッとしてしまったりするのも信じられない。
蒼井は確かにイケメンだし、スタイル抜群だし、頭も良くてモテモテなやつだけど、俺だけは蒼井を好きじゃないって思ってた。
なのに……。
自分の気持ちが分からなくて、俺はなんとなく蒼井を見上げた。
すると目が合い、蒼井がニヤリと笑みを浮かべる。
「どうしたの?」
「っ別に!? なんでもねぇよっ」
「ふぅん? さて、そろそろいいかな」
気付けば、俺の髪は完璧に乾いていた。
しかも、いつもよりちょっとイケてる風に仕上げられている。
「すげ……なぁ、美容系の学校でも通ってたのか?」
「はぁ? 通ってないよ。ていうか、それぐらいフツーに出来るでしょ」
「……悪かったな、出来なくてっ」
余裕な表情でドライヤーを片付けている蒼井に、俺はふいっと背を向けた。
どうせ俺は不器用ですよ。
今となっては、俺は手芸が得意だと言えるけれど、ここまで来るのには何年もかかった。
専門学校にだって通ったし、蒼井みたいにチャチャッと出来るとか、マジでない。
髪なんて、自分で乾かしたらもっとぺったりしてしまって、こんなオシャレになんて仕上げられない。
それに仕事だって、蒼井はこんなに立派なマンションに住んでるのに、俺は……
「……」
「……颯太?」
「……んだよ」
「なーに拗ねてんの? あ、そうだ。早くリビングいこうぜ? ぬるくなると不味いだろ」
「は? ……なにが??」
なにがぬるくなると不味いのか疑問に思っていると、また強引に手を掴まれ引っ張っていかれる。
脱衣場から出ると、なんと、リビングにはさっき買ったチョコレート・パフェとヨーグルト、それにアイスティーが二人分、テーブルの上に用意されていた。
(こ、これって……)
呆然とその光景を眺めていると、背後に気配を感じ、するりと腰元に手が回された。
「ちょっ……!?」
いきなり後ろから抱き締められ、俺はまた不覚にもドキドキしてしまう。
ジタバタしていると、蒼井の唇が耳元で動いた。
「パフェ、食べて行きなよ。帰るのは、その後でもいいだろ?」
「……っ」
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