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瞬間、強い刺激が腰元から一気に這い上がってきて、目の前が真っ白になる。
「あ、ああっ……んっ、んんっ……!!」
少し段差のところをぐちぐちと扱かれただけだと言うのに、俺は呆気なく果ててしまった。
正直、めちゃくちゃ気持ちいい。
「はぁっ、はぁ……ぅ……」
「颯太……ちょっと、やばいな」
荒い息をつく俺を見て、蒼井は僅かに頬を赤らめ目を逸らす。
本当に……蒼井ってよく分からない。
俺の事を面白がって揶揄っているだけなのかと思えば、こんな風に真面目に照れた顔を見せる。
本当はどう思って、こういう事をしているのだろう。
蒼井の気持ちを想像しながら、俺は一瞬ぽーっとしてしまう。
けれどすぐにハッとして、考えを元に戻した。
(いや、ていうか……! 男の俺にこんな事する時点で、イジメだろ……!)
ようやく息も整ってきて、俺は勢いよく身を起こす。
キッと睨むと、蒼井はキョトンとした顔で首を傾げた。
その顔からは、もうさっきまでの恥ずかしそうな表情は完全に消えている。
「どしたの?」
さもなんでもないかのように言う蒼井に、ムカムカと腹が立ってくる。
俺は、側に丸まっていた自分のシャツを引っ掴むと、泣きそうになりながら訴えた。
「 ″どしたの?″ じゃねぇよ! お前……っ昔から俺の事からかってばっかでこんな事までして、そんなに楽しいかよ!? ほんっと意味わかんねぇ……なんなんだよ、いきなり部屋に連れてきて、やらしい事して、なんでもねぇ顔して……っふざけんな!」
「……別に、なんでもない事ないけど」
「ああ!?」
声が小さ過ぎてよく聞こえずイライラしながら聞き返す。
けれど、蒼井は黙ったままソファーにどさりと腰を下ろして、静かにため息をついた。
それからおもむろに俺の方を向くと、この状況下であり得ない事を口にする。
「この後、もっかいキスしたいって言ったら……怒る?」
「はぁあ!?」
待って、もうホントについていけない。
蒼井の思考回路が理解不能すぎて、俺はついにソファーから立ち上がった。
「怒るに決まってんだろ! 帰る!!」
「……颯太」
「んだよ!!」
まだしつこく名前を呼ばれて、俺は勢いよく振り返った。
すると同時に腕を掴まれ、思わずドキリとする。
「な、なに……っ」
「シャツ……濡れてるだろ? シャワー使ってけよ。あと、俺のシャツ貸すから、着て帰って」
「な……っ別に、そんなんいいって」
「颯太、お願い。颯太が風邪ひいたら俺……泣くかも」
「は……はぁ?」
今度はなんだか知らないけれど、蒼井が弱々しくて優しくてキモイ。
あまりにも不審で、俺はジト目で蒼井を睨んだ。
けれど、蒼井は相変わらず切なげな表情で俺を見つめている。
(そんな目で見るな……っ)
儚い光を宿した瞳は、見ているだけで吸い込まれそうだ。
俺はその不思議な光にやられたのか、気付けば蒼井と向き合っていた。
(あー、もう)
蒼井の事はよく分からないけれど、この目から逃れられる気がしない。
別に心を許した訳ではないけれど、なんとなく反抗する気が失せ、俺はもうどうにでもなれと蒼井の手を振り払った。
「……っ分かったよ。シャワー、借りてもいいんだな? てか、変な仕掛けとかしてねぇだろうな?」
「してないよ。はぁ……俺、やっぱそんなに信用ないんだぁ」
「っねーよ! 決まってんだろ!?」
あれだけやっといて、信頼関係が築けていると思う方がおかしい。
俺は口元をヒクヒクさせつつ、話の先を促した。
「じっ、じゃあ、お言葉に甘えて風呂、借りるぞ? えっと……」
「こっち、ついて来て」
「あ……っ」
ふいに手を取られ、顔が熱くなる。
ていうか、部屋の中なんだから手なんか繋がなくても迷わないっての。
ほんとになんなんだ、この子供扱い。
またしても蒼井の行動が意味不明だけれど、とりあえず俺はバスルームへ案内された。
「あ、ああっ……んっ、んんっ……!!」
少し段差のところをぐちぐちと扱かれただけだと言うのに、俺は呆気なく果ててしまった。
正直、めちゃくちゃ気持ちいい。
「はぁっ、はぁ……ぅ……」
「颯太……ちょっと、やばいな」
荒い息をつく俺を見て、蒼井は僅かに頬を赤らめ目を逸らす。
本当に……蒼井ってよく分からない。
俺の事を面白がって揶揄っているだけなのかと思えば、こんな風に真面目に照れた顔を見せる。
本当はどう思って、こういう事をしているのだろう。
蒼井の気持ちを想像しながら、俺は一瞬ぽーっとしてしまう。
けれどすぐにハッとして、考えを元に戻した。
(いや、ていうか……! 男の俺にこんな事する時点で、イジメだろ……!)
ようやく息も整ってきて、俺は勢いよく身を起こす。
キッと睨むと、蒼井はキョトンとした顔で首を傾げた。
その顔からは、もうさっきまでの恥ずかしそうな表情は完全に消えている。
「どしたの?」
さもなんでもないかのように言う蒼井に、ムカムカと腹が立ってくる。
俺は、側に丸まっていた自分のシャツを引っ掴むと、泣きそうになりながら訴えた。
「 ″どしたの?″ じゃねぇよ! お前……っ昔から俺の事からかってばっかでこんな事までして、そんなに楽しいかよ!? ほんっと意味わかんねぇ……なんなんだよ、いきなり部屋に連れてきて、やらしい事して、なんでもねぇ顔して……っふざけんな!」
「……別に、なんでもない事ないけど」
「ああ!?」
声が小さ過ぎてよく聞こえずイライラしながら聞き返す。
けれど、蒼井は黙ったままソファーにどさりと腰を下ろして、静かにため息をついた。
それからおもむろに俺の方を向くと、この状況下であり得ない事を口にする。
「この後、もっかいキスしたいって言ったら……怒る?」
「はぁあ!?」
待って、もうホントについていけない。
蒼井の思考回路が理解不能すぎて、俺はついにソファーから立ち上がった。
「怒るに決まってんだろ! 帰る!!」
「……颯太」
「んだよ!!」
まだしつこく名前を呼ばれて、俺は勢いよく振り返った。
すると同時に腕を掴まれ、思わずドキリとする。
「な、なに……っ」
「シャツ……濡れてるだろ? シャワー使ってけよ。あと、俺のシャツ貸すから、着て帰って」
「な……っ別に、そんなんいいって」
「颯太、お願い。颯太が風邪ひいたら俺……泣くかも」
「は……はぁ?」
今度はなんだか知らないけれど、蒼井が弱々しくて優しくてキモイ。
あまりにも不審で、俺はジト目で蒼井を睨んだ。
けれど、蒼井は相変わらず切なげな表情で俺を見つめている。
(そんな目で見るな……っ)
儚い光を宿した瞳は、見ているだけで吸い込まれそうだ。
俺はその不思議な光にやられたのか、気付けば蒼井と向き合っていた。
(あー、もう)
蒼井の事はよく分からないけれど、この目から逃れられる気がしない。
別に心を許した訳ではないけれど、なんとなく反抗する気が失せ、俺はもうどうにでもなれと蒼井の手を振り払った。
「……っ分かったよ。シャワー、借りてもいいんだな? てか、変な仕掛けとかしてねぇだろうな?」
「してないよ。はぁ……俺、やっぱそんなに信用ないんだぁ」
「っねーよ! 決まってんだろ!?」
あれだけやっといて、信頼関係が築けていると思う方がおかしい。
俺は口元をヒクヒクさせつつ、話の先を促した。
「じっ、じゃあ、お言葉に甘えて風呂、借りるぞ? えっと……」
「こっち、ついて来て」
「あ……っ」
ふいに手を取られ、顔が熱くなる。
ていうか、部屋の中なんだから手なんか繋がなくても迷わないっての。
ほんとになんなんだ、この子供扱い。
またしても蒼井の行動が意味不明だけれど、とりあえず俺はバスルームへ案内された。
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