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(あ……!)


咄嗟に止めようとしたけれど、蒼井の方が手が早かった。

シャツは思い切りガバッと捲りあげられ、白い素肌が顕になる。


「ほら、早く脱いで。拭けないだろ?」


「ちょっ、ばか! 何すんだよ!?」


「だーからぁ、濡れた身体を拭いてあげようって言ってんじゃん。うらっ」


「ひゃあっ!?」


抵抗する間もなくバンザイさせられ、完全にシャツを脱がされる……かと思ったら。

頭に被せられていたバスタオルとシャツが絡まり、手首を拘束されているような格好になってしまった。


「はい、じっとしててねー」


「なっ……!?」


そのまま、ソファーに押し倒される。

拘束された手は頭上に持っていかれ、抑えつけられて動けなくなった。


「あっ、蒼井……っ!?」


少し怖くなって見上げると、蒼井は余裕の笑みを浮かべて、また俺の耳元に唇を寄せてきた。


「佐久間…… ″颯太″ ?」


(……!)


今まで、蒼井に下の名前で呼ばれた事なんてなかった。

囁かれた耳元が熱くなり、俺は堪らず身を捩る。


「っ……! 離せ……っ」


「これから、さ。颯太って呼んでもい?」


「なんっ、で……っひあ!?」


瞬間、するりと腰元を撫でられ、変な声が漏れてしまった。

蒼井は更に、俺の身体にゆっくりと触れてくる。


「颯太、もしかしてかなり敏感?」


「んっ、やっ、やめ……っ」


今度は胸元を指先でなぞられ、擽ったさにまた声が漏れる。

かと思えば、内腿の辺りに蒼井の脚がスルリと入ってきて、もどかしい刺激が腰元を襲った。

不本意にも感じてしまい、俺は背中をビクンと仰け反らせて僅かに腰を揺らす。


「や、あっ……! それ、んっ」


「あー、颯太エロ過ぎ。いいのかなー? 男相手に、こんなに感じちゃって……」


蒼井は冗談ぽく笑いながら、もう一度脚をワザと際どいところに擦り付けるように動かした。


「あんっ……や、やぁ」


抵抗しようと脚をバタつかせるものの、レザー素材のソファーの上ではツルリと滑るだけだった。

そんな状況で、俺はされるがままにどんどん快感を高められていく。

止めなければ……そう思うのに、今度は首筋にチュッとキスをされて、また力を奪われてしまった。


「ひぁっ……!」


「ん……颯太の首筋、綺麗だね。雨粒、取ってあげる」


「や、やら……いいって、ああっん!」


チュッ、チュッと音を立てながら、蒼井は俺の首筋から雨粒をキスで拭っていく。

その感触は優しいけれど、それだけじゃなくて……


(なに、これ……っ)


吸い付かれる度に痺れるような快楽が与えられ、俺は思い切り身を捩りながら甘い声を漏らした。

蒼井はひとしきり首筋にキスをすると、今度は鎖骨から胸元へと唇を這わせていく。

俺はこれからされるであろう事を察知して、掠れてしまった声を絞り出す。


「そ、そっちは、だめ……っあ、あっ」


「ここも、濡れてる……ん」


「ひっ!? や、ぁっ!」


瞬間、あまりにも気持ち良くて、何が起きたのか分からなかった。

身を震わせながら見下ろせば、蒼井の舌が俺の胸の小さな飾りをチロチロと舐めているのが見え、さらにその下の方で、少し骨ばった蒼井の親指が俺の中心をズボンの上からゆっくりと撫でていた。


「んっ、ああっ、なに、してっ……あっ、やめ……っ」


まずい……このままでは、蒼井の前ではしたない姿を晒してしまう。

どうにかして止めなければ。

けれど、俺の身体はもうすっかりトロトロに蕩けてしまっていて、うまく力が入らない。


「あ、あ……っやめ、てぇ、動かさ、ない、で……っ」


途切れ途切れになりながらも、俺は必死に抵抗を示す。

けれど、蒼井の手は止まる気配すらなく動き続ける。


「んんっ……あ、や……」


もうこれ以上は、本当に耐えられない。

心とは裏腹に、身体は絶頂を迎えようと必死に蒼井の手を求め、どんどん熱くなっていく。

俺は限界を感じ、なけなしの理性を奮い起こして叫んだ。


「っ蒼井……!」


「……っ」


すると、蒼井はハッとしたように唇を離した。

その隙に、俺は手首に絡まっているシャツを取ろうと試みる。


(くそ……っ、うまく力が入らない……っ)


いつもならこれぐらい簡単に外せるはずなのに、シャツが濡れているせいもあるのか、なかなか取れない。

しかも変に絡まってしまっていて、これはじっくりやらなければ無理かもしれない。


(そんな……)


拘束を解けずに愕然としていると、俺の様子を見つめていた蒼井がボソッと小さな声で呟いた。


「……させてよ」


「え……?」


「下、おっきくさせちゃったみたいだから、俺に最後までさせて?」


「え……ええ!?」


蒼井の言葉に、俺は目を見開く。

けど、確かに下半身はガッツリ興奮状態に陥っていた。

中心はズボンを押し上げ、布地には僅かにシミが出来てしまっていて、恥ずかしい事この上ない。

今すぐにでもここから立ち去りたいけれど、こんな状態では外を歩けないし、かといって収まるまで待つなんて……もはや、俺にそんな余裕はなかった。


(はぁ、もう……悔しいけど、もう限界……っ)


本当に悔しいけれど、性欲には抗えない。

俺はキッと、上目遣いに蒼井を睨んだ。


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